疑問 天野 忠
わたしは老人が好きだ。
老人は早く死ぬから。
私は老人が嫌いだ。
老人は物判りがおそいから。
小銭を数えながら
老人たちは陽なたぼっこをしている。
老人たちの傍に寄り添うのは
いつもあの無口な「死」ばかり・・・。
徳富蘆花の「不如帰」のヒロインが
なぜ人間は死ぬのでしょう と悲しげに
恋人にたずねた。
ほんとうだ、大正時代の新派の観客でなくても
それはそれでわかる。
しかしいまは
小さな声で、しわがれた声で
(微笑と含羞を忘れず)
われわれ老人だって
それを呟く権利がある。
なぜ人間は
死なねばならぬか と。
わたしはまだ
どこからもおその答えをもらっていない。
もらう術を知らない。
だからこうして
老人という人間として
ぼんやり、疑い深く
まだ
生きている。
わたしは老人が好きだ。
老人は早く死ぬから。
私は老人が嫌いだ。
老人は物判りがおそいから。
小銭を数えながら
老人たちは陽なたぼっこをしている。
老人たちの傍に寄り添うのは
いつもあの無口な「死」ばかり・・・。
徳富蘆花の「不如帰」のヒロインが
なぜ人間は死ぬのでしょう と悲しげに
恋人にたずねた。
ほんとうだ、大正時代の新派の観客でなくても
それはそれでわかる。
しかしいまは
小さな声で、しわがれた声で
(微笑と含羞を忘れず)
われわれ老人だって
それを呟く権利がある。
なぜ人間は
死なねばならぬか と。
わたしはまだ
どこからもおその答えをもらっていない。
もらう術を知らない。
だからこうして
老人という人間として
ぼんやり、疑い深く
まだ
生きている。
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