こんばんは、もとすけです。
世間一般ではとっくに夏休みは終わりましたが、大学、特に学部生にとっては9月はまだ夏休み真っ只中ですね。
残念ながら私も既に夏休みは終わっており、研究生活に戻っております。
今年の夏休みは研究作業に追われ、なかなか実家に帰るタイミングが取れずにやきもきしましたが、幸い8月下旬に夏休みを取って帰省することができました。春休みには帰省できなかったので、8ヶ月ぶりの実家でした。
実家に帰ったらやろうと思っていたことがいくつかあったのですが、そのうちの一つが、今回ご紹介する「五新線」跡の探訪でした。
「五新線」とは、旧国鉄未成線(完成しなかった路線)の一つで、五条駅(奈良県五條市)から新宮駅(和歌山県新宮市)までの約80kmをほぼ直線で結ぶべく計画された路線です。元々、吉野の材木を運搬することを主目的として計画されたそうですが、戦前の1939年に着工されたものの、ルート決定が遅れたことや、戦争による混乱で工事は中断してしまいます。戦後1957年に工事が再開され、1959年には城戸(旧西吉野村)までの路盤が完成した後、さらに阪本(旧大塔村、五条駅から約20km)までの建設が徐々に進められますが、1982年の国鉄再建法施行により不採算(見込み)路線として建設が凍結され、現在に至ります。
上の路線図を見てお分かりのように、新宮駅がある紀勢本線は紀伊半島の外周をぐるりと回っており、大阪方面からはかなりの遠回りを強いられます。天王寺駅から新宮までの距離は110kmほどですが、阪和線・紀勢本線を経由した場合のJRの路線距離は260kmにも及びます。もし五新線が全線完成していれば、路線距離は半分程度で済みますから、相当な時間短縮になっていたと思われます。
さて、結局、五条から新宮までの5分の1にも満たない部分しか路盤は完成しませんでしたが、五條市街から城戸まで完成していた路盤はバスの専用道として活用されることとなりました。1965年から国鉄バスの運行が開始され、五条駅の駅舎から直接バスに乗り込むことができる利便性から、当初はかなりの利用率を誇っていたようです。
その後国鉄民営化後は西日本JRバスが引き続き運行していましたが、並行して走る国道の改良が進み、奈良交通の競合路線との所要時間差が無くなったことや、沿線人口の減少などから利用が低迷し、2002年にJRバスはこの路線から撤退してしまいました。
それ以降、地元自治体の委託を受けて奈良交通が同路線の運行を引き継ぎ、本数は少ないながらもこれまで専用道経由の路線バスが維持されてきました。
しかし、近年は専用道内のトンネルの老朽化が問題になってきており、ついにこの9月30日を以って専用道の利用が休止され、並行する国道経由に全て移行することとなりました。
ここまで前置きが長くなりましたが、乗り物好きでミーハーな私としては是非この夏休みに旧五新線を走行するバスに乗っておきたいと思ったわけです。
奈良交通 11系統 五條~西吉野温泉線 前面展望
というわけで、早速ですが、こちらが実際に乗って撮影した走行動画です。
五条駅からほど近い、五條バスセンターから西吉野温泉に向かうバスに乗ってきました。
実は専用道を走るバスは平日片道5本、休日は早朝の1本しかありません。
一度、実家の車で土曜日に五條市に向かったのですが、残念ながらその日のバスは既に走り終わっていました・・。
そこで後日、平日に大阪に再開発ウォッチにいった帰りにJRで五條市に向かい、改めて撮ってきた次第です。
ちなみに、8月中にはこのようなイベントも開催されたようです。
まあ、奈良交通のボンネットバスはこの路線を走行した歴史はないという野暮な突っ込みはさておき、なかなか面白そうなイベントでした。
ちなみに私が今回路線バスに乗車したのは9月1日だったので、既にイベントは終わっていました・・
これが今回乗車したバスの路線です。
専用道は霊安寺から城戸までの約9kmの区間となっています。
並行する道(黄色で表示)と比べると、より専用道の方が直線的であることが分かります。
15時35分、最前列の席を確保するため、始発の五條バスセンターからバスに乗車。
廃止が近いとあって、10人くらいの同業者の方が来ていましたが、20分前から並んだ甲斐あって最前列をゲットできました。
五條バスセンターを出ると、次はJR五条駅に停まります。ちなみに、市町村名は五條市で、バス停も五條ですが、JRの駅名は「五条」です。奈良交通では市町村名に合わせて「五條駅」と呼んでいるようですね。
こちらがJR五条駅です。以前はここから国鉄・JRバスが出ていました。
結構こじんまりとした駅舎ですが、駅員さんが常駐しており、構内もかなり広いです。
五條市には野球で有名な智弁学園があるため、学生の利用が多く、乗降客も多く見かけました。
五条駅を出たあと、バスは五條市の中心部を走ります。
吉野川を渡り、旧道に一度迂回したあと、県立五條病院前を通過、いよいよ霊安寺から専用道へと入りました。
こちらが専用道の入り口です。国道168号線を南に向かって走っていると、唐突に現れます。
バス専用なので一般車は立ち入り禁止ですが、下校途中の中学生や犬の散歩中のおばさまなど、結構歩行者は見かけました。
あと、明らかに専用道を通らないと入れない場所に駐車場付きの民家も建っているので、地元の車についてはある程度の立ち入りは黙認されているようです。
田舎の風景の中を、バス道は真っ直ぐ続いています。
地形が平坦な五條市街付近では一般道との平面交差も見られます。
以前は踏み切りもあったそうで、バスが優先だったらしいのですが、現在は一般車の横断が優先されているそうです。
(ただ、今回の映像では地元の車が譲ってくれる様子も写っています)
平坦な地形は専用道生子バス停の辺りで終わります。
ここから南は山がちになるため、トンネルや橋が多用されています。
ちなみに専用道生子バス停の近くにはこのような古びた看板が残っています。
国鉄時代の名残です。
専用道生子バス停から南側を見た風景です。トンネルの入り口の上を横切る道路が国道168号線で、こちらは大きく山を迂回するルートとなっています。国道上にも「生子」バス停が存在します。
トンネルを抜けると、専用道は緩やかなカーブを描きながら谷底を進んでいきます。
この写真は並行する国道から撮ったものですが、かなり高低差があることがわかります。
沿線風景も山村らしいものへと移り変わっていきます。
今どき立派な茅葺屋根のお家が建っていて驚きました。
こういった断面の小さなトンネルも単線鉄道用ならではですね。
この日は雨模様だったので、トンネルの出口が霞んでいて幻想的でした。
また、上の動画中では、トンネル内で野うさぎに出くわして、しばらく追いかけっこする様子も写っています(動画の18:10頃)。
20分ほどの専用道走行を経て、専用道城戸バス停に停車(写真は折り返しのバスから撮ったので反対方向が写っています)。途中一度も停車しませんでしたが、ここで専用道は終点なので、殆どのファンの方々がここで降りていきました。
とはいっても、この後にこの専用道を走るバスは折り返しの便しかありませんから、彼らはここで数十分待つことになります。
城戸から下道に下り、県道20号線を走り3分ほどで終着の西吉野温泉バス停に到着しました。
西吉野温泉バス停の辺りは丹生川という川が流れており、なかなかに風光明媚な場所でした。
バス停の名前のとおり、温浴施設である「西吉野きすみ館」という施設がありましたが、バスの折り返しまで15分ほどしか無かったので、入浴はしませんでした。
その後、折り返しのバスで元きた道を戻り五条駅で下車、JRで実家に戻ったのでした。
行きも帰りも、平日夕方の時間帯にもかかわらず専用道内のバス停では一度も人の乗降はありませんでした。専用道を経由する路線バスが無くなるのも已む無しということですね・・。
かなり長文になってしまいましたが、実は五新線についてはバス乗車前に少し廃線跡を探訪しましたので、それは次回の記事で紹介することにします。
では、今週も一週間、頑張りましょう。