時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

悲しみのウクライナ マスコミの偏向報道

2014-03-05 00:34:42 | リビア・ウクライナ・南米・中東


上の図を見てもらいたい。
これはクリミア半島の民族構成を図式化したものだ。

これを見ると物凄くわかりやすいと思うが、
その半数以上(58.5%)はロシア系民族、
約12%がタタール人であり、ウクライナ系は24%を占めるにすぎない
(それでもかなり大きい比率ではあるが)

※誤字訂正 ウクライナの民族構成⇒クリミア半島~の誤り。


そして、ウクライナの首都キエフはウクライナ系が多く住む地域にある。
今回、ヤコヌヴィッチ首相を国外に追い出して
新政権に就いた連中は、この反ロシア系の支持を得てついた。



反政府デモをしている皆さんの図。


どうみても武装集団に見えるのは私だけか?
ちなみに、テレビや新聞の記者様たちは
彼らを「ウクライナ市民」と呼んでいる。


旗をよく見るとハーケンクロイツ(鍵十字)の意匠がこらされている。
俗にいうネオナチという集団だ。


ウクライナには歴史的にソ連憎しという考えを持つ
民族主義者たちがいて、簡単に言ってしまうと




今回のデモ(テレビや新聞の正義の味方がそう言っているんだからそうなんだ!)はこういう連中が
中心になって起こしたのである。



結果、首相は国外に亡命し、
残った連中で新しい首相を民主的に選んだ。


これを日本のメディアは
クーデターではないと言う。

じゃあ、何がクーデターなんだよ。



では、他の国はどう報じているか。
まず、我ら誇り高き日本人が愛と正義の心をもって憎しみをぶつけている中国。

----------------------------------------------
中国は現在のウクライナ情勢に深い懸念を表明する。

われわれはウクライナ国内で起きた過激な暴力行為を強く非難するとともに、
ウクライナの関係各方面に対して、法的枠内で内部の溝を平和的に解決し、
ウクライナの各民族の合法的権益を的確に守り、
正常な社会秩序をできるだけ早く回復するよう促し続けている。

http://j.people.com.cn/94474/8552131.html
----------------------------------------------(引用終わり)


次にロシア。

----------------------------------------------- 

●チュルキン大使「協定は有害」


ヤヌコビッチ大統領とウクライナは深刻な経済困難に直面し、
欧州連合との連携協定への調印を含む決断を迫られていた

この連携協定はウクライナに有害な影響がある


なぜ一部の欧米諸国は対立を激化させ、
過激派の行動に拍車をかけたのか
2月21日にヤヌコビッチ大統領と、
独仏ポーランドの外相が調印した協定は履行されるべきだ。


ヤヌコビッチ大統領は非憲法的なやりかたで職を追われた

ロシア議会は、ウクライナ領内での
―ウクライナに対してではない―武力行使の決定に当たって、
このような情勢を熟考した。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-04/2014030406_02_1.html

-------------------------------------------------------(引用終わり)

上の赤旗の記事ではアメリカとイギリスとフランスが
ロシアの軍事行動に対して懸念をみせているが、



これら諸外国は2011年にリビアを爆撃している。



ちなみに、この時の空爆のきっかけになったのは、
「リビアが一般住宅地を空爆した」という情報だったのだが、
これは後に誤報であることがわかった。



私にはどうしてイラク戦争を開始直後から批判していた面々が
リビアへの爆撃は支持してしまうのかがさっぱりわからない。

少なくとも、リビアは貧困率ではオランダ以下の高福祉国家であり、
直接民主制により、広大な地域における諸行政機関の自治権を認めていた。

少なくともイラクよりはよっぽど民主的な国家だったと思う。
(なお、リビアもイラクも諸部族が共生している国家であり、
 この部族間での衝突・因縁が長年続いているということも
 忘れてはならない)


赤旗を含むメディアでは、EUによるウクライナの経済支援を
喜ばしいこととみなし、ロシアあるいは親ソ政権を非難している。

だが、次の記述を見てほしい。

-------------------------------------------------
ウクライナは向こう2年間に350億ドル(約3兆5700億円)
の国際支援が必要だといいます。今年末には130億ドルの
債務返済を控えていますが、デフォルト(返済不能)に陥る恐れがあります。


EUが協定調印に合わせて約束していた
援助額は6億1000万ドル



国際通貨基金(IMF)による支援の条件は
ロシアからの輸入に依存するガスの使用代金について、
家庭への補助金撤廃を含む緊縮政策の実行
でした。

これに対して、ロシアは150億ドルの援助
ガス供給価格の30%引き下げを提案。


ヤヌコビッチ大統領はこれに飛びつきました。

政権側は当時、EUとの協定に署名しないのは
「経済的な理由」だと釈明しています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-02-27/2014022707_01_1.html
-------------------------------------------(引用終わり)


----------------------------------------------------
議会の満場一致で首相に指名されたヤツェニュク氏は、
指名後の演説で「ウクライナの未来は欧州にあり、
ウクライナはEUの加盟国となる」と強調しました。

クリミアをめぐる情勢について「領土保全が脅かされており、
クリミアで分離主義が現れている」と指摘。

ロシア系住民に対し、
「われわれと対立しないでほしい。
われわれは友人であり、パートナーなのだ」と呼び掛けました。


経済問題では、
「国庫は空だ。きょう明日にも改善するとは約束しない」と述べ、
不人気な措置を取る以外に解決策はない」として国民の協力を求めました。


ウクライナは向こう2年間に350億ドル(約3兆6000億円)の
国際的な支援が必要だとしており、国際通貨基金(IMF)は
同日、正式な支援の要請を受けたことを明らかにしました。

政変前にも国際的融資の交渉が行われており、
IMFは構造改革の実行を条件として要求。

これには財政赤字圧縮のため、
家庭に対する燃料費補助金の撤廃などが含まれていました。


主要閣僚は首相を含めて、
ティモシェンコ元首相率いる親EUの政党「祖国」などに所属。

親ロシアの旧与党・地域党は排除されました

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-01/2014030107_01_1.html
------------------------------------------(引用終わり)

ネオナチの支援のもとで成立した極右政党が
それも国防や司法に関わる部署の高位をネオナチが占拠する
政権が反対派を反ウクライナと名指しして排除した後で、
ロシアからの150億ドルの援助を断り、
EUからの6億ドルの援助を受ける。

しかも、その条件は福祉の削減だ。



新大統領の「分離主義」という言葉からもわかるように、
ロシア系が多く住む地域では彼らに対する反発が激しい。

すでに67万5千の国民がロシアに避難したようだ。
(http://rt.com/news/ukrainians-leave-russia-border-452/)


こうしてみれば、いかにEUの要求が理不尽で、
ウクライナの極右勢力が打ち立てた政権が
不正義に満ちているかがハッキリするだろう。


大統領の言葉、まるで理解を求めると言いながら
消費税を上げ靖国神社を参拝し、軍拡を進める
亡国の首相にそっくり。



読売新聞は早速、独裁政権が倒れたかのような記述をしている。
朝日新聞は、かつてのソ連のポーランド侵攻を彷彿させると批判。

テレビ朝日はわざわざキエフから中継しながら、
「クーデターというのはロシアのプロパガンダ」と断言していた。

現地のレポーターいわく、民衆は新政権を支持しているとか。

そりゃそうだ。
反対者はすでに避難しているか、
あるいは消されてキエフにいないんだから。



靖国神社に行って、「国民は9条廃止を願っている」と
報じているようなもの。これのどこが報道だ!?

今日ほどテレビ朝日の馬鹿さ加減に驚いたことはない。

我が美しき日本は、
民主主義国家であるにも関わらず、
情報が隠ぺいされている。



この記事で書いた情報など、海外のニュースサイトや赤旗を
読むだけで簡単に入手できるのだ。高い取材費を払ってまで
現地に向かって、日本政府の言い分をコピー&ペーストする
テレビ朝日のレポーター。それをドヤ顔で受け止め
「そら違うだろ」とツッコミすらしないスタジオの知識人。

ああ、なんと素晴らしい日本のマスコミ。
その卓抜した詐術に涙を流さずにはいられない。

リビア問題・補足

2014-03-01 23:16:30 | リビア・ウクライナ・南米・中東
紹介した翻訳サイトにカダフィが統治していた頃のリビアを知るのに
良い記事があった。日付は2011年10月26日、ちょうどカダフィが殺された直後だ。


----------------------------------------------------------
●リビアで二度と見られなくなる16項目


 リビアには電気代の請求書が存在しない。電気は全国民、無料だ

 融資には金利がなく、リビアの銀行は国営で、
 全国民に対して与えられる融資は、法律で金利ゼロ・パーセント。

 リビアでは住宅を所有することが人権と見なされている。

 リビアでは全ての新婚夫婦が、新家族の門出を支援するため、
 最初のアパート購入用に、政府から60,000ディナール(50,000ドル)を受け取る


 リビアでは教育と医療は無償。
 カダフィ以前、識字率はわずか25パーセントだった。現在、識字率は83パーセント。

 リビア人が農業の仕事につきたい場合には、農園を始めるための
 農地、家、器具、種、家畜が、全て無料で与えられる。

 リビア人が必要な教育あるいは医療施設を見いだせない場合、
 政府が外国に行くための資金を支払い、さらには実費のみならず、
 住宅費と自動車の経費として2,300ドル/月、支払われる


 リビア人が自動車を購入すると政府が価格の50パーセントの補助金を出す。

 リビアの石油価格は、リッターあたり、0.14ドル

 リビアに対外債務は無く、資産は1500億ドルにのぼるが、
 現在世界的に凍結されている。

 リビア人が、卒業後就職できない場合は、
 本人が雇用されているかのごとく、
 特定職業の平均給与を職が見つかるまで国が支払う


リビア石油のあらゆる売上の一部が
 リビア全国民の銀行口座に直接振り込まれていた。

 子供を生んだ母親は、5,000ドル支払われる。

 リビアでは、パン40斤が0.15ドル。

 リビア人の25パーセントが大学の学位を持っている。

 カダフィは、この砂漠国家のどこででも
 自由に水が得られるようにするため、大人工河川計画として
 知られる世界最大の灌漑プロジェクトを遂行した


http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/16-6517.html
-----------------------------------------------------------



石油産出国という強みを最大限に利用した強福祉国家。

雇用と若い母親の支援策をみれば一目瞭然だが、
この国は若者を大切にする国だった。


翻って日本。

若年者の労働は基本的に本人任せ。
ブラック企業に勤めようがうつ病で失職しようが
本人が悪いと決め付け知らん顔。

就職できない若者を世間が嘲笑うのがデフォルトとなっている。

出産には入院費等を含め40万。結婚式にも数十万。
こども手当や(高校の)学費無償は廃止され、消費税は増すばかり。


これだけ欠陥が明らかなのに一向に修正されるばかりか
いつのまにか大衆とメディアが諸手をあげて
靖国マニアの極右首相をほめちぎる始末だ。

これが民主主義国だ。

イギリス(のちにアメリカに移住)の作家ハックスリは
『すばらしい新世界』という作品でソビエト連邦を批判した。


そろそろ『すばらしい民主主義国』という本も書かれるべきでは?


・・・とまぁ、かなり毒を吐いたが、リビア問題に対して思うのは
リビアやシリア、中国や北朝鮮のような他国を異様に描くことで、
相対的に自国の美化に努めているのではないだろうか
ということだ。


靖国参拝?君が代強制?軍拡?
リビアをみろ、北朝鮮をみろ。あそこと比べりゃまだましだ。

こう言っているような気がしてならないのである。


冷静に考えれば、アベノミクスや靖国参拝、いずれも破たんした
経済、外交政策であるのは明らかだし、実際に前代未聞の円安で
過去最大級の貿易赤字と石油高を招き、アメリカ政府にすら
「失望した」と見放される状態に陥っているのに、
それでもなお、安倍政権を美化、その成功を吹聴しているメディア。

その最も強力かつ最大の組織であるNHKの経営陣は
安倍が推薦する極右の人間が陣取っている。


これほど露骨な独裁はないと思えるが、それでもなお、
日本はリビアよりは民主主義国家なのである。



ここで問題となるのは民主主義を至高の存在とみなし、
それと違える制度を敷く国は劣った国、解放されなければ
ならない悪しき国と決めつける癖が左翼にもついていることである。

というより、左翼のほうが反権力を気取っているだけあって、
余計に性質が悪いといっても過言ではない。

自国に対して究極のところでは、
リビアや北朝鮮寄りはマシという世界観から、
徹底的な批判をしているつもりでも、実のところソコソコ批判しているだけで、
なんだかんだで文句を言いながらも追従している。それがリビア爆撃の称賛だった。


私は前回の記事で、世界観は非常に大事だと述べたが、
民主主義を義務と捉える人間が逆説的に本来の意味で
非民主的な国家を作り上げ(あるいは不平を言いながら黙認し)ている
ということを認知しなければ、今後も我々は
第2、第3のリビアを見殺しにしてしまうのではないか
と思う
のだ。