相談支援は、きれいごとばかりではありません。時に危険を感じることもしばしばあります。
ある時、状態が不安定な方の家に訪問しました。一人では大変かもしれないという事前の情報があったので同僚と二人で訪問です。案の定、包丁を手に持って現れました。今、話すのは無理と判断し、その場から離れました。
アルコール依存の方を訪問した時、家族から様子を聞き、本人と話をしないことには前に進みませんので2階に上がろうとすると灰皿とか様々なものを投げ付けてきます。このケースも後日訪ねることを伝えて帰りました。
また、とても興奮して来所してきた方の話を同僚とともに聞いていた時、何が不満だったのか足でけられました。もろに脛を蹴られたのでけっこう痛かったです。その後も話を聞き続け、少し興奮も収まり帰って行きました。
覚せい剤などの薬物依存の方への対応もしてきました。多くの場合は普通に対応できますが、ある後遺症の方を訪ねた時、話している途中から様子が変わってきて危ないと思ったもののネクタイをつかまれて締められました。一緒にいた家族が止めて事なきをえましたが、それ以来、相談支援の時はネクタイをしません。
電話対応もけっこう難しい時があります。病気による妄想や感情の不安定さなどがある場合は、同じ話が延々と繰り返されたり、感情的になって怒りをぶちまけたりするようなこともあり、30分、1時間という電話対応もしばしばありました。感情的になっていても、ひたすら聞くようにしていれば大体は収まってきます。でも、そんな時は疲れます。相手の状態がわかっていて、関係ができている場合は、最初から10分とか15分というように時間制限をすることもありました。
相談支援の事例の中には、その支援を訴えられることもありました。警察官とともに病院に移送し入院させられたことが違法だというものです。経過の詳細は省きますが、何回か公判に出廷しました。裁判は市の代理人弁護士が対応しますが、書類の提出などけっこう大変でした。他にも行政不服審査請求等の対応もありました。いずれも勝訴、あるいは請求の棄却ということでした。相談支援には、状況によって法的な対応も必要になってくる場合があります。
相談支援は、マニュアル通りやっていてそれでよしということはほとんどありません。その時の状況に応じてどのように対応するのか、その場その場で考えながら対応します。時に自分の安全を考えることも必要な場面が出てきます。50年間の支援を振り返った時に、きれいごとばかりではない相談支援の1面があったことを記録しておくことも欠かせません。
可睡斎の風鈴