これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

米中貿易戦争の本質 (補遺)

2021-05-01 10:20:46 | 国際問題
【はじめに】
 「米中貿易戦争の本質」と言うタイトルで、私は今まで3回投稿しました。 前稿では「第三次世界大戦だ!」とまで書きましたが、多分・大方の方は「大袈裟だ!」と思われたと想像します。

 アメリカの近年の貿易収支と経常収支の推移を見て頂ければ、トランプ氏が中国に宣戦布告をせざるを得なかった状況を、皆さんに御理解頂けると思っています。

 大西洋評議会の『より長い電報』では中国を問題視していますが、アメリカが努力して「自らの社会と経済を改革する必要が有る」と私は見ています。 然し、アメリカだけでは、アメリカの改革は不可能なのも分かります。 結局、西側諸国が協力してアメリカを改革して行かざるを得ないのでしょう!

【日米中の貿易収支の推移】
 米中の貿易収支の推移を眺めると、「何故?トランプ氏が米中貿易戦争を仕掛けたのか?」を理解出来ます。 アメリカは1980年頃から40年以上・毎年!・毎年!貿易収支の赤字が続いています。 21世紀になって、赤字額は拡大するばかりで、減少する兆しは全く見えません。 アメリカ以外の国だったら、とっくの昔にデフォルト(債務不履行)になっていたと思われます。

 個人や企業だったら自ら努力して『入りを図って出を制す』を実行しないと破産/倒産してしまいます。 21世紀になって覇権主義を露骨に進め出した中国を(これ幸いと)悪者にして、西側諸国の協力を取付て、アメリカは赤字体質から抜け出そうとしている様に見えます。

 トランプ氏は、「自助努力では難局を切り抜けられない!」と判断したのだと思われます。 「アメリカがデフォルトになったら、貴方の国も困るでしょう!」、「このまま放置したら、10年後には中国が世界一の強国になって、中国に都合の良い国際ルールに従って貴国は生きる事を要求されます。それで良いのですか?」と主張している様に思いました。 身勝手な主張ですが、日本を含めた西欧諸国はアメリカに協力せざるを得ないでしょう!

 中国の貿易収支の黒字が拡大し始めたのは、2005年頃からです。 2005年にはアメリカの貿易赤字は90兆円程にまで拡大していたので、中国のせいで赤字体質国家になったのでは有りません。 アメリカの企業が外国に工場を建設するのを奨励(または放任)し続けた結果、赤字体質の国家になってしまったのです。 そして、アメリカの企業は莫大な収益を上げてアメリカ国民は潤いましたが、国家は赤字に苦しむ事になりました。

 中国は欧米諸国からの莫大な投資で工場を建設し、技術移管を得て、国際ルールに従って輸出を増やし、外貨を獲得する様になりました。 決して、他国を略奪して『金』を得ている分けでは有りません。 そして、その金と、共産党独裁国家のメリットを十二分に活用して、軍備拡大/近代化と、第四次産業革命の覇者になる事を目論んで研究/開発予算を増やして来ました。 これらの政策も国際ルール違反とは言えません。

 国際ルール違反の①ジェノサイド、②覇権主義と言う2つを建前の理由にして、トランプ氏は米中貿易戦争を始めざるを得なかったのです。

2020年 :米=-105.40兆円、中=57.82兆円、日=0.74兆円 ・・・バイデン大統領
2019年 :米=-99.82兆円、中=45.48兆円、日=-1.46兆円
2018年 :米=-102.63兆円、中=37.90兆円、日=-1.12兆円 ・・・米中貿易戦争
2017年 :米=-93.12兆円、中=45.31兆円、日=2.83兆円
2016年 :米=-86.31兆円、中=55.05兆円、日=4.03兆円 ・・・トランプ大統領
2015年 :米=-87.77兆円、中=64.14兆円、日=-2.51兆円
2014年 :米=-85.54兆円、中=41.37兆円、日=-13.18兆円
2013年 :米=-80.94兆円、中=27.97兆円、日=-12.71兆円
2012年 :米=-85.41兆円、中=24.87兆円、日=-9.43兆円 ・・・習近平が総書記に就任
2011年 :米=-84.62兆円、中=16.73兆円、日=-3.48兆円
2010年 :米=-74.59兆円、中=19.60兆円、日=8.18兆円
2009年 :米=-59.32兆円、中=21.13兆円、日=3.10兆円 ・・・オバマ大統領
2008年 :米=-95.26兆円、中=32.20兆円、日=2.04兆円
2007年 :米=-94.20兆円、中=28.55兆円、日=9.94兆円
2006年 :米=-96.35兆円、中=19.17兆円、日=7.31兆円
2005年 :米=-89.31兆円、中=11.02兆円、日=8.54兆円
2004年 :米=-76.77兆円、中=3.47兆円、日=12.00兆円
2003年 :米=-62.45兆円、中=2.75兆円、日=9.60兆円
2002年 :米=-54.77兆円、中=3.29兆円、日=8.59兆円 ・・・胡錦濤が総書記に就任
2001年 :米=-48.61兆円、中=2.43兆円、日=5.88兆円 ・・・小ブッシュ大統領
2000年 :米=-51.56兆円、中=2.61兆円、日=10.78兆円

出典 :2020年はグローバルノート、その他の年は『世界経済のネタ』のデータ(米ドル)を、1$=108円として、私が強引に『円』に換算しました。 為替変動を無視しているので、学研的な厳密さと言う点では問題が有ります。 私は、米ドルで議論されるとピンと来ないので、批判覚悟で『円』に換算しました。

【日米中の経常収支の推移】
 御参考までに日米中の経常収支の推移も以下に示します。 経常収支は貿易収支と、それ以外の金の収支を合算したものです。 アメリカは経常収支も大幅な赤字が続いています。 アメリカの蛇口は壊れてしまって、毎年多量の金が流失しているのです。 

 アメリカは蛇口を自分で修理すべきですが、そうしたら国民の負担が大きくなり、政治家は選挙に勝てなくなります。 西側諸国に莫大な金を出させて、修理しようとしている様に見えます。

2021年 :米=-94.65兆円、中=29.54兆円、日=21.06兆円
2020年 :米=-69.81兆円、中=32.27兆円、日=17.91兆円
2019年 :米=-51.86兆円、中=15.26兆円、日=20.32兆円
2018年 :米=-48.57兆円、中=2.75兆円、日=19.10兆円
2017年 :米=-39.45兆円、中=21.07兆円、日=21.98兆円
2016年 :米=-42.65兆円、中=21.84兆円、日=21.38兆円
2015年 :米=-43.99兆円、中=32.85兆円、日=14.74兆円
2014年 :米=-39.72兆円、中=25.49兆円、日=3.97兆円
2013年 :米=-36.38兆円、中=16.01兆円、日=4.96兆円
2012年 :米=-45.16兆円、中=23.26兆円、日=6.45兆円
2011年 :米=-49.17兆円、中=14.70兆円、日=14.02兆円
2010年 :米=-46.66兆円、中=25.68兆円、日=23.87兆円
2009年 :米=-41.01兆円、中=26.27兆円、日=15.69兆円
2008年 :米=-75.22兆円、中=45.42兆円、日=15.40兆円
2007年 :米=-79.55兆円、中=38.14兆円、日=22.91兆円
2006年 :米=-88.20兆円、中=25.04兆円、日=18.85兆円
2005年 :米=-80.92兆円、中=14.30兆円、日=18.38兆円
2004年 :米=-68.68兆円、中=7.45兆円、日=19.66兆円
2003年 :米=-56.41兆円、中=4.65兆円、日=15.06兆円
2002年 :米=-49.26兆円、中=3.83兆円、日=11.79兆円
2001年 :米=-42.56兆円、中=1.88兆円、日=9.31兆円
2000年 :米=-43.41兆円、中=2.21兆円、日=14.11兆円

★ 経常収支 = 貿易収支 + サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支
 経常収支は、他国との商品取引の収支だけでなく、外国との旅行費用、投資金額、援助金など、金の遣り取りを全て合算した収支です。

出典 :2020年はグローバルノート、その他の年は『世界経済のネタ』のデータ(米ドル)をベースにして、貿易収支の時と同じ要領で円に換算をしました。

【決済通貨と米中貿易戦争】
 アメリカ合衆国は、連邦準備銀行が金を保有して金本位制を維持していましたが、1933年に金本位制を停止しました。(ドル紙幣は兌換紙幣では無くなったのです。) 1934年に金は財務省に移管して、1オンス(28.35g)=35米ドルとしました。

 他国の中央銀行から要求が有れば、『1オンス(28.35g)=35米ドル』のレートでドルと金を交換する事にしたのです。 そのために、戦後の貿易通貨として米ドルが主役になりました。 その後、金の保有量よりも世界の経済の方が大きくなったので固定相場性は維持出来なくなりました。1971年8月にニクソン大統領がドルと金の交換を停止したのが、『ニクソンショック』です。

 1971年12月に『1オンス(28.35g)=38米ドル』とするスミソニアン協定が結ばれましたが、経済が更に拡大したために1973年3月に、変動相場制になりました。(米ドルと金の交換は無くなったのです。) 1976年にキングストン合意(協定)によって、金と通貨の交換は完全に廃止されました。

 各国の紙幣は、ある意味では『印刷した紙切れ』に過ぎません。 然し、各国が貿易するには、物々交換する分けには行きませんから、何処かの国の通貨で取引せざるを得ないのです。

 国連の一機関として、為替相場を安定化させるために1945年・国際通貨基金(IMF)が設立されていました。 IMFは国際取引に利用出来る通貨として、現在は5種類認めています。 これらを『自由利用可能通貨』と呼びます (米ドル、ユーロ、人民元、円、英ポンドです。)

 国際取引で最も利用される通貨を『基軸通貨』と呼びますが、現在は米ドルが基軸通貨です。 中国は、人民元を基軸通貨にしようと目論んでいる様に見えます。(自国の通貨が基軸通貨になると、沢山!沢山!のメリットが有ります。)

 ある国(X国)の通貨が基軸通貨になる条件は、多くの国がX国の通貨を欲しがる事です。 欲しがる理由は色々考えられますが、現在はどの国の紙幣も単なる『印刷した紙切れ』になっているので、「X国が多くの国が必要とする物を輸出出来るか?」が重要なポイントです。

 中国は、21世紀に入って他国が欲しがる工業製品を多量に生産出来る様になって来ました。 一方、アメリカは国際競争力の有る製品が少なくなって来て、貿易収支の赤字が続いています。 この状態が続けば、人民元が基軸通貨になるのは、そんなに先では無いと予想されます。

 21世紀になって第四次産業革命が始まったと言われていますが、第四次産業革命の覇者に中国がなったら、確実に人民元が基軸通貨になります。 身勝手な中国のことですから、為替レートを自国の都合の良い様に操作して、他国を平伏させると予想します。 「君たちは、それでも良いのか?!」とトランプ氏が警告した様に私には思えました。

★★★ ご参考 :IMFのSDR ★★★
 国際通貨基金(IMF)は加盟国の出資額に応じて、特別引出権(SDR)を付与しています。 SDRは、加盟国の外貨準備高を補うのが役割です。

 日本の銀行に100万円預けたら、100万円を引き出す権利が与えられます。 特別引出権(SDR)は『自由利用可能通貨』の組合せになっています。 組合せは2021年に見直されると予想しますが、現在は次の様になっています。

1SDRバケット=(0.58252米ドル)+(0.38671ユーロ)+(1.0174人民元)+(11.900円)+(0.085946英ポンド)

★★★ ご参考 :国連の金融機関 ★★★
 国連には四つの金融機関が有り、全て本部はアメリカのワシントンD.Cに有ります。 日本の戦後の復興事業の多くは、世界銀行からの借入れ金で行われました、東海道新幹線、黒四ダム、高速道路、民間企業の多数の工場建設、・・・

① 国際通貨基金(IMF) :1945年設立、 189ヵ国が加盟
② 世界銀行 :1945設立、 189ヵ国が加盟
③ 国際復興開発銀行(IBRD) :1947年から国連の機関になりました。
④ 国際開発協会(IDA) :1960年設立、最貧国向けの融資や無償援助が役割です。


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