長崎府の徒刑規則・仮刑律的例 47
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(要旨)
・徒刑者(受刑者)はそれと分かるように両鬢を剃り落とすので、市中や郷中で徘徊する者を見かけたら留置き、役所へ報告するせよ。
・徒刑場(元人足寄場)で、市中相場の約三分の二の料金で精米を行う。
・徒刑場の人足(労働者)を雇いたい者も歓迎する。
・詳細は細則を参照すること。
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【長崎府の徒刑規則】
明治2年2月、 長崎府から届出られた徒刑規則。
徒刑を言渡した者(受刑者)たちは、両鬢(もみあげ)を剃り落とすこと及び手業(仕事)について、別紙の通り市や郷、隣藩県に通達しました。
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〈別紙〉
一 郡用方掛(郡の役人)および町方掛(町の役人)へ
今回、徒刑者(受刑者)には、これまで季節ごと衣服を貸与していたが、これを中止し、今後は両鬢(もみあげ)を剃り落とす。徒刑者(受刑者)の逃亡防止のためである。
このような者が市や郷を徘徊しているのを見かけたら、すぐにその者を留置き、役人から徒刑役所へ訴え出るように。状況によっては褒美を与える。見聞していながら無視したり、内密に宿泊を許したりするようなことがあれば、本人だけでなく、その役人も厳しく処罰する。
このように、市や郷で漏れなく触れをせよ。
巳(明治二年)二月
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一 隣藩県へ達書
このたび、徒刑場を設置し、徒刑者(受刑者)を収容し、作業を行わせる。彼らが市や郷に出ることもあり、彼らが逃亡しないように受刑者には両側の鬢(もみあげ)を剃っておく。
もしこのような姿の者が貴藩・貴県を徘徊していた場合は、すぐに捕えて、早急に当府に知らせていただきたい。
巳(明治二年)二月
長崎府
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一 郡用方掛(郡の役人)および町方掛(町の役人)へ
大黒町(現長崎市大黒町)に新たに設置した徒刑場(元人足寄場)において、市中相場の約三分の二の料金で精米を行う。希望者は徒刑場に申し出よ。
また、人足(労働者)を雇い入れたい者も、同様に徒刑場に申し出よ。願い次第で同様の相場でその者を派遣する。
これらは救助(更生)の一環であり、これまでのやり方を一新し、手続きを簡易なものとし、庶民の便宜を考慮したものであるので、遠慮せず申し出よ。細則は以下の通りである。
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一、精米を希望する者
徒刑場の門内で商人を待機させているので、その者に申し出ること。遠方の者は、最寄りの場所で出入している商人たちに申し出ればよい。その場合、すぐに徒刑場から受取担当者を派遣し、三日以内に精米を渡す。急いで精米を希望する場合は、その旨を申し出よ。即座に精米を行う。
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一 米を受け取る際は、斤数(重さ)を確認して受け取り、精米ができた際には、斤数(重さ)が書いてある書類に見届判を押してから受領すること。
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一 精米は極白とする。精米の仕上がりが悪い場合は、遠慮なく申し出ること。再度精米する。その際に追加の料金は不要である。」
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一 米屋によって、精米の仕上がりに差があるから、自分の希望に合った仕上がりを心得ている米屋を選んで、希望どおりに精米してもらうこと。
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一 糠や俵などはすべて返却する。ただし、当方に引き取りを希望するのであれば、市中の相場に基づいて買い取る。
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一 徒刑人足(受刑者)を雇いたい者は、精米と同様、徒刑場に申し出よ。中食(昼食)は雇主の負担とするが、漬物以外の副菜は決して出してはならないし、賃金以外に一銭でも渡してはならない。
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一 徒刑役所での精米の金額及び人足賃(受刑者の賃金)は以下のとおりとする。ただし、賃金の変動に応じて増減することがある。
(精米)
− 五斗俵は一貫文
- 四斗俵は800文
- 三斗俵は600文
ただし、自分で持ち運びを行う場合は、1俵ごとに24文ずつ賃金から差し引く。
(人足賃)
- 人足賃は一貫文
以上の内容を、市中および郷中で漏れなく周知するように。
已(明治二年)二月
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徒刑の者(受刑者)の御赦免(釈放)の際の取り扱いについての伺い
野口豊太郎
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徒刑または溜入り(病人・未成年者用の牢屋)を命じられた者の刑期が満了した場合は、徒刑は官府において赦免(釈放)を命じ、溜入りは徒刑役所で赦免(釈放)を申し伝え、居住していた町及び身寄りの者に引き渡すことでよいでしょうか。また、人別については、どのようにすれば良いでしょうか。以上、お伺い致します。
巳(明治二年)二月
野口豊太郎
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(返答)
今後、徒刑から赦免(釈放)する者は身寄りを確認して引き渡しをせよ。人別については、引き受けた者から、その筋に申立てをするように。
上記の内容を、漏れなく市中および郷中に知らせよ。
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