これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

音と騒音 (その2)

2021-02-13 12:03:54 | 
【はじめに】
 人類は大昔から音楽が大好きです。 文字の無い時代から、笛、太鼓、弦楽器を工夫して、後世に伝えて来ました。 楽器は全て”感”で作っていたのです。

 音の計測機器が第二次世界大戦後に普及して、音の研究者が増えて、騒音対策だけでなく、音を制御して素晴らしいコンサートホールを設計したり出来る様になりました。 本稿は音と騒音の入門書として書きました。

【音楽のオクターヴ】
 昔、西欧諸国の大学では『音楽』は、(芸術では無く)科学と見なされていました。周波数と言う概念がまだ存在していなかったと思われる頃から、「音楽は、何か自然法則に従うものだ」と気が付いていたのです。

 人類は、周波数が2倍、4倍、8倍・・・の音を同じグループだと感じるのです。 それで、『オクターヴ』という概念が出来たのだと思います。 (ピアノで周波数の音が確認出来ます。)

 現在、市販されているピアノの多くは、88鍵盤で(白鍵が52、黒鍵が36)です。 7オクターヴ+3鍵です。鍵盤と周波数及び波長の関係を以下に整理しておきます。 (実際のピアノの調律では、顧客の要望で少し周波数を高めにしているケースがある様です。)

 周波数=音速/波長 (単位はHz)
 波長=音速/周波数 (単位はm)

 音速を『345m/s』とした時の波長も(後に必要なので)書いておきます。

1番目の鍵盤=ラ0 :27.500Hz (波長; 12.55m)
・・・・・・
37番目の鍵盤=ラ3 :220.000Hz (1.57m)
39番目の鍵盤=シ3 :246.942Hz (1.40m)
40番目の鍵盤=ド4 :261.626Hz (1.32m)
42番目の鍵盤=レ4 :293.665   (1.17m)
44番目の鍵盤=ミ4 :329.628Hz  (1.05m)
45番目の鍵盤=ファ4 :349.228Hz (0.99m)
47番目の鍵盤=ソ4 :391.995Hz  (0.88m)
49番目の鍵盤=ラ4 :440.000Hz  (0.78m)
・・・・・・
88番目の鍵盤=ド8 :4186.009Hz (波長; 0.08m)

【白色音】
 光は電磁波です。目で見える光を可視光線と呼びます。可視領域の電磁波を満遍なく含んだ光は、『白』く見えるので『白色光』と呼びます。 (日中の太陽光は、白色光に近いです。)

 人間の耳で聞こえる周波数(20Hz~20,000Hz)の音が満遍なく混じった音を『ホワイトノイズ(白色騒音)』と呼びます。「シャー」と聞こえるそうです。

 厳密なホワイトノイズを発生させるのは、今でも難しい様です。 1975年頃に、私は音響の実験でホワイトノイズが必要だったのですが、市販の風船を買ってきて、パンパンに膨らませ、針で突いて割ってみました。 他に方法を思いつかなかったのです。

 私が若い頃に担当したガスタービンの騒音は、白色騒音に近かったのです。 消音器や防音パッケージを設計しましたが、高周波音から低周波音まで消す必要が有りました。

(余談 :ホワイトノイズ発生器) 適当な音量でホワイトノイズを流すと、人間は集中力が増すそうです。 子供や学生が勉強する時に、ホワイトノイズ発生器を利用するケースが増えて来ている様です。 4,000円程で入手出来ますから、試して見て下さい。

 睡眠薬が無いと眠れない方や、集合住宅で夜中にコツコツ音が伝わって来て、目覚めてしまう方には、ホワイトノイズ発生器は有効な様です。

 適当な音量のホワイトノイズは、人間にとって有意義なケースが有りますから、ノイズ(騒音)と呼んでは可愛そうです。それで、私は「白色音」と呼んでいます。

【機械と騒音】
 私が経験した騒音の大きな機械は、①超大形のルーツブロワーが第一で、②ガスタービン、③超大形で低速の舶用ディーゼルエンジンでした。私が入っていた事務所から、ルーツブロワーの試運転場まで100mほども有りましたが、試運転が始まると耐えられ無い様な状況になりました。 (③のディーゼルエンジンは騒音だけで無く、振動も強烈です。)

 飛行機のジェットエンジンとガスタービンは兄弟の様な機械です。 従って、ジェットエンジンの音も脅威的です。 ガスタービンの場合は、吸気側と排気側に消音器を設け、本体を防音パッケージで覆っています。ジェットエンジンには、騒音対策は出来ません。 ジェットエンジンの排気口の近くの騒音は、120dB~130dBほど有ると思われます。

 飛行機でエンジンの近くの席に座っても、騒音はそれほど苦になりません。 機体に難しい/金の掛かる防音技術が駆使されているからです。壁を侵入する音を低減する為には、普通は壁を厚く/重くしますが、飛行機では軽い壁で透過音を下げる必要が有ります。

【音の伝わる速度(音速)】
 音の伝わる速さを『音速』と呼びます。 音は、ガス体(気体)、液体、個体の中を伝わります。本稿は騒音について書いていますで、空気の音速を考えて見ます。 圧力と温度によって音速は変化します。 私達が住んでいる環境(1気圧で25℃)の音速は『345m/s』です。

 光の伝わる速さを『光速』と呼び、30万km/sです。光は音よりも87万倍も早く伝わります。 雷が発生すると、音と光を発します。 ピッカと光ったら、音が到達するまでの秒数を計ると雷までの距離が分かります。 (私は、「ゼロイチ、ゼロニ、ゼロサン・・・」と数えます。練習すると、ほぼ正確な秒数を計ることが出来ます。)

 雷が光って、10秒後に音が聞こえたら、10✕345=3,450m先で雷が発生したのです。

 オーケストラでは沢山の演奏者がいます。指揮者からの距離が違います。打楽器は一番遠いい位置です。 従って、「打楽器奏者は、ほんの一瞬早く叩いて、指揮者の耳にバイオリンの音と同時に達する様に工夫している」と言う話を聞いた事が有ります。

(余談 :ヘリウムガス) 気体の中ではヘリウムガスの音が一番早く、(常温/1気圧では)『790m/s』も有り、空気の2.2倍です。 ヘリウムガスを口の中に入れて、話すと”変な声”になるので、宴会の余興で使われる芸です。 「何故?声がかわるのか?」、このシリーズのブログを最後まで読んで頂いた後に考えて頂いたら分かると思います。

【音の反射と反射率】
 光は鏡や壁に当たるとはね返ります(反射します)。 音も、個体や液体の表面に当たると反射します。 後述の極低周波音は雲でも反射して、予想外に遠いい所に到達する事が有ります。

 『エネルギー 1.00』を持った音が、壁面に当たったとします。 エネルギーの一部は熱にになり、一部は壁を突き抜けます(透過します)。 大半のエネルギーは反射します。反射した音の持つエネルギーを反射率と呼びます。

 反射率は、入射した音の周波数、壁面の滑らかさ、硬さなどで変わります。 コンクリート面だと『0.97~0.99』ほどです。(低周波数の音は99%が反射されます。) 壁面を硬い材質(例えば、タイル)にすると反射率は高くなります。

(余談 :山彦) 山彦は、「自分の声が向かいの山で反射したのだ」と誰にでも分かります。 室内で二人が会話している時、対面しないで(そっぽを向いて)話しても相手の声が聞こえますが、それは壁面、天井、床からの反射音が聞こえるからです。 山彦は数秒遅れて聞こえますが、壁などからの反射音は、(距離が短いので)殆ど同時に耳に到達します。 そのために、反射音を聞いているのだと気付きません。 (後述の無響音室では、反射音が無いので、対面で話すか、耳の傍で話さないと聞こえません。)

(余談 :ビルの反射音) 都会では背の高いビルが乱立しています。 工事の音が聞こえて来ても、どちらの方角で工事しているのか?判断出来無い場合も有ります。

【位相と逆位相】
 位相の説明は省略します。 インターネットで、『位相 わかりやすい高校物理の部屋』で検索してください。。

 音は空気の圧力の変化です。 一直線上をA点に向かって左右から、周波数が同じで、同じ大きさの音が進んで来ているとします。 一番高い時の圧力を『+1』、一番低い時の圧力を『-1』とします。 A点に到達した時、左から来た音は最高の圧力『+1』で、右からの音が『-1』の状態だったとします。

 (+1)+(-1)=0 です。 つまり、A点で音が消えるのです。 左から来た音の圧力が『+1』で、右からの音が『-0.8』の状態のA点到達したらどうなりますか? (+1)+(-0.8)=0.2 ・・・音は小さくなります。

 この現象は私達の周りで、常に起こっています。 この原理を用いた、ディーゼルエンジンやポンプ用の機械的消音器は昔から製造されて来ました。(私は、このタイプのポンプ用消音器を作った事が有ります。) 現在は、音響技術が進歩したので、逆位相の音を発生させて騒音を小さくする『アクティブ騒音制御システム』が沢山活躍しています。 例えば:高速道路などで。

 『毒を以て毒を制す』と言う諺の様な技術が、実際に利用されているのです。


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