~四手のためのフランス・ピアノ音楽集~
ドビュッシー:小組曲
サティー:梨の形をした三つの小品
シャブリエ:三つのロマンティックなワルツ
フォーレ:ドリー
ピアノ:ロベール・カサドシュ
ギャビー・カサドシュ
録音:1959年、フランス
LP:CBS・ソニーレコード SOCM 10
ロベール・カサドシュ(1899年―1972年)は、フランスの名ピアニストで、パリ音楽院で学び、1931年に首席で卒業。1920年「ディエメ賞」を受賞。カサドシュは、同じくピアニストのギャビー夫人(1901年―1999年)と2人で“カサドシュ・デュオ”を結成し、4手ピアノ(連弾)作品を数多く録音したが、このLPレコードはその中の1枚。ドビュッシーの「小組曲」は、組曲に相応しい作品。4曲のほとんどが舞曲調の情趣を備えており、第1曲「小舟で」、第2曲「行列」、第3曲「メヌエット」、第4曲「バレエ」の4曲が、それぞれ独立した小曲ながら、全体としては組曲的なまとまりを見せ、いわば、ドビュッシー的な革命前夜の作品といえる。この曲は、サロン風の家庭音楽に相応しい、軽やかな旋律が際立った作品に仕上がっている。サティーの「梨の形をした三つの小品」は、実際には7つの曲からできている。これは「三つの小品」を中心に、前後に2曲づつの前奏曲、後奏曲といった曲が付けられているため。当時、サティーはしばしば、曲の形式上の原理の不在を指摘されていた。この作品は、このような批判に対する回答の意味を込めて、サティーが作曲したものであり、サティーの音楽性を端的に示す重要な作品と言える。シャブリエの「三つのロマンティックなワルツ」は、2台のピアノのために書れているが、1台のピアノに、他のピアノが応えたり、エコーを奏したり、といった普通の2台のピアノの作品とは異なっている。1台のピアノでは表現し得ないようなダイナミズム、音の量感を目指す作品となっている。前奏に始まり、ワルツを中心として、締めくくりのコーダが置かれるという伝統的な手法によっており、シャブリエの最も純粋なワルツ作品。フォーレの「ドリー」は、第1曲「子守歌」、第2曲「ニャーオ」、第3曲「ドリーの庭」、第4曲「キティー・ワルツ」、第5曲「やしさ」、第6曲「スペイン舞曲」からなる。後にドビュシー夫人となるエンマ・バルダック夫人の娘のドリーことエレーヌに託して、夫人を賛美した作品と見られている。それに含まれているいずれの曲も、旋律上の創意に富み、また和声上の明快さが著しく、小品ながら完璧な作品に仕上がっている。親しみやすいこの作品は、オーケストラやピアノ独奏用に編曲され、現在でもしばしば演奏される。これらの作品を演奏する2人は、まるで四手が一人のピアニストであるかのような印象をリスナーに与え、その息のあった演奏には驚かされる。(LPC)