コロッと忘れていました。
昔 「社会思想入門」 という授業のために作った、
カントについてのレジュメと資料をアップしようと思っていたんでした。
昨年12月に2回分のうちの第1回目のレジュメをアップしました。
そのレジュメと合わせてご覧いただくべき資料をアップいたします。
第2回目のレジュメと資料も近いうちにアップしたいと思います。
カント①「カントとフランス革命」 資料
1.カント略年譜
1724年 東プロイセン、ケーニヒスベルクにて生誕
1740年 フリードリヒⅡ世(大王)即位
1776年 アメリカ独立宣言
1781年 『純粋理性批判』
1784年 「世界市民的見地における一般史の理念」
1785年 『道徳形而上学基礎づけ』
1786年 フリードリヒⅡ世死去
フリードリヒ・ヴィルヘルムⅡ世即位
1788年 『実践理性批判』 宗教勅令、検閲令の発布
1789年 フランス革命
1790年 『判断力批判』
1791年 フランス人権宣言
1793年 『たんなる理性の限界内における宗教』 ルイ16世斬首
「理論と実践」
1794年 カントの宗教に関する講述を禁ずる勅令発布
1795年 『永遠平和のために』 普・仏 バーゼルの和約
1797年 『道徳形而上学』(第一部「法論」、第二部「徳論」) フリードリヒ・ヴィルヘルムⅡ世死去
フリードリヒ・ヴィルヘルムⅢ世即位
1798年 『諸学部の争い』
1804年 死去
2.「理論と実践」目次
論文原題「理論においては正しくとも実践には役に立たないという俗説について」
第1章「道徳一般における理論と実践との関係について (ガルヴェ教授の異議に答える)」
第2章「国家法における理論と実践との関係について (ホッブズに対する反論)」
第3章「国際法における理論と実践との関係
普遍的博愛の見地 ―換言すれば世界市民的見地において考察された
(モーゼス・メンデルスゾーンに対する反論)」
3.カント「理論と実践」『諸学部の争い』より
①理念としての社会契約
「今やここに根源的契約がある。この契約によってのみ市民的体制が、したがって首尾一貫した法的体制が人々の間に基礎づけられ、公共体が創設されうるのである。この契約 (原始契約あるいは社会契約と名づけられるもの) は、ある民族における各人の特殊な私的意志が、(たんに法的立法を目的として)一つの公的な共通意志として合一することである。しかしこうした契約は決して事実として前提される必要はない (じっさい事実としてはありえない)。もしそうだとしたら、ある民族がかつて実際にそのような契約を取り結び、これに関する確実な報告や証書を口頭なり文書なりで後世に残していなければならず、こうしたことがまず第一に歴史によってあらかじめ証明されていなくてはならないだろう。そのような歴史的事実ではなくて、根源的契約はたんなる理性の理念にほかならない。しかしたんなる理念であるとはいっても、この理念は疑いえぬ (実践的) 実在性をもっているのである。この実在性によって、おのおのの立法者は、彼が立法する法を全国民の合一した意志から発現しえたかのように立法するよう義務づけられるのであり、またおのおのの臣民は、彼が市民であろうと欲するかぎり、あたかも彼も全国民の合一した意志にともに同意したかのようにみなされるのである。」(「理論と実践」)
②抵抗権・革命権の否認
「最上の立法的権力に対する反抗、臣民の不満を行動によって示すように煽る扇動、暴動に化するような蜂起、これらはすべて公共体において厳罰に処せられるべき最高の犯罪である。なぜならそれは公共体の基礎を破壊するからである。」(同上)
「憲法が万一の場合に備えて、すべての特殊な法 (Recht) を発生せしめる根源であるところの体制を (たとえ契約が侵害されたと仮定しても)、覆すような権利 (Recht) を含んでいるというようなことは明らかな矛盾である。…国家におけるいかなる権利も、ひそかな留保―例えば陰謀―によって国民に知らしめずにおくことはできない、まして国民が憲法に属する権利として主張するようなものについてはなおさらである。およそ憲法の含むいっさいの権利は、すべて公的意志から発生したものと考えられねばならないからである。それだからもし仮に憲法が反乱を許容するとしたら、その憲法は反乱の権利を公的に言明せねばならないだろうし、またその反乱の権利をどんな仕方で行使するかを公的に言明せねばならないだろう。」(同上)
③フランス革命の評価
「われわれが同時代において目撃してきた才気煥発なる国民の革命は、成功しようが失敗に終わろうが、また思慮ある人ならば、これをもう一度企ててみたら成功させられるかもしれないという望みがあったとしても、これほどの犠牲を払った実験を繰り返すことを決議することはできないというほどに、この革命は悲惨と残虐行為に満ちたものであったけれども、―それでもなお私は言う、この革命は、すべての観察者 (自身はこの演劇に巻き込まれていなかった人々) の心のうちにほとんど熱狂にも近い、希望に満ちた共感をもたらしたのだ、と。しかもこの革命に対する共感を口にすることさえ危険を伴うほどであったにもかからず、人々はこうした共感を感じたのである。したがってこの共感の原因は、人類に内在する道徳的素質にほかなるまい。」(『諸学部の争い』)
4.参考文献
〈カントの翻訳書〉
・『啓蒙とは何か』(篠田英雄訳、岩波文庫)
・理想社版『カント全集 第13巻』(小倉志祥訳)
・岩波書店版『カント全集 第14巻』(福田喜一郎他訳)
いずれも 「理論と実践」 他、政治・歴史・宗教関係の論文を所収
〈カント社会思想の解説書・研究書〉
・カント研究会編『現代カント研究5 社会哲学の領野』(晃洋書房)
・ハンス・ライス『カントの政治思想』(樽井正義訳、芸立出版)
・ハンナ・アーレント『カント政治哲学の講義』(浜田義文監訳、法政大学出版会)
・牧野英二『カントを読む ポストモダニズム以降の批判哲学』(岩波書店)
・坂部恵他編『カント事典』(弘文堂)
昔 「社会思想入門」 という授業のために作った、
カントについてのレジュメと資料をアップしようと思っていたんでした。
昨年12月に2回分のうちの第1回目のレジュメをアップしました。
そのレジュメと合わせてご覧いただくべき資料をアップいたします。
第2回目のレジュメと資料も近いうちにアップしたいと思います。
カント①「カントとフランス革命」 資料
1.カント略年譜
1724年 東プロイセン、ケーニヒスベルクにて生誕
1740年 フリードリヒⅡ世(大王)即位
1776年 アメリカ独立宣言
1781年 『純粋理性批判』
1784年 「世界市民的見地における一般史の理念」
1785年 『道徳形而上学基礎づけ』
1786年 フリードリヒⅡ世死去
フリードリヒ・ヴィルヘルムⅡ世即位
1788年 『実践理性批判』 宗教勅令、検閲令の発布
1789年 フランス革命
1790年 『判断力批判』
1791年 フランス人権宣言
1793年 『たんなる理性の限界内における宗教』 ルイ16世斬首
「理論と実践」
1794年 カントの宗教に関する講述を禁ずる勅令発布
1795年 『永遠平和のために』 普・仏 バーゼルの和約
1797年 『道徳形而上学』(第一部「法論」、第二部「徳論」) フリードリヒ・ヴィルヘルムⅡ世死去
フリードリヒ・ヴィルヘルムⅢ世即位
1798年 『諸学部の争い』
1804年 死去
2.「理論と実践」目次
論文原題「理論においては正しくとも実践には役に立たないという俗説について」
第1章「道徳一般における理論と実践との関係について (ガルヴェ教授の異議に答える)」
第2章「国家法における理論と実践との関係について (ホッブズに対する反論)」
第3章「国際法における理論と実践との関係
普遍的博愛の見地 ―換言すれば世界市民的見地において考察された
(モーゼス・メンデルスゾーンに対する反論)」
3.カント「理論と実践」『諸学部の争い』より
①理念としての社会契約
「今やここに根源的契約がある。この契約によってのみ市民的体制が、したがって首尾一貫した法的体制が人々の間に基礎づけられ、公共体が創設されうるのである。この契約 (原始契約あるいは社会契約と名づけられるもの) は、ある民族における各人の特殊な私的意志が、(たんに法的立法を目的として)一つの公的な共通意志として合一することである。しかしこうした契約は決して事実として前提される必要はない (じっさい事実としてはありえない)。もしそうだとしたら、ある民族がかつて実際にそのような契約を取り結び、これに関する確実な報告や証書を口頭なり文書なりで後世に残していなければならず、こうしたことがまず第一に歴史によってあらかじめ証明されていなくてはならないだろう。そのような歴史的事実ではなくて、根源的契約はたんなる理性の理念にほかならない。しかしたんなる理念であるとはいっても、この理念は疑いえぬ (実践的) 実在性をもっているのである。この実在性によって、おのおのの立法者は、彼が立法する法を全国民の合一した意志から発現しえたかのように立法するよう義務づけられるのであり、またおのおのの臣民は、彼が市民であろうと欲するかぎり、あたかも彼も全国民の合一した意志にともに同意したかのようにみなされるのである。」(「理論と実践」)
②抵抗権・革命権の否認
「最上の立法的権力に対する反抗、臣民の不満を行動によって示すように煽る扇動、暴動に化するような蜂起、これらはすべて公共体において厳罰に処せられるべき最高の犯罪である。なぜならそれは公共体の基礎を破壊するからである。」(同上)
「憲法が万一の場合に備えて、すべての特殊な法 (Recht) を発生せしめる根源であるところの体制を (たとえ契約が侵害されたと仮定しても)、覆すような権利 (Recht) を含んでいるというようなことは明らかな矛盾である。…国家におけるいかなる権利も、ひそかな留保―例えば陰謀―によって国民に知らしめずにおくことはできない、まして国民が憲法に属する権利として主張するようなものについてはなおさらである。およそ憲法の含むいっさいの権利は、すべて公的意志から発生したものと考えられねばならないからである。それだからもし仮に憲法が反乱を許容するとしたら、その憲法は反乱の権利を公的に言明せねばならないだろうし、またその反乱の権利をどんな仕方で行使するかを公的に言明せねばならないだろう。」(同上)
③フランス革命の評価
「われわれが同時代において目撃してきた才気煥発なる国民の革命は、成功しようが失敗に終わろうが、また思慮ある人ならば、これをもう一度企ててみたら成功させられるかもしれないという望みがあったとしても、これほどの犠牲を払った実験を繰り返すことを決議することはできないというほどに、この革命は悲惨と残虐行為に満ちたものであったけれども、―それでもなお私は言う、この革命は、すべての観察者 (自身はこの演劇に巻き込まれていなかった人々) の心のうちにほとんど熱狂にも近い、希望に満ちた共感をもたらしたのだ、と。しかもこの革命に対する共感を口にすることさえ危険を伴うほどであったにもかからず、人々はこうした共感を感じたのである。したがってこの共感の原因は、人類に内在する道徳的素質にほかなるまい。」(『諸学部の争い』)
4.参考文献
〈カントの翻訳書〉
・『啓蒙とは何か』(篠田英雄訳、岩波文庫)
・理想社版『カント全集 第13巻』(小倉志祥訳)
・岩波書店版『カント全集 第14巻』(福田喜一郎他訳)
いずれも 「理論と実践」 他、政治・歴史・宗教関係の論文を所収
〈カント社会思想の解説書・研究書〉
・カント研究会編『現代カント研究5 社会哲学の領野』(晃洋書房)
・ハンス・ライス『カントの政治思想』(樽井正義訳、芸立出版)
・ハンナ・アーレント『カント政治哲学の講義』(浜田義文監訳、法政大学出版会)
・牧野英二『カントを読む ポストモダニズム以降の批判哲学』(岩波書店)
・坂部恵他編『カント事典』(弘文堂)