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「戦争」発言 言論の自由とは言わぬ

2019年05月17日 | 社会・経済

  東京新聞社説2019年5月17日

 開き直るのはやはりおかしい。北方領土を戦争で奪還する、と言って、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員。言論の自由を持ち出して辞職しない意向を示したが、筋違いも甚だしい。

 国会議員として許し難い暴言を吐きながら、居直って職にとどまることは言語道断だが、そんな議員に国会が毅然(きぜん)と対応できないのなら、国権の最高機関としての存在意義が厳しく問われる。

 衆院では丸山氏に対する議員辞職勧告決議案提出の動きが出ているが、丸山氏は提出された場合は「こちらも相応の反論や弁明を行う」と表明。与野党合意で審議に入れば「この国の言論の自由が危ぶまれる話でもある」として、可決されても議員辞職しない考えを重ねて示した。

 北方領土奪還には「戦争をしないと、どうしようもなくないですか」との丸山氏の発言は、自衛目的以外の武力の行使を禁じた国際法上認められず、憲法九条の戦争放棄と、九九条の国会議員の憲法尊重、擁護義務にも反する。

 にもかかわらず「言論の自由」を持ち出して議員の地位に恋々とするとは何事か。自らの発言の重大性に気付かない時点で、国民の代表たり得ない。辞職勧告を待たず、自ら進退を決するべきだ。

国会議員の不適切極まりない発言は丸山氏にとどまらない。

 四月だけでも塚田一郎元国土交通副大臣が道路整備を巡り「安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相への忖度(そんたく)」を公言、桜田義孝前五輪相も「復興以上に大事なのは高橋(比奈子衆院議員)さん」と発言し、いずれも辞任した。

 自民党は今夏の参院選を前に失言を防ぐための注意事項をまとめた文書を党内に配布した。それほどの議員の質の劣化には暗澹(あんたん)とするが、口をふさぐより、政治家としての考え方の方が問題だろう。

 政治指導者による言動の影響も見過ごすわけにはいかない。

 安倍首相はしばしば「悪夢のような民主党政権」と発言し、野党側から反発や批判を受けている。

 選挙に向けて自民党内の奮起を促す意図があるにせよ、政治権力の頂点に立つものが穏当を欠く言葉を使い続ければ、それが当たり前となり、政治を巡る言論空間が荒れるのは当然だ。

 政治は言葉を駆使して理念や政策を実現する「可能性の芸術」でもある。「言論の自由」を持ち出せば、何でも許されるわけではない。言葉選びは、慎重の上にも慎重を期すべきは当然である。


菜の花畑の風景をアップする予定だったが、どれもピンボケだったので止めておきます。