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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

レムリアの記憶 第一章 <第5話>

2013-05-17 06:37:45 | 『日常』

昨日、表記間違って<第4話>を<第5話>と間違って書いてましたが、訂正しております。
本当の第5話はこちらになりますので。
で、昨日のイラストは「レル姉」になります。柔らかいのに衝撃を吸収する金属製の前掛け、ベルトをつなぐと完全密閉になるつなぎ、などハイテク装備なのですが。
説明すると本筋からずれてしまうので省略しております。
背後にあるのは農作業用のギャロットみたいなものですね。
今日のイラストは、また主要キャラ書いてみてます。みなさんの印象と違うかもしれませんが。


それでは、本編をお楽しみください。

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また寝過ごした。

昨夜は試しに歌作っていたら、ついつい夜中まで起きてしまっていて。
やり始めると結構楽しくなってくるので困ったものだ。

朝食は、またリンゴ1つですませながらデシックルで農道を疾走していると、珍しく同じ方向を進むデシックルを見つけた。

僕の居る集落には同じ学年が居ないので、デシックルでこの時間を走るのは僕くらいなものなのだけど。
追いついてみると、それはサラッティのデシックルだった。青い色に、白のラインが入ったもの。
僕が隣に並ぶと、驚いたように僕を見て。
「あれ?ここのみち通るんだ?」
と聞いてくる。
「そりゃあ、僕はこっちの集落だから。」
「D-1だっけ?」
「D-2だよ。」
「そうだった?今日から集落がお隣さんなのは知っていたけど。」
と言って笑った、サラッティは確か、A-3くらいの集落だったと思ったけど。いつの間にこっちにきていたのだろう?
「いつからこっちに?」
「昨日ご挨拶に芋あげたでしょ?」
あ、あの芋は引っ越してくる、という意味だったのか。
でも、芋だけでそれがわかるものか。
「私、お母さんの実家のあるD-3に移動してきたの。だから今日からこっちから通学しなくちゃならなくて。」
僕が昨日の芋に関して、引越しに芋を贈る習慣とかあったっけな?と考えているとサラッティは付け加えてくれた。
こうやって移動しながら過ごしている家族も結構多い。
父親の関係、母親とその母親との関係もあって。
お母さんがおばあちゃんの面倒をみるために移動する事もある。

サラッティは、お母さんの「つながる」相手がこっちに移動したので、それと一緒におばあちゃんの面倒もあるので移動してきたという話。
昨日まであっちにいたのに、今日はこっち、というのは結構ある話なのでそれほど珍しい訳でもない。町を中心に、長くても数時間で移動可能な範囲に集落があるから。

僕の家は昔から移動しない家。周りもそんな感じなので、集落によってある程度の特徴は有るみたいだけど。

サラッティとはこれから毎朝同じ方向から行く事になる訳か。

「今度の討議テーマは順調?」
「それなりに。僕のクラスは個性的な人間ばかりだから。サラのクラスとそのあたりの差はあるかもね。」
「確かに、同じグループのあなたのクラスの男子。意見をまとめようとすると、必ず何か言って来て、なかなか決まらなかったもの。」
「誰だいそれ?」
「アフュレよ。」
「ははぁ、それは難問だね。僕も彼と話す時は気をつけているから。」
「どうやったらいいの?」
「本人の言いたい事を先に行ってもらえばいいよ。それから話を進めて行けば結構スムーズに行くから。」
「本当に?」
「今日試してみたら?」
「試してみる。」
と言った後、少し苦笑して。
「で、そのアフュレからも歌もらっちゃったんだけど。どうしたらいいのかな?」
意外な話に驚いて見ていると、
「何?私がもらうのがそんなに意外?」
少し気を悪くしたように上目遣いになったので、両手を振って否定する。
「いや、アフュレがそう言う事に興味ある事が意外。」
「そうなんだ。同じクラスメイトとしては珍しい事なの?」
「女性に興味あるとは思ってなかった。もっと非現実のキャラクターに愛を注いでいる感じしていたし。」
「でも、私に歌くれたのよ。それも結構良い歌。驚いちゃった。」
それを聞いて僕も驚いていた。はぁ、あのアフュレもねぇ。
人はその一面だけで判断してはいけないということか。
男子のクラスにいるときは、女子に歌を送るような人間には見えなかったんだけど。

「で、アレットは私の歌を作ってくれないの?」
と聞かれて、しばし返事に困っていると。
「女子のクラスではね、誰から歌をもらったとか、誰が歌が上手いとか、そういうやり取りがいっぱいされているのよ。」
男子が聞くとがっかりしそうな話だ。そういう話のネタになるのも面倒だ。
と思うと歌を作る気も無くなるけど。
「で、その中でね、アレットの名前が無いの。誰に聞いても、送られた事無いって。だからアレットは女性に興味無いんじゃないかって話まで出ているくらいなんだよ。」
それはそれで嫌だ。
そうなると、歌を送らないといけないのか。
「歌を作るのが面倒くさい。だから作らない。それくらいだよ理由は。」
そう言いながら、セティファムの昨日の笑顔が蘇る。
何気ない関係があれば、歌は必要ない。
「本当にそう?」
そう言うと、じっと僕を見る。
僕の意識が読まれたかと思ってちょっとドキッとする。
そして、ふっと前を向いて
「なら、私に作ってよ。」
「なんで?」
「アレットの歌聞いてみたいから。」
「他の男子のは聞いた事あるのか?」
「だって、女子の間で周って来るもの。」
それは恐ろしい。下手に送るとさらしものになるってことじゃないか。
知らぬは男子ばかりか。
そういえば、セティファムもたくさん曲をもらっていたというけれども。
「セティファムもそう言う事するの?」
と何気に聞くと、サラッティはなぜか急にムッとしたような顔をして。
「なんでセティファムの事いきなり聞くの?」
「いや、ちょっと気になったから。」
「セティファムは、ちっとも教えてくれないのよ。誰からもらったとかも無いの。だから、そういう話の時は参加してこないわ。」
それを聞いて、なぜかホッとする自分が居て。
「セティファムに歌送ったことあるの?」
とサラッティが聞いてくる。少し、かなり内心動揺しつつも
「いいや、僕は今のところ誰にも歌は送ってないよ。」
と答えるとサラッティは少しホッとした様子で。
「じゃ、第一号は私でお願いね。」
といって笑った。

町に着くと、デシックルを置き場に固定して、そこからは動く道に乗り換える。
その間、同じクラスや同じ学年の人達とも会うし、同じ学校の他の学年の人とも会う。

挨拶したり、すれ違ったり。
なんとなくサラッティと一緒に動く道を歩いていると、セティファムが前に居るのに気付いた。
僕が声をかけると、くるっと振り向いて。
そして、僕とサラッティを交互に見ている。なんで、朝から二人で並んでそこに居るの?的な目だ。

「今日からサラッティが隣の集落に来たんで、それで来る途中一緒になってね。」
とちょっと言い訳っぽい事を言ってしまう。
すると、セティファムは「そう」とそっけない返事。
ここで途切れるとそのままになりそうなので。話題を作らねば。
「で、今日の資料まとめた?」
と僕が聞くと、
「資料はすでにまとめているから大丈夫。」と短い返事。
その後も一言二言会話をしたけど、なぜか盛り上がらない会話の後、学校についたので二人と分かれる。
「歌作ってよ~」と最後にサラッティが言って手を振っていた。

うーむ。セティファムに何か悪い事したかな。
などと考えながら教室にくると、シェラットが
「いいなぁ、お前。両手に花ジャン。可愛いサラッティ、美しいセティファム。羨ましい限りだな。」
と言ってくるが。
「たまたま、サラッティは今日から隣の集落に来ているから同じになったんだし。セティファムは毎日の事だろう?」
「俺もそういう朝から良い思いしたいものだよ。」
とシェラットは言うが、今日の朝の空気は微妙であったような気がする。
なぜかセティファムが微妙によそよそしかったし。





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