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北原みのり 松本人志「復帰」と百田尚樹の「30歳を超えた女」の「SF」に日本の「男社会」の強烈さを思う

2024年11月17日 | 社会・経済

おんなの話はありがたい

AERAdot2024/11/15

 キオスクの店頭に並ぶスポーツ新聞、「松本 復帰」の文字がケバケバしく踊っている。足が思わず止まる。松本人志氏は自分が週刊誌相手に起こした裁判を取り下げただけである。それなのに、なぜ、復帰の話になっているのだろう?

 松本氏が裁判を取り下げるというニュースが流れてきたとき、「良かった! 本当に良かった!」と、心から安堵した。女性が証言をすることで味わうだろう痛みや恐怖を考えれば、そんな負担、ないほうがいいに決まっている。だいたい松本氏が訴えを取り下げたということは、松本氏に勝ち目がない=「事実無根」と怒った週刊文春との闘いに勝ち目がないと認めたようなものだ。

 訴えの取り下げにあたって松本氏の代理人弁護士は「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認いたしました」とコメントを出していた。歯切れが悪く、モノハイイヨウ、な表現方法である。そもそも週刊文春の記事も「物的証拠がある」という前提で書かれてはいなかった。記事は被害を受けたという女性たちの証言、その証言を支える客観的な証言やLINEなどのやりとりで構成されていた。当たり前のことだが、「直接的な物的証拠がない」ことは、被害がなかったことを意味するわけではない。 

 また、松本氏側の弁護士は、被害女性の実名を暴露するネット投稿を「証拠」として法廷に提出したり、実名を突き止めた被害女性を探偵業者に尾行調査させたり、弁護士を通じて出廷しないよう説得しようとしたりしてきたと報道されている。そのような行為は、どれほど女性たちを恐怖させたことだろう。そしてそれは、松本氏自身が、女性が証言することを恐れていた証拠でもあろう。

 今、ネット上では「復帰はありえない」という声と、「おかえりなさい」というファンや身内からの声が激しくぶつかりあっている。ファンからすれば「長い沈黙で禊ぎを済ませた」くらいの気持ちなのかもしれないが、それではテレビ界であれだけの権力を誇っていた松本氏が一瞬にしてテレビから消えた理由は、何だったというのか。

 松本氏による性被害に苦しみ、声をあげた女性が何人もいる、という事実が明らかになったからではなかったのか。そしてその多くは、物的証拠のない(報道によれば女性たちはケータイを取り上げられるなどしていた)被害であった。だからこそ刑事事件として訴えるのは難しく、だからこそ女性たちには強いメディアが必要だったのだ。

 テレビに出て、自分の名前で、自分の声で表現できるというのは、大変な特権でもある。強い影響力を持ち、大きなお金が動く世界でもある。そういう特権の上で女性たちへの性加害に及んだ……と告発する被害者が複数いるのであれば、テレビに復帰できるには、「そろそろ1年経つから」「裁判しないことになったから」くらいの理由では到底無理なはずだと私は思う。芸能界の真摯な判断を期待したい。

 そしてそんなところへの、日本保守党代表の百田尚樹氏の発言である。「これはSFやで」とふざけながら、少子化対策として「(女性は)30超えたら子宮を摘出する」「女性は18歳から女性は大学に行かさない」などと楽しそうに動画配信で話していた。あまりに酷い発言に「女性に失礼」どころか「SFに失礼」という怒りまで買っている始末だが、こんなふうに「軽口」として吐かれる暴言は、じわじわと女を絶望の淵に追いやっていくのだろう。女に希望を持たせない、女に尊厳を与えない、女を搾取することしか考えない社会で、女は安心して子供を産むことなどできないのだから。百田さん、女が子供を産みたいと思う社会にするならば、男が女への暴言を1回吐くごとにペニスの皮をピーリングナイフで削ぐ刑を提案しますよ。あ、SFやで。

 そんなところへとどめのような公判記事だ。新潟地裁で、3年前に妻と1歳の娘を殺した罪などに問われている男の裁判が開かれている。

 被告人質問によれば、男が妻に離婚したいと告げると、「本当に言っているの? 不倫して借金を作って私の口座の金を無断で返済に充てたりしたあなたにそれを言う権利も資格もない。これまで一緒にいてくれただけありがたいと思え」と言われたことに腹を立て殺害したという。さらにその一部始終を見ていた1歳の娘も殺害したという。私はこの事件自体を知らなかったが(もしかしたら忘れてしまっていただけかもしれない。あまりにも、女や子供が殺されている社会だから)、知っている、こんな男を私は知っている……という気持ちが抑えられない。いろんなことが、点で起きるいろんなことが、こういう事件に直面するたびに一気に面となって迫ってくるように感じるのだ。

 日本社会、まだまだここは男社会、強烈な男様社会である。四方八方、「男様!」と書かれた面が女たちの人生を囲んでいるかのような社会だ。男社会は、男の暴力や男の暴言に寛容である。男社会は、女の怒りや女の裏切りを全力で潰しにかかる。男社会は、男を守る。男社会は、女を見捨てる。男社会は笑いながら女に暴力を振るい、楽しそうに女に暴言を吐く。

 それがずっと許されてきたので、男自身、それの何が悪いのか実はよくわかっていなかったりするのだ。だから、女が怒るとびっくりする。女が牙を剥くと恨みをつのらせる。賢く臆病な女たちは、男を怒らせないことに細心の注意を払いながら、はりついた笑顔で生きる道を選ぶ。それはとても苦しいこと。だけど男を怖がらせたら自分の身が危険だ。

 そんな女の苦しさなど、もう見たくない。殺される女を見たくない。怯える女を見たくない。いったいなぜ、この国は、女の声にここまで耳を塞ぐのだろうか。


園のようす。
なんの花だろう?

イヌサフランかと思ったが、ほとんど終わっているし色が違う。
サフランか?
いや、違うなぁ。
ワカラン。