旅してマドモアゼル

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アマツカゼ~天つ風~ プーシリーズ・エピソード1

2008-04-20 | 観たものレビュー
偶然、テレビでその舞台の様子をちらっと見た時から、観たくて観たくてたまらなかった嵐の大野くん主演のプーシリーズ。


去年から嵐のFCに入って、今回やっとチケットが取れました。


プーシリーズの原点を描いたという今回の『アマツカゼ~天つ風』。
過去のシリーズを観ていないと楽しめないかな?と若干の不安はあったのですが、それはまったくの杞憂でした!
最後の幕が下りるまで、瞬きするのも惜しいくらい、ドラマチックに展開する舞台にくぎづけでした。
役者も演出もストーリーも最高に素晴らしくって、この時のワクワクした高揚感、観劇後いつまでもおさまらない興奮をどう言葉で表現したらいいのか。

とりあえず思いつくままに書いてみます。



風のように生きる

おそらく誰もが、いままでの人生の中で一度や二度は、そんなふうに生きてみたい、生きられたら、と思ったことがあるだろう。
なにものにも縛られることなく、何のしがらみもなく、己の心の赴くままに、自由に、生きられたらと。
しかし、そうしたくても、現実的には難しい。


戦国の世に生きる、大野くん演じる「凪」は、複雑な事情にその身も心も縛られている。
親の仇、山城不動を討つという悲願に。
その不動に奪われた妹、りんを陰から見守り助けることに。
不動に配下の武将として雇われ、その命に従うことに。
その命のため、心を鬼にして刀を振るうことに。

手にした刀がどれほど血で汚れようとも、凪は鬼神にはならない。彼の全身から漂ってくるのは、圧倒的なまでの悲壮感だ。
多数の敵を単身で倒せる腕前の凪であっても、宿敵である不動の圧倒的な強さの前では無力でしかない。
不動を演じるアツ兄がものすごい存在感。
だてに新感線やほかの舞台で場数を踏んできたわけじゃない。
もう若々しい役は、若い誰かに譲ったほうがいいかもね!…誰とは言いませんけども、ええ。

凪の心の奥深くでマグマのように煮えたぎる怒りは、不動にいとも簡単に跳ね返され、己の力不足に対する苛立ちと、思うようにならない焦燥感が凪を支配する。
凪を演じる大野君が本当に素晴らしい。
嵐のリーダー大野君、という私たちが日ごろ抱いているイメージは気持ちいいほど覆される。
迫力ある殺陣。骨太でかつ繊細なまでの演技。

そして凪の前に現れる、凪を仇と狙う僧侶の仁雷、そして謎の男、虱(しらみ)。

凪に仕える忍び・陽炎と、彼女に一目ぼれする仁雷とのコミカルなシーンは、この息詰まる舞台で唯一の息抜きの場。
ただ、このコミカルさゆえに、後半の二人を待ち受ける運命は凄絶だ。
陽炎の凪への絶対的な忠誠心、それを裏打ちする、己の命を掛けてまで貫く凪への愛。
そんな陽炎を盲目的に恋する仁雷は、彼女が望むならと、仇である凪に力を貸し手助けまでしてしまう。
いつまでも噛み合わない二人の想い。
それは結局、最後まで噛み合わないのだが、お互いに相手を思う気持ちから生じる、二人の命をかけた選択は涙なしでは見られない。

そして、きだつよしさん演じる虱の登場は、重く淀んだ舞台上を文字通り一変させる。
体はちっちゃいのに(芝居でもネタにされてた)、めっちゃ雰囲気と存在感のある人。

「風になりてえんだ」
この戦国の世を、刀も持たず、何者にも仕えず、何かに束縛されることなく、自由きままに渡り歩く。
風と書かれた帆を前に、仇討しか頭にない凪に向かって、幻のような夢を熱く語る虱。
そして虱は屈託なく、「おまえも一緒に風にならないか」と凪を誘う。
非現実的な夢物語は心動かされない凪だが、親を殺されたあの日から消えていた笑顔が、虱に向けられる。
悲しみと憎悪、悔しさと怒り、そんな表情しか見せない凪が見せる、硬さとぎこちなさのある笑顔。
凪と虱、二人のほのぼのとしたシーンは、私たち観客にとっても束の間、ホッとできる時間だ。
もしかすると…!という期待さえ抱かせられる。

が、凪の非情な運命は止まらない。
不動の策略にまんまと乗せられた凪は、虱を騙すような形で取り返しのつかない過ちを起こしてしまう。
それはもちろん、凪が望んだことではないのだけれど、罪もない人々の命が、凪の手によって一瞬にして奪われた事実は動かない。
自分が犯した罪の深さに呆然とする凪。凪の絶望感がひしひしと伝わってくるだけに、誰か彼を救ってあげて!と見ているこっちが思ってしまう。
一度は、自分の気持ちを裏切るような真似をした凪に失望し、彼の前から立ち去った虱は、その後、陽炎の話から、自分と凪の間にある深い因縁を知ると、己の過去の清算のために、再び凪にすべてを掛けようとする。


凪が、虱が、その背に負う影。

風に形はなく、影はない。
風はただそこを吹き抜けるだけ。
風はその力でもって何もかもを吹き払ってくれるのだろうか。


しかし、虱はその名前のまま、風になることなく命を絶たれてしまう。まるでその名前が、彼の運命を導いていたかのように。
そのあとの凪と不動の最後の戦いは、それまでの伏線のおかげで、なんとなく後の展開が分かりつつも、否、分かる故に胸にぐっと迫ってくるのだけれど、宿敵不動の命を奪うのが、凪の刀ではなく、言葉通り「獅子身中の虫」、不動自身の体の中に巣食った病、というのがなんとも皮肉。
そして、自身の手で復讐を成し遂げられず茫然自失となった凪に、最後に突きつけられる現実。
今まで、その人のために刀を振るい、人を殺戮してきた、凪にとって何より一番大切な人の裏切り。

そのとき、彼はどちらを選ぶのか。
自分が今まで命を掛けて守ってきた愛する人か。
自分を信じてそのために命を捧げてくれた人の想いか。

ラストシーン、刀を捨て、ボロボロになった「風」の帆を首に巻き、遥か先のどこかを見つめる凪の姿。
「センゴクプー」を観た人には、きっと感慨深いものを感じるシーンなんだろうな。
観ていない私でさえ、はっとさせられたのだから。

うん、「センゴクプー」をぜひ観たい。再演をどうかよろしくお願いします、きださん。



なんか、とりとめもなく話して、全然レビューになってない気がしますが、記憶がね、若干曖昧になってきてるせいかなー(苦笑)
なにしろそのあと「ロス:タイム:ライフ」に「49日後…」と観ちゃってるので。
まあ、記憶の底をつついて、思いつくままに書いてみただけなのでご容赦を。