【はじめに】
今回も「音と騒音の入門書になれば」と思って書きました。 音は身近な存在ですから、音の勉強を始めると疑問/興味がドンドン沸いてきます。 高価な計測機器が無くても、誰でも簡単な実験をする事が出来ます。 音について考えたら、老人は頭の体操になり、子供は科学に触れる事が出来ます。
私はベートーヴェンが大好きです。 30歳のころから難聴が進み、40歳の頃には大声で話さないと聞き取れなくなった様です。 交響曲第九は54歳の時の作品ですから、完全に聴力を失っていたと言われています。ベートーヴェンの才能は素晴らしいですが、人類の能力は想像以上に高いものなんですね!
【人の声(音声)】
声を出さないで、「あいうえお」、「かきくけこ」と言って見て下さい。舌、唇、喉や口の中を動かす筋肉が無意識に/複雑に動いているのが感じられます。
音声を出すために必要な筋肉を発達させる遺伝子は、人類だけが持っているのです。 (サルには音声言語が可能になるほど、喉・口等の筋肉が発達していません。) 生まれた後の学習で、日本人は「あいうえお」と言える様になるのです。
人類が音声として出せる周波数は予想以上に広いのです。色々な言語が有りますが、その能力の一部を使用しています。 日本語だけ学習すると、125Hz~1,500Hz、アメリカ人が英語で話す時は2,000Hz~12,000Hzだそうです。(人類の可聴周波数は20Hz~20,000Hzです。)
今後・益々、英語が必要になります。英会話の学習は出来るだけ幼い頃から始める必要が有る事が、日本語とアメリカ人の英語の周波数の違いから分かって頂けると思います。
先週、ピアノと周波数について書きましたが、音声は母音(ぼいん)と子音(しいん)の組み合わせですから、非常に複雑です。 「キーー」と長く言って見て下さい。母音の「い」を長く伸ばしてしていて、「いーいー」と発声しているのが分かります。 音声はオシロスコープや高速フーリエ変換器(FFT)だけでは分析出来ないと思います。
音声学や音響音声学が発達して来ています。 貴方の会話を収録して、貴方が喋ったと思われる会話を、合成音で作れる時代になったか?、なろうとしています。 悪用されるとトンデモ無く怖い事になりそうですね!
(余談 :ヘレン・ケラー) ヘレン・ケラーには視覚と聴覚が有りませんでした。 サリバン先生が、1887年・ヘレン・ケラーが7歳の時に「話す事」を教えたのです。 130年以上も前に、盲ろう者に会話(発声)を教える技術が有ったのですね! ヘレン・ケラーは来日して、講演して回りました。 (サルに会話を教えようと努力した学者がいましたが、口の周りの筋肉が未発達ですから、成功しませんでした。)
(余談 :読唇術) 相手の人の唇の動きから、何を話しているのか理解するのを読唇術(読話/口話)と呼びます。 普通は聴覚障害者が活用する技術ですが、昔の知人に読唇術を・ほぼマスターした人がいました。 彼は、読唇術の訓練を受けた分けでは有りませんでした。 会社で休み時間に、彼の能力をテストしたのですが、結構な早口で(発声しないで)喋っても、彼は読み取る事が出来ました。 (人間の能力は凄いです!)
【固有振動数】
同じ形状の大小の皿を並べて叩くと、小さい皿は高い音を、大きな皿は低い音を出します。 (同じ位置を)何回叩いても、同じ音がします。 これを固有振動数(共鳴周波数)と呼びます。
皿に罅(ひび;クラック)が入ると、音が異なります。固有振動数が変化したのです。
固有振動数は、個体、液体、気体にも存在します。 三辺の長さが異なる直方体の箱の内部の空気の固有振動数について考えてみます。辺の長さが1.57m、1.32m、0.88mとします。前稿の【音楽のオクターヴ】に書いた様に、ラ3の波長は1.57m、ド4の波長は1.32m、ソ4の波長は0.88mです。この箱の空気はラ3、ド4、ソ4の3種類の固有振動数を持っています。
【音の透過】
部屋のガラス窓から音が外部に漏れる事は誰にでも分かります。部屋の壁を、木製の板、鉄板、コンクリイトの板にしても少しは漏れます。
一重のガラス窓が有ったら、人差し指を曲げて、「コツコツ」叩いて見て下さい。この音の周波数が、このガラスの固有振動数です。 この固有振動数の音がガラス窓に当たると、反射率は小さくなり、透過率が高くなります。
厚さの異なる2枚のガラス板を用いた二重ガラス窓にすると、大幅に透過率を下げる事が出来ます。
旅客機の窓のガラスは三重になっているそうです。 外側のガラスが割れても、内側の2枚のガラスで持ち堪える様になっているのです。 ジェットエンジンの騒動を遮断する効果もあります。
(余談 :我が家) 私は1985年に家を建てました。 技術屋の端くれですから、各社のカタログや建物に関する論文を集めて、耐火性(延焼し難さ)、耐震性/強度、耐久性、断熱性、遮音性、家庭電気製品の将来の普及を予想したコンセント数などなどを検討しました。 私の予算内で最も優れていると判断したのは、ツーバイフォー工法でした。
ツーバイフォーの壁は、木枠の間にガラスウールを充填し、両面に合板(ベニヤ板)を張ったパネルを柱と梁の間に固定しています。外側にはモルタルを塗って、内側には石膏ボードか合板を取り付け、樹脂製などのクロスを貼っています。 従来の漆喰(しっくい)壁よりも、断熱性と遮音性に優れているのです。
窓には、断熱性と遮音性に優れた二重ガラスのアルミサッシを採用しました。当時、民家には、二重ガラスのアルミサッシは余り普及していませんでした。 5年前に次男がマンションを購入したのですが、二重ガラスのアルミサッシの性能が大幅に向上していたので、驚きました。
(注記) 日本は湿度の高い国ですから、断熱性/気密性の高い家を建てるとカビが発生し易くなります。 LIXIL社が『エコカラット』と言う、湿気を吸ったり/吐いたりする(吸湿性の有る)特殊なタイルを売っています。「カビ」に悩まされているお宅には、少し高価ですが豪華な部屋に生まれ変わりますので推奨します。
【隙間から漏れる音】
ドアや窓を開けると音が漏れます。 空気が流れる隙間が有ると、音は漏れます。 隙間が広くなると、音が沢山漏れます。 これを『隙間漏洩音』と呼びます。
事務所や工場では、換気ダクトが合流や/分岐する構造になっているケースが多いいですが、ダクトを通して別の部屋の騒音や会話が聞こえる事が有ります。 これも、一種の隙間漏洩音です。
【音のエネルギーの蓄積】
音のエネルギーは『貯まり(蓄積し)』ます。 前稿に、音は壁、天井、床で音が反射すると書きました。 部屋の中で、瞬間的に「カン」と言う音が出たとします。 その後に音が発生しなくても、暫く音の反射は続きます。 部屋の中に音のエネルギーは残っているのです。 これを『残響』と呼びます。
人間の大人は、残響音を意識しない能力を学習していると思われます。 騒々しい呑み屋でも、仲間でない人達の音声を無視して、会話が出来る能力に似ています。 会話している部屋の中は、残響音だらけですが、気になりません。 (「赤ちゃんは、残響音を無視する学習は出来ていない」点を配慮してあげて下さい。 騒々しい所では、「どれが不要な音か?区別出来ないで聞いているので、困惑して泣き出すのだ」と私は思っています。)
コンサートホールと映画館では、音響効果についての設計思想が違います。コンサートホールはある程度残響した方が良く、映画館は役者のセリフを聞き取り易くするために、残響を抑える必要が有ります。
コンサートホールの壁や天井を可動式/取替式にしたら、指揮者や演奏家が希望する残響効果が得られ、素晴らしい演奏が聴けるのでは?と私は期待しています。
ピアノは弦が振動して→空気を振動させます(縦波を発生させます)。 何の工夫もしないと、弦は暫く振動します。 ピアノには適当な時間で弦が振動しなくなる機構が組み込まれています。ピアノにはペダルが3本ありますが、右側のペダルを踏むと・この機構が解除されるので、弦が長く振動します。
(余談 :釣鐘の残響音) 有る古刹に行った時、丁度・坊さんが大きな梵鐘(釣鐘)を突き始めました。撞き終わって坊さんが帰り出した時、私は釣鐘の下に入って見ました。 強烈な残響音を経験する出来ました。 釣鐘を突くと、釣鐘の固有振動数で振動が続き、暫く唸る様な音を出します。 突いたエネルギーの一部が、固有振動数の振動エネルギーになって蓄積したのです。
【極低周波音】
殆どの人には聞こえない20Hz以下の音を『極低周波音』と呼びます。 「聞こえないのだから問題なかろう!」と考えてはダメです。
大きな極低周波音が部屋に入って来ると、風も無いのに障子や襖が動いて「ガタガタ」と音を出します。 (お化け屋敷よりも怖いですね!) 初期の超大形高炉が建設された頃、実際に日本で発生した問題です。
伊丹十三の『マルサの女』だったと思いますが、裏金を隠した二階に通じる階段を捜査員が登ろうとすると、強力な極低周波音が発生するシーンが有りました。極低周波音は、殆どの人には聞こえませんが、身体は感じます。 気分が悪くなってしまいます。
(余談 :体験) 地下1階、地上2階建ての下水処理場に機械を納入した時、私は酷い極低周波音を体験しました。 機械を据え付けた地下室から屋上に登る螺旋階段が有り、私の納入した機械の吸・排気音を測定する為に、何回か屋上に行く必要が有りました。鉄骨製の螺旋階段は、5m✕5m✕高さ20m以上のコンクリート造で密閉した階段室に設けられていました。 階段室の床と天井間の距離による固有振動数は345/20=17Hz程になります。 17Hz近辺の極低周波音が蓄積されていたのです。 私は吐き気を催しました。
(余談 :勉強) 私は1971年に社会人になったのですが、振動と騒音の研究者になろうと考えて、勉強を始めました。 高炉から発生する極低周波音が問題視され始めていたので、関連する論文を集めて読みました。 当時、日本にはこの分野の研究者が殆どいなかったので、論文は全て英語で、苦労しました。
【音源の形状】
音が発生している所を音源と呼びます。 音源から離れた位置の予想騒音を計算で求める場合に、次の①~③のどの音源と見なすか?が問題になります。 音源から少し離れた場所の騒音を計算する時は、点音源として計算しても大差無い結果になります
① 点音源 :小さな『点』から音が発生すると、音は四方八方、あらゆる方向に広がります。
② 線音源 :スピーカーを一直線に並べて同じ周波数/大きさの音を出す様な音源を、線音源と呼びます。
③ 面音源 :球場の照明の様に、スピーカーを沢山・配置して同じ周波数/大きさの音をす様な音源を、面音源と呼びます。
【距離減衰】
東京スカイツリーの天辺に点音源が有ったとします。 遮蔽物が無いですから、音は四方八方に広がります。
点音源からの距離が『R1』mの音が100dBだったとします。 『R2』mの位置の音は次の式で求められます。 ( log10=1、 log100=2、 log1,000=3です。)
R2の位置の音は =100― 20 × log (R2/R1) ・・・単位はデシベル(dB)です。
点音源から1mの所で100dBだったら、10mの位置では100-20=80dBに、100mの位置では100-40=60dB、1,000mの位置は100-60=40dBになります。音源から離れると、音はドンドン小さくなります。この現象を『距離減衰』と呼びます。
60dBの音が聞こえる人だと、上記の点音源で発生した音を100m先で感知出来て、40dBの音が聞こえる人は1,000m先でも感知出来ます。
狼は人間よりも小さな音が聞こえるので、遠くの獲物や天敵の出す音を聞いて、狩りをしたり、逃げたりして生き残って来ました。
今回も「音と騒音の入門書になれば」と思って書きました。 音は身近な存在ですから、音の勉強を始めると疑問/興味がドンドン沸いてきます。 高価な計測機器が無くても、誰でも簡単な実験をする事が出来ます。 音について考えたら、老人は頭の体操になり、子供は科学に触れる事が出来ます。
私はベートーヴェンが大好きです。 30歳のころから難聴が進み、40歳の頃には大声で話さないと聞き取れなくなった様です。 交響曲第九は54歳の時の作品ですから、完全に聴力を失っていたと言われています。ベートーヴェンの才能は素晴らしいですが、人類の能力は想像以上に高いものなんですね!
【人の声(音声)】
声を出さないで、「あいうえお」、「かきくけこ」と言って見て下さい。舌、唇、喉や口の中を動かす筋肉が無意識に/複雑に動いているのが感じられます。
音声を出すために必要な筋肉を発達させる遺伝子は、人類だけが持っているのです。 (サルには音声言語が可能になるほど、喉・口等の筋肉が発達していません。) 生まれた後の学習で、日本人は「あいうえお」と言える様になるのです。
人類が音声として出せる周波数は予想以上に広いのです。色々な言語が有りますが、その能力の一部を使用しています。 日本語だけ学習すると、125Hz~1,500Hz、アメリカ人が英語で話す時は2,000Hz~12,000Hzだそうです。(人類の可聴周波数は20Hz~20,000Hzです。)
今後・益々、英語が必要になります。英会話の学習は出来るだけ幼い頃から始める必要が有る事が、日本語とアメリカ人の英語の周波数の違いから分かって頂けると思います。
先週、ピアノと周波数について書きましたが、音声は母音(ぼいん)と子音(しいん)の組み合わせですから、非常に複雑です。 「キーー」と長く言って見て下さい。母音の「い」を長く伸ばしてしていて、「いーいー」と発声しているのが分かります。 音声はオシロスコープや高速フーリエ変換器(FFT)だけでは分析出来ないと思います。
音声学や音響音声学が発達して来ています。 貴方の会話を収録して、貴方が喋ったと思われる会話を、合成音で作れる時代になったか?、なろうとしています。 悪用されるとトンデモ無く怖い事になりそうですね!
(余談 :ヘレン・ケラー) ヘレン・ケラーには視覚と聴覚が有りませんでした。 サリバン先生が、1887年・ヘレン・ケラーが7歳の時に「話す事」を教えたのです。 130年以上も前に、盲ろう者に会話(発声)を教える技術が有ったのですね! ヘレン・ケラーは来日して、講演して回りました。 (サルに会話を教えようと努力した学者がいましたが、口の周りの筋肉が未発達ですから、成功しませんでした。)
(余談 :読唇術) 相手の人の唇の動きから、何を話しているのか理解するのを読唇術(読話/口話)と呼びます。 普通は聴覚障害者が活用する技術ですが、昔の知人に読唇術を・ほぼマスターした人がいました。 彼は、読唇術の訓練を受けた分けでは有りませんでした。 会社で休み時間に、彼の能力をテストしたのですが、結構な早口で(発声しないで)喋っても、彼は読み取る事が出来ました。 (人間の能力は凄いです!)
【固有振動数】
同じ形状の大小の皿を並べて叩くと、小さい皿は高い音を、大きな皿は低い音を出します。 (同じ位置を)何回叩いても、同じ音がします。 これを固有振動数(共鳴周波数)と呼びます。
皿に罅(ひび;クラック)が入ると、音が異なります。固有振動数が変化したのです。
固有振動数は、個体、液体、気体にも存在します。 三辺の長さが異なる直方体の箱の内部の空気の固有振動数について考えてみます。辺の長さが1.57m、1.32m、0.88mとします。前稿の【音楽のオクターヴ】に書いた様に、ラ3の波長は1.57m、ド4の波長は1.32m、ソ4の波長は0.88mです。この箱の空気はラ3、ド4、ソ4の3種類の固有振動数を持っています。
【音の透過】
部屋のガラス窓から音が外部に漏れる事は誰にでも分かります。部屋の壁を、木製の板、鉄板、コンクリイトの板にしても少しは漏れます。
一重のガラス窓が有ったら、人差し指を曲げて、「コツコツ」叩いて見て下さい。この音の周波数が、このガラスの固有振動数です。 この固有振動数の音がガラス窓に当たると、反射率は小さくなり、透過率が高くなります。
厚さの異なる2枚のガラス板を用いた二重ガラス窓にすると、大幅に透過率を下げる事が出来ます。
旅客機の窓のガラスは三重になっているそうです。 外側のガラスが割れても、内側の2枚のガラスで持ち堪える様になっているのです。 ジェットエンジンの騒動を遮断する効果もあります。
(余談 :我が家) 私は1985年に家を建てました。 技術屋の端くれですから、各社のカタログや建物に関する論文を集めて、耐火性(延焼し難さ)、耐震性/強度、耐久性、断熱性、遮音性、家庭電気製品の将来の普及を予想したコンセント数などなどを検討しました。 私の予算内で最も優れていると判断したのは、ツーバイフォー工法でした。
ツーバイフォーの壁は、木枠の間にガラスウールを充填し、両面に合板(ベニヤ板)を張ったパネルを柱と梁の間に固定しています。外側にはモルタルを塗って、内側には石膏ボードか合板を取り付け、樹脂製などのクロスを貼っています。 従来の漆喰(しっくい)壁よりも、断熱性と遮音性に優れているのです。
窓には、断熱性と遮音性に優れた二重ガラスのアルミサッシを採用しました。当時、民家には、二重ガラスのアルミサッシは余り普及していませんでした。 5年前に次男がマンションを購入したのですが、二重ガラスのアルミサッシの性能が大幅に向上していたので、驚きました。
(注記) 日本は湿度の高い国ですから、断熱性/気密性の高い家を建てるとカビが発生し易くなります。 LIXIL社が『エコカラット』と言う、湿気を吸ったり/吐いたりする(吸湿性の有る)特殊なタイルを売っています。「カビ」に悩まされているお宅には、少し高価ですが豪華な部屋に生まれ変わりますので推奨します。
【隙間から漏れる音】
ドアや窓を開けると音が漏れます。 空気が流れる隙間が有ると、音は漏れます。 隙間が広くなると、音が沢山漏れます。 これを『隙間漏洩音』と呼びます。
事務所や工場では、換気ダクトが合流や/分岐する構造になっているケースが多いいですが、ダクトを通して別の部屋の騒音や会話が聞こえる事が有ります。 これも、一種の隙間漏洩音です。
【音のエネルギーの蓄積】
音のエネルギーは『貯まり(蓄積し)』ます。 前稿に、音は壁、天井、床で音が反射すると書きました。 部屋の中で、瞬間的に「カン」と言う音が出たとします。 その後に音が発生しなくても、暫く音の反射は続きます。 部屋の中に音のエネルギーは残っているのです。 これを『残響』と呼びます。
人間の大人は、残響音を意識しない能力を学習していると思われます。 騒々しい呑み屋でも、仲間でない人達の音声を無視して、会話が出来る能力に似ています。 会話している部屋の中は、残響音だらけですが、気になりません。 (「赤ちゃんは、残響音を無視する学習は出来ていない」点を配慮してあげて下さい。 騒々しい所では、「どれが不要な音か?区別出来ないで聞いているので、困惑して泣き出すのだ」と私は思っています。)
コンサートホールと映画館では、音響効果についての設計思想が違います。コンサートホールはある程度残響した方が良く、映画館は役者のセリフを聞き取り易くするために、残響を抑える必要が有ります。
コンサートホールの壁や天井を可動式/取替式にしたら、指揮者や演奏家が希望する残響効果が得られ、素晴らしい演奏が聴けるのでは?と私は期待しています。
ピアノは弦が振動して→空気を振動させます(縦波を発生させます)。 何の工夫もしないと、弦は暫く振動します。 ピアノには適当な時間で弦が振動しなくなる機構が組み込まれています。ピアノにはペダルが3本ありますが、右側のペダルを踏むと・この機構が解除されるので、弦が長く振動します。
(余談 :釣鐘の残響音) 有る古刹に行った時、丁度・坊さんが大きな梵鐘(釣鐘)を突き始めました。撞き終わって坊さんが帰り出した時、私は釣鐘の下に入って見ました。 強烈な残響音を経験する出来ました。 釣鐘を突くと、釣鐘の固有振動数で振動が続き、暫く唸る様な音を出します。 突いたエネルギーの一部が、固有振動数の振動エネルギーになって蓄積したのです。
【極低周波音】
殆どの人には聞こえない20Hz以下の音を『極低周波音』と呼びます。 「聞こえないのだから問題なかろう!」と考えてはダメです。
大きな極低周波音が部屋に入って来ると、風も無いのに障子や襖が動いて「ガタガタ」と音を出します。 (お化け屋敷よりも怖いですね!) 初期の超大形高炉が建設された頃、実際に日本で発生した問題です。
伊丹十三の『マルサの女』だったと思いますが、裏金を隠した二階に通じる階段を捜査員が登ろうとすると、強力な極低周波音が発生するシーンが有りました。極低周波音は、殆どの人には聞こえませんが、身体は感じます。 気分が悪くなってしまいます。
(余談 :体験) 地下1階、地上2階建ての下水処理場に機械を納入した時、私は酷い極低周波音を体験しました。 機械を据え付けた地下室から屋上に登る螺旋階段が有り、私の納入した機械の吸・排気音を測定する為に、何回か屋上に行く必要が有りました。鉄骨製の螺旋階段は、5m✕5m✕高さ20m以上のコンクリート造で密閉した階段室に設けられていました。 階段室の床と天井間の距離による固有振動数は345/20=17Hz程になります。 17Hz近辺の極低周波音が蓄積されていたのです。 私は吐き気を催しました。
(余談 :勉強) 私は1971年に社会人になったのですが、振動と騒音の研究者になろうと考えて、勉強を始めました。 高炉から発生する極低周波音が問題視され始めていたので、関連する論文を集めて読みました。 当時、日本にはこの分野の研究者が殆どいなかったので、論文は全て英語で、苦労しました。
【音源の形状】
音が発生している所を音源と呼びます。 音源から離れた位置の予想騒音を計算で求める場合に、次の①~③のどの音源と見なすか?が問題になります。 音源から少し離れた場所の騒音を計算する時は、点音源として計算しても大差無い結果になります
① 点音源 :小さな『点』から音が発生すると、音は四方八方、あらゆる方向に広がります。
② 線音源 :スピーカーを一直線に並べて同じ周波数/大きさの音を出す様な音源を、線音源と呼びます。
③ 面音源 :球場の照明の様に、スピーカーを沢山・配置して同じ周波数/大きさの音をす様な音源を、面音源と呼びます。
【距離減衰】
東京スカイツリーの天辺に点音源が有ったとします。 遮蔽物が無いですから、音は四方八方に広がります。
点音源からの距離が『R1』mの音が100dBだったとします。 『R2』mの位置の音は次の式で求められます。 ( log10=1、 log100=2、 log1,000=3です。)
R2の位置の音は =100― 20 × log (R2/R1) ・・・単位はデシベル(dB)です。
点音源から1mの所で100dBだったら、10mの位置では100-20=80dBに、100mの位置では100-40=60dB、1,000mの位置は100-60=40dBになります。音源から離れると、音はドンドン小さくなります。この現象を『距離減衰』と呼びます。
60dBの音が聞こえる人だと、上記の点音源で発生した音を100m先で感知出来て、40dBの音が聞こえる人は1,000m先でも感知出来ます。
狼は人間よりも小さな音が聞こえるので、遠くの獲物や天敵の出す音を聞いて、狩りをしたり、逃げたりして生き残って来ました。