大津市の市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺した問題では、いじめに関する調査や情報公開の不十分さなど、市教委の対応のまずさが浮かび上がりました。同市に限らず、教育委員会は制度上、自治体の教育行政の最高責任を負うが、教育長以外の委員は非常勤で、形骸化も指摘される。今回の問題は、教育行政の在り方についても課題を投げかけています。
姿見せぬ教育委員
「日本の教育行政の膿(うみ)中の膿。教育委員会制度が機能していない象徴例だ」。大阪市の橋下徹市長は12日、大津市教委の対応を痛烈に批判しました。まさにそのとうりです。
問題視したのは「教育委員が前面に出てこないこと」。問題発覚後、記者会見に応じているのは、常勤の教育委員である澤村憲次・市教育長を除けば市教委の事務方ばかりです。市教委を代表する教育委員長や教育委員が姿を見せないのはおかしいという指摘です。
政治の教育行政への関与を盛り込んだ教育関連条例を提起した橋下市長には、教育行政が事務方主導になり、責任の所在があいまいになっているとの不信があります。「政治介入につながる」との異論はあるが、橋下市長は教育行政で首長のリーダーシップを強め、責任の所在をはっきりさせるべきだと訴えています。
非常勤の“壁”
一般的に、教育委員会といえば事務局がイメージされるが、狭義の教育委員会は首長に任命された教育委員(おおむね5人)で構成され、首長から独立した機関として、教育方針や教育施策の決定権など大きな権限を持っている。
今回の問題でも、遺族が市などに損害賠償を求めた訴訟への対応で、越直美市長が和解の意向を示したのに対し、澤村教育長は異なる見解を打ち出している。
大津市の教育委員も5人。澤村教育長を含む2人が元教員で、そのほか医師、自営業者、会社員で構成されている。教育長を除く4人の委員は非常勤で、報酬は日当制。大津市の場合、1日2万3500円が支払われるそうです。
市教委によると、今回のいじめに関するアンケートの結果は「勉強会」と呼ばれる非公式会合で教育委員に報告された。市教委の最高意思決定機関である12月の定例会議でも報告されたが、教育委員からの発言は一切なかったという事です。
「教育委員といっても、ボランティアに近い仕事」。教育関係者の中にはそんな指摘もあり、現行制度の中では、教育委員のリーダーシップに限界があるという意見もあります。
「荷が重すぎる」
「今の教育委員たちは責任を取りたがらず、教育委員会のお客さまになっている」。かつて鳥取県知事を務めた元総務相、片山善博慶応大教授(60)は厳しく指摘します。
首長として教育委員会と向き合った片山氏は「教育現場は教師の集団で、仲間意識が強いムラ社会だ」とし、今回の大津市の問題について「本来、教育委員はそこに常識的な目でメスを入れるのが仕事だが、今回は身内をかばい合っている印象が強い」と話しています。
大阪府教委の現職委員長でもある陰山英男立命館大教授は「理屈でいえば教育委員は(教育行政全般に)責任を持つ必要がある」と述べる一方、「教育委員が学校現場にまったくの素人である場合、荷が重すぎる」と指摘しています。
姿見せぬ教育委員
「日本の教育行政の膿(うみ)中の膿。教育委員会制度が機能していない象徴例だ」。大阪市の橋下徹市長は12日、大津市教委の対応を痛烈に批判しました。まさにそのとうりです。
問題視したのは「教育委員が前面に出てこないこと」。問題発覚後、記者会見に応じているのは、常勤の教育委員である澤村憲次・市教育長を除けば市教委の事務方ばかりです。市教委を代表する教育委員長や教育委員が姿を見せないのはおかしいという指摘です。
政治の教育行政への関与を盛り込んだ教育関連条例を提起した橋下市長には、教育行政が事務方主導になり、責任の所在があいまいになっているとの不信があります。「政治介入につながる」との異論はあるが、橋下市長は教育行政で首長のリーダーシップを強め、責任の所在をはっきりさせるべきだと訴えています。
非常勤の“壁”
一般的に、教育委員会といえば事務局がイメージされるが、狭義の教育委員会は首長に任命された教育委員(おおむね5人)で構成され、首長から独立した機関として、教育方針や教育施策の決定権など大きな権限を持っている。
今回の問題でも、遺族が市などに損害賠償を求めた訴訟への対応で、越直美市長が和解の意向を示したのに対し、澤村教育長は異なる見解を打ち出している。
大津市の教育委員も5人。澤村教育長を含む2人が元教員で、そのほか医師、自営業者、会社員で構成されている。教育長を除く4人の委員は非常勤で、報酬は日当制。大津市の場合、1日2万3500円が支払われるそうです。
市教委によると、今回のいじめに関するアンケートの結果は「勉強会」と呼ばれる非公式会合で教育委員に報告された。市教委の最高意思決定機関である12月の定例会議でも報告されたが、教育委員からの発言は一切なかったという事です。
「教育委員といっても、ボランティアに近い仕事」。教育関係者の中にはそんな指摘もあり、現行制度の中では、教育委員のリーダーシップに限界があるという意見もあります。
「荷が重すぎる」
「今の教育委員たちは責任を取りたがらず、教育委員会のお客さまになっている」。かつて鳥取県知事を務めた元総務相、片山善博慶応大教授(60)は厳しく指摘します。
首長として教育委員会と向き合った片山氏は「教育現場は教師の集団で、仲間意識が強いムラ社会だ」とし、今回の大津市の問題について「本来、教育委員はそこに常識的な目でメスを入れるのが仕事だが、今回は身内をかばい合っている印象が強い」と話しています。
大阪府教委の現職委員長でもある陰山英男立命館大教授は「理屈でいえば教育委員は(教育行政全般に)責任を持つ必要がある」と述べる一方、「教育委員が学校現場にまったくの素人である場合、荷が重すぎる」と指摘しています。