元々、この学研ネオ歴史小説シリーズ打ち合わせの初期、
「主人公は編集部に電話があって、『その人、本当にいたの』」「さあ?」
って答えるくらいの人がいいんですよ。
・・・そんな話が担当氏からあったんです。
ところが、、、私に先立って出版したお二人の主人公は、
狩野永徳と水野勝成。
「さあ?」となるまいなw
なんでこんなことを書いているのかというと、『神剣の守護者』の発売以来、
「楠木正具って実際にいたわけじゃないんでしょう?」
と聞かれることしばしばあり、、、
実際、有名人の子孫を主人公にした作品は多いですが、
先に言ってしまうと、『神剣の守護者』では私が創作している部分が多いですが、
「楠木正具という人間は実在しました!!」
『楠氏後裔 楠正具精説』(昭和13年) 表紙には菊水紋。
目次
上の画像は昭和13年刊行の『楠氏後裔 楠正具精説』
著者は藤田精一氏。
『新田氏研究』『楠氏研究』など戦前、南朝関係の研究書を数多く書かれています。
そしてこの『楠正具精説』はおそらく唯一であろう、
楠木正具の「研究書」です。
(「楠木」と「楠」の記述は混合して、使用しています。
現在は「楠木」とするのが主流ですが、伊勢楠木氏は「楠」が多い)
そして、私が『神剣の守護者』を執筆するに際し、
主要参考文献の筆頭にあげる一冊です。
実はここ数日の取材などで、「楠木正具は実在した!」ということを、
もっとアピールした方がいいのでは?とアドバイスいただきまして。
だから、研究書を上げているのも安直なんですがw
実際、この『楠木正具精説』は系図を取り上げている部分が多いですし、
「活躍」の部分も、『太閤記』諸本に拠っています。
・・・そして、『神剣の守護者』もそれによる訳でw
生年が不明なので、実際の年齢も不明です。
これはまあ、楠木一族には多いかw
ですから、
「楠木正具という人間が北伊勢の大地に生き、そして戦った」
だからこそ、歴史作家の出番もある!創作も生きてくる!と思う訳です。
少なくとも、智本光隆の場合は!!
つまり、、、作者が勝手に「正具のあったかも知れない人生」を書いている・・・と(笑
・・・まあ、先日の取材でそんなことしゃべりまして。
しかも、割とテンション高く!
ちょっと『楠正具精説』の紹介がてら、
実在性を語ってみました。藤田先生への感謝も含めて。
・・・しかし、この『楠正具精説』ですが、
面白い?のは随所に「楠ヒーロー」と記述し、
正具を完全に、当時の正成並みのヒーロー扱いしていることですね。
確かに・・・楠木氏といえば正成の死後、
斜陽の南朝を必死に支えるイメージの方が強く、
織田信長の大軍を、完膚なきまでに叩きのめした正具には、
スター性が強く感じられたのかも知れません。
この本の出版は昭和13年。
7年後に戦争は終わり、楠木が国民のヒーローだった時代は終わりますが、
ちょっと時代がずれていたら今頃、
四日市駅前に「楠木正具騎馬像」とかが建っていたかもw
そうなると、やっぱりこれに近い像?
ああ、、、戦国時代だから鎧が違うか。
智本光隆