非正規は対象外「介護離職ゼロ」実態
神戸新聞NEXT - 2017年12月17日
政府が掲げる「1億総活躍社会」からこぼれ落ちる人たちがいる。企業が介護休暇・休業制度の充実に取り組む一方、非正規雇用の従業員が対象外となるケースは多い。やむなく離職、その後の再就職でも結局、非正規就労を繰り返すことに。「介護離職ゼロ」「人づくり革命」などの掛け声とは裏腹に、不安定な雇用・就労の固定化が進む。専門家は「介護休暇・休業の対象拡大に加え、離職しても再就職で安定して働き続けられる支援が必要」と指摘する。(広畑千春)
「結婚もしたいけれど、仕事があってこそですよね」とつぶやくのは、両親の介護などで離職し、就職活動中という神戸市の男性(55)。「経験を生かして働きたいが、なかなかうまくいかない」
大学卒業後、団体に就職したが閉鎖的な人間関係に耐えきれず退職し、大阪や東京でビルや社宅管理などの仕事をした。
7年前、母が脳疾患で倒れた。しばらくは働き続けたが、周囲から「親を放っておくのか」と責められた。正社員なら介護休業制度もあったが、当時は派遣社員だったため対象外。人事担当者からは派遣先が契約更新をしない方針であると暗に告げられ、辞めるしかなかった。
母は施設や病院を転々とし、昨年12月に亡くなった。今年1月には86歳の父が転倒し骨折。幸い回復し、男性は求職活動を再開したが「求人は非正規の現場業務ばかり。正社員のマネジメント部門は若手採用が中心」とため息をつく。
同市の女性(56)も、今年亡くなった父を10年以上介護した。母は早くに他界。心臓や糖尿病の持病に加え、骨折などで入退院を繰り返す父の世話で手いっぱい。働く余裕はなかった。
父の死後、ハローワークに登録し、講習も受けた。ただ「24時間介護しかしておらず、経験も何もない」と話す。「今までは父の年金や貯金があったけれど、このままでは生活していけない。早く働きたいが、何ができるのか…」と悩む。
国の2012年就業構造基本調査を基に大和総研が昨年まとめたデータによると、正規雇用の従業員が介護離職後、非正規雇用に就く割合は男性で53%、女性で74%に上った。離職前も非正規だった場合は、男性で72%、女性で95%と、さらに高かった。男性ではその後の就職活動が長期化する傾向もあり、亀井亜希子研究員は「この傾向が続けば、再就職率がたとえ上がっても、非正規化が進むだけ」と指摘する。
神戸学院大の西垣千春教授(社会福祉学)は「日本ではキャリアが途切れるのは不利とされ、働き盛りの40~50代への再就職支援が手薄。介護以外にもさまざまな問題を抱える人が多い。多方面からのサポートが必要」と強調している。
今日3回目の雪かきしてきました。