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バカなフリして生きるのやめた “ここがおかしい”

2022年05月24日 | 社会・経済

AV業界や購買者目線で作られた「AV新法」には反対です!!

仁藤夢乃(社会活動家)

imidas連載コラム 2022/05/24

 

「性交」を契約上の業務として国が公認!?

 アダルトビデオ(AV)の規制に関する新たな法案(性行為映像作品出演被害の防止等に関する法律)が今国会において、とんでもないスピードで採決されようとしている。

 もともとこの法案は2022年4月から施行された「成年年齢引き下げ」に伴い、成人に組み入れられた18〜19歳の若者が、AV出演契約で民法の「未成年者取り消し権」にあたる権利を今まで通り行使できるよう求めた被害者や支援団体の声に応えて検討が始まった。が、いつのまにか内容を変え、これまでAV撮影で建前上「演技」として行われてきた性交シーンが、出演者との契約合意があれば「本番行為」であっても問題なしとされ、AV制作・販売業者(以下、AV業者)に大変都合のいい法案となってしまった。

 このままでは「性交のビジネス化」を国が法に定め、AVを公(おおやけ)に認めることになる。売春防止法にも反しており、大変な問題を抱えた立法と言えるだろう。

 今回、この動きに気づいた人がヒアリングの場を設けるよう働きかけ、22年5月9日に与党と各党の実務者会議に民間の女性支援団体が呼ばれ、Colabo(コラボ)を代表して私も参加した。しかし、それは私たちに与えられた「最初で最後の」公聴会だった。もしもこの場を設ける働きかけがなかったら、AV出演被害の当事者や支援団体からのヒアリングすら行わずに、新しい法律をつくろうとしていたのだから驚きだ。

 私が出席した各党実務者会議によるヒアリングには、AV業界の発展と健全化のために設立されたという任意団体の「AV人権倫理機構」も呼ばれていた。同機構は「中立機関」と言いながら多数のAV業者が加盟しており、業界と深く通じていると私は感じている。彼らはどんなことを話すのだろう? 議員たちはその話をどう聞くのだろう? と思っていたが、同機構の資料には「出演強要はほぼなかった」「非常に儲かるから続けたい」と書かれていた。そして機構側出席者の説明にも「当機構に加盟する会社が制作した“適正AV”においては、19年以降は出演強要は1件もなかった」とあった。

 さらに「女性たちは自らの意思で“女優”になっている」「19年以降も言葉巧みに意に反して撮影させられた、させられそうになった例は少数あった可能性があるが、販売が継続されているケースはほぼ存在しない」と、私たちが見てきた現実とは全く違う主張をした。

 私たち女性支援団体は、AV出演被害に遭った女性に日々出会っており、AV業者の悪質な手口も把握している。被害の実態について当事者たちも声をあげており、政府も無視できない状況であるはずなのに、どうして業界側ともとれる団体を被害者や支援団体と同等に扱い、話を聞くのだろう? と憤りを感じた。

人身取引を「ビジネス」として正当化

 ヒアリングの席で、AV人権倫理機構は「AVは3000億円の市場であり、厳しい法規制がかかるとAV業界がつぶれ、そこで働いている人が食べていけなくなる。AV業界はグレーゾーンで生きている人の“サンクチュアリ”であり、大企業体でもあり、ビジネスとしてやっている。業界で『稼げた』という人は最低でも1億円は稼いでおり、スカウトも2000万円は稼いでいる。AV制作には工場も必要なく、元手もかからず簡単にできてしまうので、国内で厳しい規制がかかればそれだけの市場が海外に流れることになるかもしれない」などとAV業界の実態を紹介していた。

 女性を性搾取し、女性の人権を踏みにじって成り立つ「ビジネス」は人身取引行為だと思うが、彼らにもその認識があるらしく「かつてのAV業界は人身売買そのものだった。今も3000億円のうちの2%しか“女優”には支払われていないので、人身売買と言われても仕方ないと思い、報酬をアップするように考えている」と話した。

 ユニセフ(UNICEF 国連児童基金)によると、人身売買(人身取引)とは「弱い立場にある人々を搾取する目的で、強制的な手段や暴力、脅迫、誘拐、詐欺行為を用いて又は脆弱な立場に乗じて、人を獲得・輸送・受け渡ししたり、労働を強いたり、奴隷化したりすること」とある。被害者に手渡される金額が高ければ人身売買でなくなるということでは全くない。

 しかし、出席した議員から「単体女優」「企画もの」といった業界人やユーザーだけに通用するような用語を交えて出演料の質問が出たり、AV人権倫理機構も議論の焦点は「人権」ではなく「ビジネス」の問題であるかのように発言したりと、論点はずらされていった。

 さらに別の議員からは、「AV人権倫理機構がつくる自主規制を骨子案作成の参考にした」という発言もあった。私たち支援者側へのヒアリングは一度きりなのに、AV業者側からはよく話を聞いてこの法案を作ったのかなと私は思った。

 AV人権倫理機構側は「自分たちは“中立な機関”であり、被害者からの相談も受けている」と主張していたが、AV出演の被害者支援を行っている支援団体に「AV人権倫理機構に相談しても何もしてもらえなかった」という被害者からの相談が相次いでいると聞いている。そうなると、彼らの言う「相談支援」もAV業者の「ビジネス」を正当化するためのものではないか。

 ちなみに、この法案の一番の問題点は、AVを含めた性売買や性搾取が「構造的な暴力」であることを認識していないどころか、主に女性を中心とする被害者に「自由意思」という言い方で責任を押し付けようとし、それらを「契約」の名のもとで合法化していることだ。

 AV出演被害者の相談支援活動を行っているNPO法人「ぱっぷす」副理事長の中里見博(なかさとみ・ひろし)さんは、この法案について「AV被害の根源は、性交を含む実際の性行為が“撮影”で行なわれることから生じており、この法案は“カメラを回すこと”で実際に性交を伴う契約を“合法”と認めるものだ。これまでAV出演は、裁判所により公衆道徳上有害な業務であると認定されていることと相容れない」と指摘する。1994年の東京地方裁判所判決では、「(AVに出演する女性は)あてがわれた男優を相手に、被写体として性交あるいは口淫等の性戯の場面を露骨に演じ、その場面が撮影されるのを業務内容とする」「(AV出演は)社会共同生活において守られるべき性道徳を著しく害するもの」とされている。

 中里見さんは「この法案が通れば、金銭でセックスを買うことを積極的に合法化する日本で最初の法律になる」と危惧している。

私が指摘した「AV新法の問題点」と要望

 2022年5月9日、性暴力被害者を支援する民間支援6団体は「この骨子案のままでは到底、受け入れられない」との要望書を提出した。私は法案の詳細以前に、そこに書かれた「目的」や「定義」からすでに問題だらけであると感じ、以下のことを強く主張した。

 まず、法案に「目的」として書かれた「出演する者の自由な意思決定を確保」するという文言は、AV出演被害を矮小化し、被害者が声をあげることを妨げるものであるため削除する。AVの撮影に関する加害行為は、性暴力と同じように「断われない」「抵抗できない」状況や関係性を利用して行われ、対等ではない関係性がAV業者と女性たちの間にあるからだ。

 性暴力被害者は、被害体験を再演しようとする「トラウマ反応」によって、AVに出演被害に遭うことも少なくない。AV業者はそれも熟知したうえで利用し、女性たちに自らの意思で出演を選択したかのように思い込ませ、誘導するようなことを日々行っている。「脅し」「暴行」「強要」を用いずとも、相手を出演させることは可能なのだ。

 このまま新法が成立すると、AV出演は「本人の意思に基づくもの」とAV業者側が主張できることとなってしまう。そもそも、この法案ではAV業者と被写体になる女性が対等であることが前提になっているが、その道に長けているAV業者と、右も左もわからない十代の女性が対等な関係にあるわけがない。そのため「(出演する者の)自由な意思決定を確保」という文言を、「被写体となる者の尊厳または人権を確保」と修正することも必要だ(これについては、ヒアリング後に「個人の人格を尊重」へと修正された。「人権」ではなく「人格」としたため、人権保障の視点ではなく個人に自己責任を押し付けるようにも読める)。

 さらに法案の中で「AVの定義」に書かれた「契約」の対象となる行為に「性交」が含まれることで、「撮影」の名目なら「本番行為」の金銭取引が可能となり、売春防止法で禁止されているはずの行為も合法となってしまう。金銭を介した「性交」が法律で認められると、AV出演以外の性売買被害者の人権侵害をも助長することに繋がる。

 また、最近のAVで多く見られる、排泄物や吐しゃ物を食べさせる、水中に沈めて息をさせない、ろうそくや花火等で火傷させる、殴る蹴る、首を絞めるなどの虐待・暴力行為さえも容認されている。そうした「撮影名目による暴力行為」の合法化も問題だ。

 多くのAVでは女性が屈辱や性的対象物、商品、見せ物として非人間的に描かれており、苦痛を楽しんでいるかのように見せたり、強姦やその他の性暴力そのものを見せたりすることも少なくない。つまり昨今のAVは、女性を性的に支配するストーリーを楽しむ加害映像と言うことができ、その背景には女性蔑視や女性差別がある。法案の「全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するもの」という「AVの定義」が、ユーザーやAV業者側に立った言葉であることも問題だ。

 そこで、私たちは要望書で以下のことを求めた。(1)性交および暴行陵虐行為を目的とする契約は禁止すべきであり、その前提で定義を変更すること。(2)法律名の「性行為映像作品」を「性行為画像記録」とすること。(3)「性行為画像記録」の定義を、「人が性交若しくは性交類似行為を演じる姿態又は性器等を触り、若しくは触らせる行為、および暴行凌辱・残虐行為等を演じる姿態が撮影された映像を含む記録であって、主に女性を性的に支配し、性的対象物として暴力的に扱うものをいう」とすること。(4)性器を露出した画像記録は許されないので、削除すること。

 こうした民間支援団体からの要望を受けて連日法案が修正されていったが、この文章を書いている現在に至るまで「性交を合法化する」という根幹の部分は修正されていない。

被害者の人権保障の観点から

 AV出演被害者の人権・生活保障、尊厳の回復と、被害に遭わずに生活できるよう未然の支援策も重要だ。

 そもそも妊娠や性感染症のリスクがある行為が、法的に「仕事」や「契約によって有効なもの」として認められること自体が問題だが、現状ではAV出演や性売買に関わる女性たちが妊娠したり性感染症になったりしてもAV業者や相手の男性は責任を負わず、女性自身が治療費や治療の間の生活費を工面しなければならない状況がある。そのため妊娠や性感染症について、また現実に生じている精神疾患などの影響についてもAV撮影の被写体となる女性の自己責任ではないこと、AV業者や相手の男性にも責任を負う義務があることを明確にすることも必要だと思う。

 法の目的には、被写体となる女性の「性と生殖の健康と権利の保護」を入れ、男女間の「性交」は「生殖行為」であるため、AV業者の義務として被写体となる女性の「性と生殖の健康と権利の保護」もしくは、せめて「身体的・精神的・性的安全と健康の確保」を入れるべきである。被写体となる者の「生命・身体に重大な危険を及ぼす行為」「心身の安全・健康に影響を及ぼす行為」の禁止規定も必要だ。そうして「罰則がなければ、この新法が実効性のないものとなることは確実」とも訴えた。

 コロナ禍で、障害や性暴力被害だけでなく、貧困などからAV出演被害に追い込まれる女性もこれまで以上に増えている。他に選択肢がない、またはそう思い込まされる社会の状況の中で、私たちはAV出演や性売買を選択させられている女性と、毎日のように出会っている。こうした状況の背景には、女性が生きづらい男女不平等社会があり、この法案はそうした根本的な問題に蓋をするものだ。

 要望書提出後の5月13日に示された法案には「性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じている」とあった。この法案の起案者も、出演者たちに重大な被害が生じることを認識しているのだ。

 そのため、「出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずること」を目的として、「出演契約の締結及び履行等に当たっての(中略)義務、出演契約の効力の制限及び解除並びに差止請求権の創設等の厳格な規制を定める」とされた。「生殖機能の保護」という言葉もさらに付け加えられた。

 しかし、そもそも、将来にわたって取り返しのつかない重大な被害が発生する恐れがあること、生殖機能の保護が必要なことをなぜ契約に含まれるものと認めるのか。

「心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがある」こと、また、現に生じていることを認めるのであれば、その原因となるAVの制作をさせないことが必要なのではないか。そうでなければ被害を防ぐことはできない。契約方法や制作行為に対する規制が足りないから被害が起きているのではないし、法案にある通り「相談体制」を整備したとしても、被害者が相談するのは被害に遭った後であり、この法案では被害の拡大を防ぐことも不可能だ。

 さらに罰則規定として、説明書面や契約書等を交付せず、虚偽の書面を交付した場合は処罰の対象になると書かれている。これはまさにAV業者が現在も行っている「自主規制」を参考にしたものだ。AV業者は契約の際に脅しや強制がないことを証明するため、契約の様子を録画していると話していた。前述したようにAV業者と被害者には対等な関係性はなく、「契約書」や「説明」もAV業者が自身の正当性を主張するためのものである。

 AV業者がもしも「将来にわたって取り返しのつかない重大な被害が発生する恐れがあること」を丁寧にしっかりと書面で説明したとして、出演交渉を受けるのは男女不平等社会の中で性売買に追い込まれる女性たちである。AV業者との決して対等でない関係性の中で同意せざるを得ない状況にあっても、「本人が同意した」ということで「本番行為」も契約に入れられてしまう。つまり、この法案では実際に今も起きているそのような被害が防げず、それどころか女性たちに自己責任を押し付けるものになっている。

 私は、要望書のすべてが反映されないのであれば、この新法はないほうがよく、あっても被害者救済につながらないどころか、被害を拡大し、さらなる女性差別や人権侵害が生じることになると考えている。「まずは作って、後からよいものにしていけば?」と簡単に言う人もいるが、日本では法律は一旦通れば改正は簡単ではない。

 まずは18〜19歳を救済する「取り消し権」の特例法を作り、AV全体の問題については議論の積み重ねが必要だ。AV業者や購買者、消費者の目線で書かれた法案がこのまま成立してしまえば、事実上のAV合法化に繋がり、AV業者に自身の正当性を主張するために使われることは確実だ。

 5月22日に東京・新宿で実施された「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」は、大きな反響を呼んで国会も注視している。市民で反対の声をあげ、世論を高めることが必要だ。


 トウキビの定食を終わりカボチャの定植を始めました。

 昼前にご夫婦のお客様。苗25鉢も買っていただき、園内をご案内。素晴らしいと感動しておりました。今度は友人を連れてくると。