一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

注文住宅を考えたら「住宅の考え方が180度変わる」住宅勉強会やセミナー、他では聞けない住宅や建築がわかるブログ。

人工乾燥材、強度、結露などの質問より

2007年02月08日 20時15分07秒 | 住宅ノウハウ・実例


こんばんは、清水です。

メールの質問にお答えします。

Q1 「構造体である柱は、人工乾燥と天然乾燥では強度は違うのか?」

というご質問ですが、結論からいえば、天然乾燥の方が強いです。粘りがあるというのでしょうか。極端に表現すると人工乾燥の方が、カスカスなイメージです。

ですが、木材はそれぞれすべて強度が異なります。含水率も人工乾燥していても、それぞれ異なります。心配な場合は、木材のヤング係数という強度の目安と含水率をいくら以上と指定することもできます。

以前、建売などは、ほとんどグリーン材という乾燥材ではない材を使っていました。これは、木材自身が乾燥するに従って、ヒビがいったり変形が大きくなるので、2000年以降住宅の10年の瑕疵保証が義務付けられるようになって、急激に使われなくなってきています。強度の面よりも壁にヒビが入ったりすると、クレームになりやすいからです。

強度に関しては、余程こだわって費用があれば別ですが、総合的なコストパフォーマンスを考えると一般的には人工乾燥で良いのではないかと思います。一般の住宅であれば、他に費用の優先順位があると考えています。



Q2 「外壁の厚さと強さの関係について知りたい」

とのことですが、柱を太くすれば壁も厚くなります。構造の強度も耐久性も増します。また、外壁が厚くなれば、断熱材も厚いものが入りますので、断熱性能も増すことができます。

北米では、2×4工法も2×6の部材を使うことになっている州もあるとのことです。これは、強度の面でそのようにするのですが、私が2×4工法を設計するときは、必ず2×6の部材を外壁に使います。約9センチと約14センチの違いですから、この差は大きいです。断熱材も、その厚みに目一杯入れます。



Q3 「外壁内の結露との関係を知りたい」

断熱性能を良くすれば良くするほど、冬に外壁内に結露をしやすくなります。屋外と室内の温度差が増すからです。

それを防ぐために、防湿と放湿を考えます。北米や北欧では、この防湿はうるさいです。カナダでは、放湿もしっかりなされていました。私の 「バンクーバーの住宅事情!」 の工事中の写真を参考にして下さい。日本では、特に関東以西では防湿も放湿もいい加減な工事が多いです。

結露を完全に防ぐことは難しいのですが、いかに少なくして昼の間に乾燥させるかということになります。

また、防湿に対して夏型結露を心配される方がいますが、これによる被害報告を私は知りませんし、夏の暑い外壁の中では結露してもすぐ乾くため心配はしていません。計算式で結露すると主張する方がいらっしゃいますが、この計算式は、ある瞬間の時点を捉えた計算で、実際には夏の昼の外壁体内は、暖められた空気の対流、水蒸気圧の変化による水蒸気の移動、外部からの熱エネルギーの供給が行われているのですが、そのことを無視しての計算だからです。

非常に難しい説明で恐縮ですが、どの専門家でも使用している計算式は定常状態のある一瞬だけを捉えた計算式です。現実には、非定常で刻々と状況は変化して動いているのです。

学生時代、恩師の松本先生の指導のもと、この非定常の近似方程式の研究をお手伝いさせて頂き、先生はその研究でその年に日本建築学会賞を受賞されました。27年経った今でも、非定常の考え方は難し過ぎて無視されています。

まあ、当時はこの断熱などの基礎研究は、英語の論文しかありませんでしたので、最近、外断熱が注目されて断熱に対する意識が高まっただけでも良くなりました。

しかし、防湿と放湿、透湿の違いがわからない現場監督が多いのは事実ですから、正しく工事がされていない場合が少なくありません。


ミタス一級建築士事務所 清水煬二


 
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マンションのリフォーム(2)

2007年02月07日 09時37分13秒 | 住宅リフォーム・耐震
おはようございます。清水です。

マンションのリフォームで、給排水などの設備に注意しなければならないことは、2007年2月5日に述べました。

まだいくつか、戸建てと違い最低注意して頂きたいことがあります。
そのうちのひとつは、階下への音の問題をどうするかです。

現在、フローリングにリフォームする場合、簡単にできるようにマンション用のフローリングが出来ています。これは表面が合板フローリングで、裏にクッション材を付けて音の対策を行っています。

値段はかなり高いのですが、合板としては実は非常に安っぽいものです。フワフワ凹みますし、強力な接着剤を使っていますので、身体にも良くはありません。仕方が無いから使用しているのですが、カーペットからの変更の方は、少し驚くかもしれません。

工事方法もリフォーム会社が丁寧にしてくれないと、トラブルになりやすいのです。

こんな合板フローリングではなく、「もっとしっかりした、健康のためにも質感の良い無垢のフローリングなどできないの?」というかたには、防音のために床を組んでその上に無垢のフローリングを使用する方法があります。

但し、これは現在の床の状況によっては、天井高さが10センチくらい低くなる可能性もあり、建具のやり替えなど面倒なことになるマンションのタイプが増えていますので、必ず事前に確認が必要です。

素人もリフォーム会社を経営したり営業してプランする時代ですから、いずれにしろこういった判断と説明には正しい知識が不可欠です。


ミタス一級建築士事務所 清水煬二



 
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トップライトの注意事項(1)

2007年02月06日 12時35分49秒 | 住宅ノウハウ・実例
こんにちは、清水です。

皆さんはトップライト(天窓)は、雨漏れがしやすいというイメージがあるでしょうか? 実際に雨漏れはあります。ですから安易に付けない方が良いのですが、実はその原因の多くは正しい付け方を知らないからです。

工事方法の付け方だけでなく、製作しているメーカーも知らないために雨漏れが起こることがあります。現実にサッシの大手メーカーでもそういうことが起こっていたのです。これは、トップライトだけでなく、シャッター付きのサッシでも以前にありました。

オーダーメイドのビルのサッシでは、大手のサッシメーカーに注文しても、製作図を良くチェックしないと、ダメな場合があるという前提で確認するのはゼネコンの現場監督としての必修の心構えです。

一流の日本のメーカーが作っているから安心だと考えるのは、皆さんだけでなく一般の工事業者や設計者もそのように考えがちです。

私がトップライトで使用するのは、ベルックスというメーカーの木製サッシで、これは指示された通りに正しく工事をすれば、雨漏れはしません。結露も日射の問題も一番優れていて、その割りに安いのです。

ところが、多くの職人さんは始めての製品でも説明書を読まずに自分の感で工事をしますから、「あれっ?なんでこれが余ってるの?使わなかったの?(^^;)」ということになり、大雨が降ると雨漏れすることがあります。現場監督に何度伝えても、無駄なことがわかりました。そのため、毎回職人さんと事前に直接打ち合わせをさせてもらっています。


実例をお話しましょう。
現場監督に指示をして念押しをして任せていたら、工事中に大雨が降ったとき雨漏れがしたのです。外からの見た目ではわからない、内部の処理部分が大切なのです。

「おかしい、本当にやった?」と聞くと、「やりました。」との返事。これ、一見真面目な現場監督でも、見えなくなった部分ではよくあるんです…。(笑)

その言葉を信じるより、私自身の経験と知識を信じて、「どう考えてもおかしい。私が責任を持つから屋根材を剥がして確認しよう。」屋根材は、トップライトの廻りだけでなく、上からすべて剥がしていかないといけません。もし、やってあったらこの大変な作業と復旧費についても、すべて私が責任を持つから確認させてくれという意味です。

結局、大工2名と現場監督が私の見ている前で屋根材を剥がす事になりました。
すると…

次回の トップライトの注意事項(2) に続きます。


ミタス一級建築士事務所 清水煬二


 
住宅設計

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マンションのリフォーム(1)

2007年02月05日 09時28分02秒 | 住宅リフォーム・耐震
おはようございます。清水です。

マンションのリフォームでは、構造体を壊さなければ自由にできます。木造と違って構造体を考えなくて良いということだけ、素人でもわかりやすいかもしれません。

お化粧部分だけの改装なら、戸建て同様見える部分だけを考えれば良いのですから、一般の方にも良し悪しの判断は付きます。

最大のポイントは、構造体の壁かそうではない壁かの見極めです。プロであれば詳細図があればすぐにわかります。簡易な図面でも大体類推できます。みなさんがハッキリ知りたければ管理人さんや管理会社、管理組合等にお願いして、詳細な図面を見せてもらうか、教えてもらえばよいでしょう。

次のポイントは水や換気扇の排気、エアコンなどの設備の問題です。この中でマンションリフォームならではの一番のポイントは、排水なのです。

例えば、床がコンクリートのため排水管を床上に転ばしているか、古いマンションの場合は、階下の天井に排水管を出している場合もあります。いずれにしろ水が流れないといけませんから、排水管のスペースと室外へ出すためのパイプスペースまでの接続を考えないといけません。

給水管や給湯管は、排水管より自由が利くのですが、やはり次に考える必要があります。

リフォーム会社は、建築知識の少ない方に営業からプランまで任せているケースが多く、こういったことを見落としていることがあります。その場合、下請けの職人がフォローすることになるのですが、正しく工事すると費用が掛かるかプラン変更しなければならないこともあった場合、そのまま何とかごまかして工事をしてしまうこともあります。

この場合、最初は良くても後でトラブルになることもあります。マンションは、漏水などに関しては下階との問題がありますので、水廻りを動かす場合などは充分注意しなければなりません。


ミタス一級建築士事務所 清水煬二


 
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雨樋のトラブル相談

2007年02月03日 18時45分59秒 | 住宅検査・トラブル相談


こんばんは、清水です。

本日は、「ちょっと見て欲しいのですが…。」と、かなり以前にお願いされた家に、午前の打ち合わせの前、朝早くに行ってきました。

7年前に新築の完成時に、私が検査の依頼を受けて確認した家だということを現場に行ってお話しをお聞きし、想い出しました。ご年配で上品で、かわいいわんちゃんのいる穏やかなご夫婦でした。

構造体の問題や雨漏れなどではなく、雨どいの腐食、サビなのです。それもアルミ製の雨どいに茶色の塗装がなされているもので、簡単にサビそうではないのですが、僅か新築2年くらいでアルミに白い腐食が出て来て、本体が茶色だから目立つのです。

この家は、高級住宅で有名な設計事務所、といっても工事も一緒に行ってしまうのですが、「様子を見て…。」と言われ続けてズルズルきて、人の良さに漬け込んで何年も経ってしまい、ここにきて「交換するなら自費でお願いします。」という業者の結論のようです。そのため、「どうしたものか…?」というご相談でした。

こういう場合は、メーカーを呼んできてもらい、メーカーにしっかり調べてもらい判断させます。

アルミが海が近いわけでもないのに2年で腐食するのは、商品が不良品なのか、もともとが欠陥に近い商品なのか、設計が悪いのか、工事方法が悪くてこうなったのか、などは工事会社では判断しにくいことと、工事会社は、わかっていても自分達の非は認めたくないので、グズグズ先延ばしにしようとするからです。こういう点が、工事するところと設計や監理が同じではいけないと言っている理由の一つです。

「交渉に第三者を立てるべきか?」というご相談もありましたが、まずご自身で再度要求してみるべきです。いきなり第三者が入ると先方は驚きますので、ズルイ業者ほど頑なになります。

業者との交渉方法や、万一調停や裁判に持ち込んだ場合のデメリット(被害者であっても、かなりの覚悟が必要です)などをお話し、精神的なイライラや腹立ちのエネルギーによる損も計算にいれて判断すべきですよ。というようなアドバイス、及び現実的で具体的な解決策の案も提案させて頂き、帰ってきました。

「代金をお支払いします…。」と言われましたが、比較的近いことと気の毒なので、「今日はアドバイスだけですから」と、また頂くことなく帰って来ました。まあ、仕事前のひと仕事で、ご年配の方ですから昨日の区役所の住宅相談担当といい、完全なボランティアで良しとしましょう。

ミタス一級建築士事務所 清水煬二


 
住宅設計の一級建築士事務所



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安全安心住宅相談って?

2007年02月02日 11時24分21秒 | 建築家の日記

こんにちは、清水です。

本日は、午後から区役所での建築相談担当です。横浜市では各区役所で、毎月第3金曜に行っています。「安全安心住宅相談」という無料相談で、予約の必要もないのですが、毎月1回ですし、相談の名前からして私のような建築士がいるとは思わなかったという人も多いのです。

何年も前から私も続けていますので、市民のためには気軽に利用できるように毎週にすること、そのかわり予約制にすること、わかりやすくするため建築士相談とハッキリ明示することなどを提案していました。

毎週にすると、交通費も自己負担の完全なボランティアで行っていますし、担当者の負担が増すということで、4月からは毎週にするかわりに各区役所ではなく、市役所で行うようです。建築士相談となるかどうかはわかりません。建築士ではない、工事業者の経験者が担当になることもあるからかもしれません。

いずれにしろ、写真付きの相談者証はお見せしていますが、名刺を渡すこともなく特に名乗ることはしていません。完全にボランティアで、その場だけでの対応です。無料で気軽に相談できますので、皆さんも困ったことがあれば利用すると良いでしょう。

横浜市でなくても、どこの各自治体でも同じようなものがあるはずですので調べておくと何かのときに役に立つかもしれません。同様に弁護士の無料相談も行われていますから、これも知っておいて下さい。

わざわざ行くのは嫌だという方は、インターネットで私も解説委員をしていますが
建築よろず相談」があります。これは、相談内容を公開する前提で解説するので、すべてにすぐに答えてくれるわけではありませんが、過去の回答例も参考になるでしょう。

また個別の内容で簡単に相談したければ、メールを頂ければ出来る範囲で私もお答えしています。


ミタス一級建築士事務所 清水煬二


 
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解体中の現場での話

2007年02月01日 11時51分17秒 | 建築家の日記



こんにちは、清水です。

今年も1月が過ぎ、今日から2月です。私は朝一番に、逗子の解体中の現場へいってきました。打ち合わせして、次の現場に着いたら、「井戸が出てきました。」との連絡が入りました。

家の解体が終わり、外部土間の部分と塀の一部が残っているだけなのですが、どうもコンクリートの土間の部分の下、コンクリートで塞がれてい場所のようです。水も入っているとのことで、危険なため取り急ぎ埋めてもらうことにしました。

井戸を埋めるのであれば、お祓いをしてからという方もいらっしゃいますので、応急の蓋だけにしたかったのですが、入り込んだ子供が間違って落ちたら危険ですので埋めてもらうことにしました。

この土地は、中古で購入した土地に古い家が建っていました。事前の地盤調査では、どのポイントでも1メートルの深さに達しないうちに何かにぶつかって、データーが取れなかったのです。もし、地中がコンクリートのガラだらけだったら…、困るなぁ…と思っていました。

解体が完了して、再度地盤調査する予定ですが、井戸もあるとのことで水位も気になります。

この土地には、児童図書館を併設した子供達のために実験を教える、こども科学館のようなものを個人が私財で建てる予定です。

不思議なもので、何か良い住宅や建物が生まれる前には、何かと障害が生じてきます。計画変更を余儀なくされたり、着工できないでいたり、工期がなぜかずるずると延びてしまったり、予算がオーバーしたり、というようなことも含めてです。これらは、ひとつひとつ乗り越えて行かなければなりませんが、前向きに考えて対応していけば、必ずハッピーエンドにつながるようです。



ミタス一級建築士事務所 清水煬二


 
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