歴史作家 智本光隆「雪欠片―ユキノカケラ―」

歴史作家 智本光隆のブログです。

豊臣蒼天録秘話第5回―松平忠輝2―

2012-10-01 22:53:38 | 豊臣蒼天録
さてと今作、ひとつの軸になったのは「豊臣秀頼と松平忠輝の関係」です。
智本作品、主役ともうひとりの関係が、
物語の軸に据えられていることは珍しくなく、、、
『関ヶ原群雄伝』は大谷吉勝と小早川秀秋。
『本能寺将星録』は蒲生氏郷・・・と言いたいところですが、細川忠興と珠子ですね。
前者は幼馴染で、後者の鬼蛇は言わずもがなの夫婦な訳ですが。


さて、それでは秀頼と忠輝は?
この2人を語る時、避けては通れない名作があるのはよくよく知っております。
それを、漫画化した作品も名作です。
この作品において、2人は「親友」でした。
『豊臣蒼天録』の場合、「ライバル」という感じで組み立てて見ました。
そして、両者がそれぞれ相手に、ある種の「コンプレックス」を抱いていると。
この「ライバル関係」の強調は、
担当氏の「もっと、秀頼が忠輝にライバル意識持つとか・・・」
から生まれたような気がします。
(忠輝の出した「結論」は、物語開始時点から決めてありました)


これは1巻時点では、秀頼のほうが一方的に持っている感じです。
今、読み返すと序章の忠輝は、なんか余裕のある感じのキャラですね。。。
これ、実は1巻ラストから2巻スタート時点である程度、解消されてしまっています。
吉治のセリフにあった通りで、秀頼が井伊直孝の首を取ったので焦っている・・・と。
実のところ、秀頼はその後は別のことで悩んでいます(w
忠輝のほうは豊臣軍内での己の立場に苦しむので、ちょっと浮いていて空回りです。
まあ・・・このあたり、
担当A田氏曰く、「浮いていることが彼のポジション」ですね。
なんか、鬼っ子というか、苦労人?のような感じさえしてました(w


でも、物語を終始、引っ張ってくれたのは忠輝の存在です。
特に3巻、最終巻の前半で主役がずっと気絶しているという、
おそらく歴群の歴史にないであろう状況でした(w
最終的に忠輝は一度、秀頼を認めて兜を脱ぎかけますが、
秀頼の方が「盟友」関係に引っ張り上げました。
その過程で、「野風の笛」を真っ二つにしてしまいましたが(w
そして忠輝自身、追い求め続けた父・家康とみずから決別し、
秀頼とともにこの国を担って行く決意をします。


終章において忠輝は関東に大領を得ています。
それは一種、豊臣政権が直接的に介入しない土地でもあります。
そこで、忠輝がどんな君主になるのか・・・
史実の彼が政治的な足跡を残していない以上、作者が知る術もありません。
まあ・・・当面は徳川残党の処理で大変でしょうが・・・そこは幸村もいるので。
大久保長安がいなくなるので、すごく大変そうですが。
おそらく、秀頼より長命を誇る彼ですので、
伊達政宗から煽られつつ、関東経営に腐心して行くでしょう。


あるいはこの国に危機が訪れれば、その時は真っ先に「将軍」として立つでしょう。
秀頼は太刀を捨てましたが、何かの時に武器を取るのも忠輝の役割なのですから。
なんかやっぱ、損な役回りのような気がする。。。
あとは、五郎八姫と富める時も、貧しい時も共に(w

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