品川は大手町や丸の内、有楽町と並ぶ「国際交流拠点」となるか?東京都が7月17日に公表した「品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014」から将来像を読み解きます。
都が示したガイドライン案は、約630ヘクタールの広大なエリアを対象とする。都心最後の大規模土地利用転換を見据え、街づくりやインフラ整備の方向性を打ち出しました。8月をめどに正式決定します。
品川駅周辺は東京の南の玄関口として成長してきたものの、JRの車両基地や都の下水処理施設など官民の低・未利用地が多く残ります。2020年の東京五輪開催などを契機に、こうした土地を活用した再開発計画が一気に動き出そうとしています。
例えば、JR東日本は14年6月、JR山手線の品川―田町駅間に広がる車両基地の跡地に新駅をつくると発表しました。20年の五輪に合わせて開業を目指しています。
さらに同社は、新駅の周辺に超高層ビルだけでも8棟を建設します。高さは160m前後になる見込みです。5棟がオフィスと商業施設の複合ビル、3棟がマンションとなる計画だそうです。
全体の完成は20年以降になるものの、再開発した地区の就業人口は最終的に10万人規模となります。六本木ヒルズ(東京都港区)の3倍以上に達する事になります。
国際化が進む羽田空港に近い品川駅は、国内外から来訪者が集まる広域交通の結節点にもなろうとしています。27年にリニア中央新幹線の開業を目指すJR東海は、品川駅の地下に始発駅をつくる計画です。
15年3月にはJR東日本の東北縦貫線(上野東京ライン)が開業します。これまで上野駅止まりだったJR東北本線(宇都宮線)や高崎線、常磐線の列車が東京駅以南の品川駅にも乗り入れられるようになり、北関東などとのアクセスが改善されます。
こうした背景を踏まえ、品川駅周辺を東京駅周辺の大手町や丸の内、有楽町と並ぶ「日本の成長をけん引する国際交流拠点」に格上げします。都はガイドライン案でこう宣言し、実現に向けた戦略を示しました。
ガイドライン案の中で注目すべき事業は4つあります。1つ目は、品川駅の再編による駅機能の強化です。高架になっている京急品川駅のホームを2階から1階に下ろして、京急線とJR線との乗り換えを容易にします。
高架の鉄道を地平化する事業は、東海道新幹線に品川駅を設置した際など一部に前例はあるものの、全国的に珍しいです。同時に、京急品川駅のホームを現在の2面3線から2面4線に拡張して、輸送力を高めます。
京急線は現在、品川駅から羽田空港に乗り換えなしでアクセスする唯一の鉄道となっています。しかし、京急品川駅のホームだけ2階にあるので、1階にホームが並ぶJR線や東海道新幹線から乗り換える利用客にとって、空港へ向かう列車やホームの位置が分かりにくかったです。
京急線を1階に下ろすことで、2階レベルにあるJR品川駅の東西自由通路をホテルや会議場などが多く立地する駅の西口地区まで延ばすことも可能となります。現在は、自由通路が同じ高さにある京急線とぶつかるので、駅から西口地区に向かうには途中で地上に下りて、混雑した西口駅前広場を横切る必要がありました。
ガイドライン案では、品川駅の南側にある京急線の品川第1(八ツ山橋)踏切の解消も盛り込みました。道路と鉄道の立体化について検討を進めていきます。
同踏切は、JR線の上をまたぐ京急線と旧東海道の街道とが平面交差しています。立体交差にして踏切を解消するためには、JR線を1階、道路を2階とした場合、京急線を3階の高さにしなければなりません。
京急品川駅の地平化と踏切の解消を同時に実施した場合、京急品川駅から横浜方面や羽田空港に向かう列車は、品川駅から踏切までのわずか400mほどの区間で、1階から3階の高さまで駆け上がることになります。
ガイドライン案で注目すべき事業の2つ目は、優先整備地区として定めた4地区の開発です。
JRの車両基地跡地の「品川駅北周辺地区」とホテルなどが集積する「品川駅西口地区」は、国際ビジネス機能やコンベンション機能を充実させます。
国際戦略総合特区の指定などによる規制緩和で企業を誘致。職住近接で外国人にとっても住みやすい環境を整えるため、多言語に対応するインターナショナルスクールや保育所、医療機関も誘致します。
「品川駅街区地区」は、世界や日本各地からの来訪者に分かりやすい交通結節点としての機能を高めます。品川駅北周辺地区と一体で土地区画整理事業などを実施して、品川駅を再編します。
「芝浦水再生センター地区」は、都の下水処理施設の再編に合わせて開発する。例えば、地下に雨水貯留池をつくるのに合わせて、貯留池の上部にオフィスや商業施設で構成する複合ビルを合築します。
同地区では、次世代型の環境都市を目指します。東京湾や運河から吹き込む風を内陸の後背地まで送る「風の道」を確保したり、下水などの再生可能エネルギーを活用した街づくりを展開したりします。
注目すべき事業の3つ目は、これらの地区をつなぐ駅前広場や通路などの整備です。都営地下鉄と京急が乗り入れる泉岳寺駅とJRの新駅、品川駅とを歩行者デッキで結びます。
最後の4つ目は、都市計画道路である環状4号線の整備です。環状4号線を東側に延ばし、JRの車両基地で分断されている東西を高架でつなぐ計画もあるそうです。完成すれば、臨海部と六本木や麻布などとのアクセスが改善します。高架だった京急品川駅を地上に下ろすことで、こうした道路を通しやすくなるとみられます。
ガイドライン案が示す街づくりが実現するのはいつごろでしょうか?残念ながら、現時点ではっきりとしているのは、JR東日本が車両基地の跡地につくる新駅が20年、JR東海のリニア中央新幹線が27年にそれぞれ開業するということぐらいです。
都によると、「東京五輪を開催する20年やリニア中央新幹線が開業する27年は、事業を進めるうえでの一里塚になります。しかし、明確な目標は決まっていない」という。京急品川駅の地平化だけをとっても、工事中の用地確保や工事費の負担など、国と都、JR、京急などによる協議や事業スキームの検討から始めなければなりません。
わずか6年後に迫った東京五輪。世界から注目されるその時までに、品川は「国際交流拠点」として変化を遂げるのでしょうか?これから注目されます。
都が示したガイドライン案は、約630ヘクタールの広大なエリアを対象とする。都心最後の大規模土地利用転換を見据え、街づくりやインフラ整備の方向性を打ち出しました。8月をめどに正式決定します。
品川駅周辺は東京の南の玄関口として成長してきたものの、JRの車両基地や都の下水処理施設など官民の低・未利用地が多く残ります。2020年の東京五輪開催などを契機に、こうした土地を活用した再開発計画が一気に動き出そうとしています。
例えば、JR東日本は14年6月、JR山手線の品川―田町駅間に広がる車両基地の跡地に新駅をつくると発表しました。20年の五輪に合わせて開業を目指しています。
さらに同社は、新駅の周辺に超高層ビルだけでも8棟を建設します。高さは160m前後になる見込みです。5棟がオフィスと商業施設の複合ビル、3棟がマンションとなる計画だそうです。
全体の完成は20年以降になるものの、再開発した地区の就業人口は最終的に10万人規模となります。六本木ヒルズ(東京都港区)の3倍以上に達する事になります。
国際化が進む羽田空港に近い品川駅は、国内外から来訪者が集まる広域交通の結節点にもなろうとしています。27年にリニア中央新幹線の開業を目指すJR東海は、品川駅の地下に始発駅をつくる計画です。
15年3月にはJR東日本の東北縦貫線(上野東京ライン)が開業します。これまで上野駅止まりだったJR東北本線(宇都宮線)や高崎線、常磐線の列車が東京駅以南の品川駅にも乗り入れられるようになり、北関東などとのアクセスが改善されます。
こうした背景を踏まえ、品川駅周辺を東京駅周辺の大手町や丸の内、有楽町と並ぶ「日本の成長をけん引する国際交流拠点」に格上げします。都はガイドライン案でこう宣言し、実現に向けた戦略を示しました。
ガイドライン案の中で注目すべき事業は4つあります。1つ目は、品川駅の再編による駅機能の強化です。高架になっている京急品川駅のホームを2階から1階に下ろして、京急線とJR線との乗り換えを容易にします。
高架の鉄道を地平化する事業は、東海道新幹線に品川駅を設置した際など一部に前例はあるものの、全国的に珍しいです。同時に、京急品川駅のホームを現在の2面3線から2面4線に拡張して、輸送力を高めます。
京急線は現在、品川駅から羽田空港に乗り換えなしでアクセスする唯一の鉄道となっています。しかし、京急品川駅のホームだけ2階にあるので、1階にホームが並ぶJR線や東海道新幹線から乗り換える利用客にとって、空港へ向かう列車やホームの位置が分かりにくかったです。
京急線を1階に下ろすことで、2階レベルにあるJR品川駅の東西自由通路をホテルや会議場などが多く立地する駅の西口地区まで延ばすことも可能となります。現在は、自由通路が同じ高さにある京急線とぶつかるので、駅から西口地区に向かうには途中で地上に下りて、混雑した西口駅前広場を横切る必要がありました。
ガイドライン案では、品川駅の南側にある京急線の品川第1(八ツ山橋)踏切の解消も盛り込みました。道路と鉄道の立体化について検討を進めていきます。
同踏切は、JR線の上をまたぐ京急線と旧東海道の街道とが平面交差しています。立体交差にして踏切を解消するためには、JR線を1階、道路を2階とした場合、京急線を3階の高さにしなければなりません。
京急品川駅の地平化と踏切の解消を同時に実施した場合、京急品川駅から横浜方面や羽田空港に向かう列車は、品川駅から踏切までのわずか400mほどの区間で、1階から3階の高さまで駆け上がることになります。
ガイドライン案で注目すべき事業の2つ目は、優先整備地区として定めた4地区の開発です。
JRの車両基地跡地の「品川駅北周辺地区」とホテルなどが集積する「品川駅西口地区」は、国際ビジネス機能やコンベンション機能を充実させます。
国際戦略総合特区の指定などによる規制緩和で企業を誘致。職住近接で外国人にとっても住みやすい環境を整えるため、多言語に対応するインターナショナルスクールや保育所、医療機関も誘致します。
「品川駅街区地区」は、世界や日本各地からの来訪者に分かりやすい交通結節点としての機能を高めます。品川駅北周辺地区と一体で土地区画整理事業などを実施して、品川駅を再編します。
「芝浦水再生センター地区」は、都の下水処理施設の再編に合わせて開発する。例えば、地下に雨水貯留池をつくるのに合わせて、貯留池の上部にオフィスや商業施設で構成する複合ビルを合築します。
同地区では、次世代型の環境都市を目指します。東京湾や運河から吹き込む風を内陸の後背地まで送る「風の道」を確保したり、下水などの再生可能エネルギーを活用した街づくりを展開したりします。
注目すべき事業の3つ目は、これらの地区をつなぐ駅前広場や通路などの整備です。都営地下鉄と京急が乗り入れる泉岳寺駅とJRの新駅、品川駅とを歩行者デッキで結びます。
最後の4つ目は、都市計画道路である環状4号線の整備です。環状4号線を東側に延ばし、JRの車両基地で分断されている東西を高架でつなぐ計画もあるそうです。完成すれば、臨海部と六本木や麻布などとのアクセスが改善します。高架だった京急品川駅を地上に下ろすことで、こうした道路を通しやすくなるとみられます。
ガイドライン案が示す街づくりが実現するのはいつごろでしょうか?残念ながら、現時点ではっきりとしているのは、JR東日本が車両基地の跡地につくる新駅が20年、JR東海のリニア中央新幹線が27年にそれぞれ開業するということぐらいです。
都によると、「東京五輪を開催する20年やリニア中央新幹線が開業する27年は、事業を進めるうえでの一里塚になります。しかし、明確な目標は決まっていない」という。京急品川駅の地平化だけをとっても、工事中の用地確保や工事費の負担など、国と都、JR、京急などによる協議や事業スキームの検討から始めなければなりません。
わずか6年後に迫った東京五輪。世界から注目されるその時までに、品川は「国際交流拠点」として変化を遂げるのでしょうか?これから注目されます。