まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

選択的夫婦別姓制度の社会的メリット

2015-02-28 13:29:29 | 性愛の倫理学
追い込まれているときというのはどうしても逃避してしまうものですが、
ムダにネットサーフィンしている最中にたまたまこんな2chまとめサイトを見つけてしまいました。

「夫婦別姓、同性婚に反対してるやつwwwwww」

トピ主が 「反対する理由なんてあるか? 必要とする人たちの選択肢が広がるだけやろ」
という立場でこのトピックを立ち上げたところ、
賛成派、反対派双方からたくさんの意見が寄せられていました。
選択的夫婦別姓制度と同性婚の2つの問題を同時に扱っているため、
議論が錯綜してしまっているところがありますので、
今日は選択的夫婦別姓制度に絞って取り上げることにします。
夫婦別姓問題に関しても賛成派と反対派はけっきょく水掛け論に終わってしまっていますが、
全体に論拠の確かさ、整合性としては賛成派が若干優位で、
反対派がやや劣勢のように見受けられます。
反対派の人たちの最後の拠り所は 「夫婦別姓制度を導入する社会的メリットはあるのか?」
というところに帰着しているようです。

そこで今日は選択的夫婦別姓制度を導入する社会的メリットは何かを論じてみたいと思います。
といっても私は以前に 「選択的夫婦別姓制度と家族の絆」 という記事を書いたことがあり、
そこで書いたことの繰り返しに過ぎません。
ただしあのときは 「家族の絆」 を逆手にとって選択的夫婦別姓制度を支持しましたが、
今回はもっと単純化して次のように言い換えてみたいと思います。

選択的夫婦別姓制度を導入することによって、
少子化する現代日本において姓の減少 (淘汰) を防止することができ、
姓の多様性を保持することができる。
それが選択的夫婦別姓制度を導入する第1のメリットであり、。
これに伴い、結婚と出産の数を増やすことができるという第2のメリットも生じてくる。

以上が今日の私の論点です。
「姓」 といっても 「名字 (苗字)」 といってもいいのですが、
(どうやら 「氏」 というのが一番正しいらしいですが、詳しくはリンク先をご覧ください)
「選択的夫婦別姓制度」 という語に合わせて今日は 「姓」 と呼んでいくことにします。

現在流布している夫婦同姓制度というのは、子どもを5人とかそれ以上産むのが当たり前であった、
ほんのひと昔前までの家族形態を前提として成立していた制度だと思います。
現在の夫婦同姓制度は男性の姓を継がなければいけないと定められているわけではありませんが、
現実としてほとんどの家族で男性の姓が選択されていますので、
話を簡単にするために、結婚によって基本的に男性の姓が受け継がれると仮定して論じていきます。
子だくさんであった時代であれば、その中に1人くらいは男の子が産まれていたでしょう。
最低1人産まれてくれればその子に家族の姓を継いでもらうことができます。
中にはそんなに子だくさんではない家族や、
子だくさんであっても女の子ばかり産まれたとか、
早くに男の子が亡くなってしまったという家族もあったことでしょう。
そういう家族であっても、どこかに男の子がたくさん産まれている家族があるわけで、
そういうところの次男以降の男子に婿入りしてもらうという形で姓の存続を図ることができました。
だんだん子どもを産む数も減ってきましたが、
私が子どもの頃だとまだ3人ぐらい兄弟姉妹がいるという家族が大半で、
それくらいまでは何とかこの制度でやってこられました。

しかし、時代が決定的に変わってしまったのです。
出生率が2を切ってしまいました。
子どもが2人以上いる家族のほうが少ないということになってしまったのです。
そんな時代において夫婦同姓制度を維持し続けたらどうなるでしょうか?
姓の淘汰が始まっていきます。
少子化の時代においては家族のなかに男の子が産まれる可能性がどんどん下がります。
一人っ子の家庭だと確率は2分の1、二人っ子の家庭でも4分の1の確率で男の子が産まれません。
その人たちは結婚相手として、女の子の姓を継いでくれる次男、三男を探さなければなりせんが、
次男、三男だからといってみんながみんな姓を棄てることをよしとするわけではありませんし、
そして、そもそも次男や三男という存在がひじょうに希少な存在になっているのです。
こうして女の子しか生まれなかった家族の姓は誰も継ぐ人がいないということになっていきます。
すると、小野原のようにもともと人数の少なかった姓の家族はあっという間に絶滅してしまうでしょう。
そしてほんの数十年か数百年のあいだに、
佐藤、鈴木、高橋、渡辺、田中、伊藤…といったランキング上位の姓ばかりになってしまうでしょう。

姓の多様性が失われていくと個人の識別が困難になってしまいます。
ランキング上位の姓だと同姓同名という現象も多発するでしょう。
(以前に鈴木さんの事例について報告したことがありましたね。)
それを避けるためにはDQNネームをめったやたらと編み出すしかありません。
そんな世界はイヤじゃないですか。

したがって、少子化が進行しつつある現代日本においては、
もはや夫婦同姓制度は維持しがたい時代遅れの制度になってしまっているのです。
選択的夫婦別姓制度を導入する以外にこの少子化の時代を乗り切っていくことは不可能なのです。
(厳密に言えば 「選択的」 ではなく夫婦別姓を義務づけたほうがいいくらいですが、
 私はリベラリストですのでそんな極論は主張しません。)
選択的夫婦別姓制度を導入すると女性にとって (実は男性にもなんですが)
結婚と出産へのモチベーションが高まります。
結婚へのモチベーションというのは、実家の姓の消滅を心配することなく、
安心して本当に結婚したいと思える相手 (長男でも無問題) と結婚できるようになるということです。
出産へのモチベーションというのは、出産によって確実に姓の存続が可能になるということです。
現行の夫婦同姓制度では出産は姓の存続と結びついていません。
2分の1の確率で親の姓は受け継がれなくなるからです。
親の姓を残すためには男子が産まれるまで子どもを産み続けなければいけませんが、
現代においてそんな50%の確率に賭けて何人も子どもを産み育てられる余裕はありませんし、
しかも、それだけ苦労してもけっきょくのところ残せる姓は1つだけで、
片親 (多くの場合は母親) はすでに実家の姓を失ってしまっているのです。
このように夫婦同姓制度は出産と姓の存続が結びついていません。
これに対して、夫婦別姓制度の場合、男女関係なく姓を継いでもらうことができます。
これは男親にとっても女親にとってもメリットでしょう。
そして、子どもを2人以上産めば両親2人の実家の姓を残すことができるのです。
このように男か女かに関係なく出産が姓の存続を確実にしますので、
夫婦別姓制度の導入は、結婚と出産 (しかも2人以上!) のモチベーションを高めるでしょう。
これは大きな社会的メリットではないでしょうか。

というわけで、少子化の進行する現代日本において姓の多様性の保持が可能となり、
それによって結婚・出産の増加も期待できるというのが、
選択的夫婦別姓制度を導入することによる社会的メリットです。
自民党の皆さん、いかがでしょうか、岸姓や中曽根姓を確実に存続させるためにも、
ぜひ選択的夫婦別姓制度の導入をご検討ください。