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私たちは、自分を肯定したいのである。社会的にも性的にも人間的にも、「私はこれでok.ちゃんと、周囲の皆に認めてもらってるわ」と安心したいのである。…人間は、一つの役割だけで充足できるものではない。「社会的な役割と価値を持った私」「プライベートなコミュニティでの役割と価値を持った私」「性的な役割と価値を持った私」と、さまざまな方向から多角的にアイデンティティを承認されることで、私たちはようやく一個の完全な人間としての存在を達成した気になれるのだ。
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…とはいえ現代は…(医療などで)いつまでも性的な役割を諦められなくなってきているのだ。…歳を取れば取るほどきわめて欲深な自己確認欲求に身を焦がす羽目になっているのである。とくに、男に比べて「性的役割と価値の確認」の場が少ない女は、不自由な枷の中でもがき苦しむことになる。