
(週刊ベースボール2011年10月17日号)
10月1日、西武ドームにおいてリーグ優勝を決めたソフトバンク、
笑顔のナインの中で、ベンチで涙をあふれさせている内川選手が何度も画面に出たことは記憶に新しい。
「ベンチに座ったら、あーこれで終わるんだ、優勝できるんだと思ったら涙が溢れてきて……もう止まりませんでした」
と語るように、
内川選手の優勝にかける思いは、人一倍強かったのである。
横浜からFA宣言し、ソフトバンク入団を決めたのは、
「野球人生を考えると半分は過ぎている。今までやれなかった優勝を、九州の熱い地で経験したい」という思い。
また、
「将来的に指導者を目指しており、優勝争いをして優勝するという経験を積みたい」
ということでもあったようだ。
今年のヤクルトのように、優勝を目前に失速するような例は
どのチームにでも有りえる。
優勝の経験を積んだ監督なら、そのときの対処法も心得ているだろうし、
またそれ以前の連勝中においても、先で失速したときの備えをしているかもしれない。
とにかく、
選手時代に優勝を経験しているということは、指導者として大きな財産となるようである。
が、
横浜にいては優勝争いを経験する可能性はほとんどゼロであるので、
内川選手は、地元(大分)に近い球団でもあるソフトバンクを選択したのである。
強い信念は岩をも通すと言うが、
内川選手は移籍1年目ながら、開幕当初よりチームを引っ張り、優勝を手にした。
素晴らしい活躍だったと称えたい。
さて、上記のことから考えると、
何度も優勝もしくは優勝争いをいするチームで戦った選手は、貴重な経験が得られるし、
またそういうチームを率いる名監督の手腕を学ぶ機会に恵まれていると言える。
V9時代の巨人(川上監督)や
常勝軍団と言われた西武(広岡・森監督)
などは、その最たる例であろう。
最近ではどうか、と言えば、
王監督時代のソフトバンクや現在の中日が、将来の名監督を排出する可能性が高い。
ソフトバンクについては、既に秋山監督が花を咲かせているが
将来的にも小久保や川崎らが指導者となって活躍しそうである。
一方中日は?というと
来年から指揮をとる高木監督の次は、おそらく立浪監督が実現するであろう。
では、立浪の次となるような人材が現役の中に育っているか?
上記の私の論法で言うなら、落合監督下の8年間で多くの経験と知識が得られているはずなのだ。
私が思うに
監督として成功しそうな1番手は谷繁捕手である。
頭が良くて明るいキャラなので、監督になっても様になると思うのだが、
今もまだ横浜のイメージが強い。中日よりも横浜かロッテの監督のほうが似合うかもしれない。
2番手は井端内野手である。
最近は故障もあって影が薄いが、この人は素晴らしい戦術眼を持っている。
是非それを活かしてほしい。
ただ、中日生え抜きであるが、東京出身ということもあって、
キャラが関東っぽいのである。中日よりも日本ハムの監督のほうが似合うかもしれない。
3番手は、荒木、和田、川上らである。
和田は地元の岐阜出身であるので、谷繁や井端よりも人気者だと言えるが、
今年の姿を見ていても「真面目でクヨクヨするタイプ」のようであり、
監督よりもコーチに向いているのではないか。
荒木も守備走塁コーチ(と三塁ベースコーチ)のタイプだし、
逆に川上は、コーチ向きな理論派ではないように感じる。
と書いていくと、「何だ?誰もいないじゃん」となるのであるが、
最後に「大本命」を挙げておく。山本昌投手である。
あの遅い速球で200勝を達成したということは
「観察力に優れ、敵を倒す駆け引きに最も長けた投手である」ということだ。
ならば監督としても、成功するに違いないと思うのである。
しかし、先の立浪や山本昌に期待をかけるのは早すぎる、
来年からの高木監督にまずは活躍を期待するのである。
(文中敬称略)