うちなー→えぞ日記 (もとすけのつぶやき)

奈良県出身、沖縄での学生生活を経て、北海道ライフを堪能する、
とある研究者の日常のよしなしごとの紹介。

フィルムカメラの時代終焉へ・・・

2006年05月30日 12時55分17秒 | うちなー日記(沖縄編)
琉球新報の今月26日の朝刊に、衝撃的な記事が載りました。
「キヤノン、フィルムカメラの開発を終了」
それによると、今後、キヤノンはフィルムカメラについては、新たに開発をしないことを決めたそうなのです。
フィルムカメラは今年に入って、すでにコニカミノルタがカメラ(フィルム、デジタル両方)事業から撤退、ニコンも銀塩機種事業を大幅に縮小(現在3機種のみの生産)しており、これにキヤノンも追随することになります。恐らくこの流れは今後も広がっていくことになるでしょう。残ったフジやオリンパス、ペンタックスもいつまでフィルムカメラを作ってくれるかわかりません。
近年、デジタルカメラが急速に高機能化し、多くの人々がデジタルカメラに移行しました。また、元々カメラを持っていなかった人たちにも、その入りやすさから、デジカメは受け入れられました。
私個人としては、現在フィルムカメラとデジタルカメラを両用しています。現在、フィルムでは、ミノルタのα303si SUPERという機種を、デジカメはソニーのCybershot DSC-H1(光学12倍ズーム、500万画素)とオリンパスのμDIGITAL600(コンパクト、600万画素)を使っています。趣味の飛行機の撮影は、すでにデジタルに移行し、ダイビングサークルで使用する水中写真もデジカメで撮っています。フィルムの方は、写真部で作品用の写真を撮るくらいです。
デジカメのメリットは、なんといっても、現像・プリント不要の低コストさと、撮りためた写真の整理のしやすさでしょう。私がこれまでに撮ってパソコンに保存してあるデジタル写真の総数は2006年5月30日現在1万1807枚(16.9GB)ですが、これをプリントの状態で保管するとなると、1枚0.2ミリの厚さとしても、合計2360ミリ、つまり2.3メートルもの厚さになります。もし、アルバムに入れて保存しても、台紙の厚みを考えれば、より分厚くなるのは必至でしょう。第一現像・プリント代を考えると、もしコンビニなどのプリント代0円でしたとしても、36枚につき500円として、16万3986円もかかります。デジカメなら、パソコンで見る限り電気代くらいしかお金はかかりませんから、ものすごく省コストです。
ここでフィルム写真における悲劇的な体験談を一つ・・。それは私が一眼レフカメラを買って初めて飛行機写真を撮ったときのこと(中1の頃です)・・・、最初、シャッタースピードの表示の意味がよく分からなかった私は、1sという表示を、「一番早い」と理解し、フィルム5本分ほとんどの写真をその設定で撮ってしまいました。結構珍しい飛行機も撮れたので、意気揚々と写真屋に向かい、現像・プリントしたのですが、なんとほとんどがブレまくりで何が写っているのか分かりません。たまたま「P(おまかせモード)」で撮影した3、4枚の写真だけがちゃんと写っていました。後から分かったのが、「1s」というのは「1秒間露光」であり、飛行機撮影に適するシャッタースピードの数百倍もの長さだったということでした。結局、120枚あまりの写真が無駄になり、フィルム代1000円と現像・プリント代5000円はほぼ水の泡となってしまいました。実に苦い思い出です。もしもデジカメならば起こりえなかった失敗談でもあります。
ところで、琉球大学の写真部(正確には写真クラブ)は、現在白黒銀塩(フィルム)が主流で、ほとんどが暗室で自分で現像・プリントをしています。ただ、最近はサブでデジカメを持つ人も増え、徐々に作品用にも浸透してきています。私がこれまで出展した写真展では、琉大祭(昨年10月):銀塩4枚、デジタル1枚、四大写真展(昨年11月):デジタル2枚、ポートフォリオ(12月):A5版デジタル30枚、卒業写真展(今年3月):銀塩5枚と、結構拮抗しています。私は、デジカメで十分に作品レベルの写真が撮れると思います。
画質的なところは、よほど大きな作品にしない限り、フィルムもデジタルも変わりません。(実際、この前の写真展では、銀塩のポジフィルムで撮ったにも関わらず、デジタルと間違われた・・)というのも、最近のデジカメの1000万画素以上の機種の画像は、上級者向けフィルムである、プロビアやベルビア以上の精細さを誇ります。現在普及型として出回っている、500万画素~600万画素クラスでも、きちんと補正さえすればA1サイズ(縦59.4cm横89.1cm)程度まで引き伸ばしても十分鑑賞に堪えられます。(琉大祭での私の作品がそうでした)
「デジタルでは立体感が出ない、そもそも光を直接フィルム上に記録する銀塩にデジタルはかなわない」と言う人がいますが(今朝の新聞の投書欄にもそんな投稿がありました)、これはフィルムカメラ信奉者のよく持ち出す台詞です。立体感、つまり被写界深度というものは、感応媒体の大きさで決まります。通常使われるフィルムは35mm判(24×36mm)です。対して、普及型のコンパクトデジカメでは、2.5分の1~1.8分の1インチ(それぞれ4.3×5.7mm、5.2×6.9mm)のサイズのCCDイメージセンサーが使われています。単純に比較すると、デジカメのCCDはフィルムの36分の1から25分の1程度の大きさしかありません。被写界深度は、媒体が大きければ大きいほど深くなります。つまり、良い感じにボケた写真を撮ることができるのです。画像の精細さでは、ほぼ必要十分にまで達したコンパクトデジカメですが、この点ではフィルムカメラにかないません。ただし、あくまでコンパクトデジカメにおいての話です。デジタル一眼レフカメラでは、すでにフルサイズ(35mm判)のイメージセンサーを搭載した機種が増えていますし、それよりも大きな中判サイズのデジカメも発売されています。つまり、さきほどのフィルムカメラ信奉者の指摘は、コンパクトデジカメについては当たるものの、それでデジカメ全体を否定することはできないのです。どうもそういうデジカメ批判をする人は、最近のデジカメを知らないように見えます。
今後、デジカメは一層高画素化が進むでしょう。現在のコンパクトデジカメの主流は500~600万画素ですが、この春にはカシオから1000万画素のコンパクト機が発売されました。他社もこの流れには追随することになると思います。
ところで、デジカメの写真を見る場合、ほとんどの人がテレビかパソコンで画像を見ることになりますが、テレビの画面の精細さは、縦480×横640の約30万画素(このため、ほとんどのビデオカメラはこのサイズで記録します)、フルハイビジョンパネルのテレビでも、縦1080×横1920の約200万画素、パソコンの画面は、縦768×横1024で、ハイビジョンテレビの約半分の80万画素となっており、実はテレビやパソコンで見る限りは理論上200万画素の撮影能力があれば十分なのです。
では、写真プリントはどうかというと、人間の目の分解能では、L判(写真屋で普通にプリントしてくれるサイズ)で300万画素以上は判別できません。(20cmの距離から見た場合※1cmくらいまで近づけて見れば別ですが・・・)ということは、一般の人にとっては、最近のデジカメは完全にオーバースペックです。まあ、私のように飛行機を撮影して、機体の後ろの方に小さく書いてある登録番号を拡大して見るというようなマニアックな使い方をしないかぎりは、それほど画素数は必要ないのです。まあ、同じことはフィルムにも言えるのですが・・。
世界一写真好きな国民を擁し、世界一のカメラ生産国である日本、その日本で起きている写真業界の変革は、世界にも大きな影響を与えるのは必至です。これから先、フィルムカメラは消え去るのか・・・、それともいくつかは残るのか・・・。私としては、少しは残ってくれることを望みます・・・。(デジカメは飛行機内では離着陸時に撮影できないし・・)