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「脱炭素」を考える 私たちの星を守りたい

2021年01月18日 | 生活

「東京新聞」社説 2021年1月18日 

 2019年1月、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)。集まった指導者たちの面前でスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが言った言葉は広く知られるようになりました。

 「あなたの家が燃えている時のように行動してください」と。

 目の前で今、わが家が燃えているとしたならば、誰もが必死になって火を消そうとするはずです。助けを呼ぼうとするはずです。

◆気候危機は「生活実感」

 当時十六歳だったグレタさんは、この地球という惑星を、私たち人間が多様な生き物たちと同居するたった一つしかない「家」に、“灼熱(しゃくねつ)化”に向かう気候危機の現実を「火事」にたとえて、その火を消してくれるよう、指導者たちに訴えました。

 だがその時もまだ、大人たちの反応は鈍かった。「わが家の火事」を直視しきれませんでした。

 一方で、グレタさんの言葉と行動は、同世代の心を強く揺さぶります。ミラノ、パリ、ニューヨーク、そしてこの日本でも、「私たちの家を燃やさないで」という手書きのプラカードを掲げた若者たちの行進が始まりました。

 ジャーナリストのナオミ・クラインさんは書いています。

 <この子どもたちにとって気候変動は、本で読んだだけの、はるか彼方(かなた)にある怖いできごとではなかった。それは喉の渇きそのものと同じ、実在する緊急事態だった>(「地球が燃えている」)

 彼らにとって気候危機は、知識ではなく生活実感だったのです。

 そんな鈍感な世界が今、変わろうとしています。

 巨大化し、凶暴化する台風やハリケーン、続発する森林火災…。そして新型コロナの猛威がとどめを刺したのでしょう。人類の持続可能性の危うさ、もろさに、ようやく危機感を募らせた指導者たちが、重い腰を上げたのです。

 温暖化対策に関しては先頭集団から脱落しそうな日本でも、変化が起きつつあるようです。

◆原発なしで達成可能

 暮れも押し迫った先月二十五日、菅首相が十月の所信表明で発した「二〇五〇年、温室効果ガス実質ゼロ宣言」を裏付ける、政府の「グリーン成長戦略」が発表されました。脱炭素化を進める企業の技術革新を後押しし、環境と経済の好循環を図るというのが、その趣旨で、十四の重点分野について数値目標を掲げています。

 潜在力が高く、未来の主力電源とされる洋上風力の発電容量を、四〇年までに、最大四千五百万キロワット(原発四十五基分)に増やし、三〇年代半ばまでに、販売される新車を100%電動車にする−など、国際的な流れに沿う、かなり踏み込んだ内容とは言えるでしょう。

 ただし「原子力発電を最大限に活用する」というのは、気がかりです。過酷事故のリスクをはらみ、再生エネ電力の値下がりで経済合理性を失った上、核のごみの処分場も見つからない−。そんな原発に依存し続け、巨額の国費を投じ続けることになるからです。

 では、原発なしで「実質ゼロ」は可能でしょうか。名古屋大環境学研究科特任教授の竹内恒夫さんは「ほとんど、できちゃいますよ」と言っています。

 竹内研究室の試算では、五〇年までに十キロワット未満の住宅用太陽光を現在の八倍強、五十キロワット以下の事業所用などを七倍に拡大し、洋上風力は六千万キロワットに。陸上風力や中小水力、地熱といった既存の再エネ電源を今のペースで増やし、既設の大型水力を維持していけば、総発電量の約九割を再エネで賄うことができる。

 絵空事にも見えますが、住宅用太陽光の導入目標は、一戸建て住宅の半数が太陽光パネルを屋根に載せれば達成可能。洋上風力の目標値は、日本風力発電協会の推計による潜在的な導入可能量の半分という、むしろ控えめな設定にした。しかも海底に支柱を固定する着床式だけの計算で、浮体式は勘定に入れていない−。

 「四〇年以降は特に、燃料用水素などの製造による電力需要が15%ほど増えますが、人口減少や省エネの進展などで相殺されていくはずです。過渡期の間はCO2排出の少ない天然ガスでつなげばいい」と、竹内さんは考えます。

◆“消火活動”が始まる

 エネルギーが変われば、ライフスタイルも変わります。真に「新しい生活」の基盤づくりが急加速する年になりそうです。“わが家の消火活動”が本格的に始まる年でもあるでしょう。

 「瑠璃色の地球2020」。大みそかの紅白歌合戦で、松田聖子さんが歌った楽曲です。

 ♪ひとつしかない/私たちの星を守りたい…。サビのフレーズが印象的でした。実はこれ、三十五年も前の作品です。長い間、足踏みが続いていたようです。


 昨日は阪神淡路大震災から26年目、そしてもうすぐ3.11がやってくる。あの時、何を思っただろう?それぞれに何かを胸にした時ではなかっただろうか。もうすぐ東海大地震が来るとも言われている。地球を守りたい!



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2 コメント

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自分だけ逃げれるのか (hanayukiay)
2021-01-21 11:40:44
以前の話です。2007年頃のアンカラです。街はすり鉢状で、冬になると石炭の煙害がすごかった。最も貧しい人たちが底に住んでいます。金持ちは高台へと逃げます。その後の北京なども同様のことがあったでしょう。石炭を使わない日本では、目前に見えないのでこんな地球の火事が分かりにくいのでしょうが、すり鉢の上へと逃げていることをイメージしてほしいと思います。悲しい現実、個々人ってみんな利己的だとしても、誰もが逃げ切れない時がやってきますね。
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石炭火力の害 (mooru)
2021-01-21 14:22:37
 電発事故が起きた時も東電幹部さんの家族やお金持ちは海外に逃げたようです。今も、石炭火力発電所の周りでは健康を害している人が多いといいます。以前のブログ記事にもアップしたのですが、政府は医療費削減を言いますが、日本から石炭火力発電所をなくせば医療費は下がるようです。
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