産経新聞 6・30朝刊
正論 クライン孝子さんのお話より
このたび(6月18日)ドイツ連邦議会で「死ぬ権利」を認めて安楽死・尊厳死を容認する『患者対処法』を成立させた。
6年もの歳月をかけ、何度も修正、吟味採決しなおし、最後に賛成317、反対233、棄権5で可決する念の入れよう。そのわけは・・・
かってドイツは第二次世界大戦までのナチス時代、優生思想のもと、国ぐるみで大がかりな「安楽死計画」を企て、多くの障害者や難病患者を犠牲にした忌まわしい「負の歴史」、つまり前科があるからだ。
いきなり「死ぬ権利」(安楽死・尊厳死)といっても、戦後「生きる権利」に固執し、それを最優先するあまり、人間本来の行き方、「死」という極めて個人の権利に迫る死生観についてなおざりにしがちだった現代の日本人にとっては、当惑するだけでぴんとこないかもしれない。
スイスは先進国で、数十年前から、この権利を合法化している。
「これでスイスで死ぬ手間が省ける」と多くのドイツ人は喜んだ。
安楽死や尊厳死の合法化にはリスクもつきまとう。
悪用の危険性や犯罪の温床になりやすく、そのことを危惧する慎重論も根強くある。
だが、重病患者の過度の延命措置は、本人の苦痛はもとより、家族にも精神的、経済的に大きな負担を強いる。
そして、膨大な医療費の国庫負担は国家財政を揺るがしかねない。
その点では、日本も同じ問題を抱えている。
2007年の日本女性の平均寿命は86歳、男女合わせた平均寿命も83歳という世界一の長寿国。
日本にとっても、対岸の火事として見過ごすわけにはいかない。
正論 クライン孝子さんのお話より
このたび(6月18日)ドイツ連邦議会で「死ぬ権利」を認めて安楽死・尊厳死を容認する『患者対処法』を成立させた。
6年もの歳月をかけ、何度も修正、吟味採決しなおし、最後に賛成317、反対233、棄権5で可決する念の入れよう。そのわけは・・・
かってドイツは第二次世界大戦までのナチス時代、優生思想のもと、国ぐるみで大がかりな「安楽死計画」を企て、多くの障害者や難病患者を犠牲にした忌まわしい「負の歴史」、つまり前科があるからだ。
いきなり「死ぬ権利」(安楽死・尊厳死)といっても、戦後「生きる権利」に固執し、それを最優先するあまり、人間本来の行き方、「死」という極めて個人の権利に迫る死生観についてなおざりにしがちだった現代の日本人にとっては、当惑するだけでぴんとこないかもしれない。
スイスは先進国で、数十年前から、この権利を合法化している。
「これでスイスで死ぬ手間が省ける」と多くのドイツ人は喜んだ。
安楽死や尊厳死の合法化にはリスクもつきまとう。
悪用の危険性や犯罪の温床になりやすく、そのことを危惧する慎重論も根強くある。
だが、重病患者の過度の延命措置は、本人の苦痛はもとより、家族にも精神的、経済的に大きな負担を強いる。
そして、膨大な医療費の国庫負担は国家財政を揺るがしかねない。
その点では、日本も同じ問題を抱えている。
2007年の日本女性の平均寿命は86歳、男女合わせた平均寿命も83歳という世界一の長寿国。
日本にとっても、対岸の火事として見過ごすわけにはいかない。