(本頁は「男鹿三山の花図鑑(4)晩春編」の続きです。)
男鹿の山では、オオサクラソウの花が終わると、樹木の若葉が茂り、林は少し暗くなる。
この時期、秋田の他の山では花がめっきり少なくなるが、男鹿では必ずしもそうではない。
ランの仲間やデワノタツナミソウが最盛期を迎えるせいだろうか。
なお表題は「初夏編」としたが、本項では五月下旬以降、六月いっぱいに咲く花を扱ってみた。
空梅雨の年を除けば、この時期の男鹿は雨に祟られることが多い。
特に山頂部はいつも霧に包まれている印象がある。
ムラサキヤシオ Rhododendron albrechtii
中腹では五月連休明け頃から散発的に咲いているが、本山山頂近く南東斜面の大群生地では、
開花が五月下旬以降なので、初夏の花とした。
2020/05/28 ムラサキヤシオ
2019/05/14 ムラサキヤシオ 2020/05/28 サワハコベ
サワハコベ Stellaria diversiflora
ウゴツクバネウツギ Abelia spathulata var. stenophylla
2019/05/29 ウゴツクバネウツギ
2019/05/29 キンランとウゴツクバネウツギ
キンラン Cephalanthera falcata
数は少ないが、運が良ければ道端で出会える。
よく似た白いタイプも見かけ、ササバギンランかと思ったら、工藤茂美先生によると、
ユウシュンランとのこと(写真は省略)。
ミヤマカラマツ Thalictrum filamentosum var. tenurum
山頂部や渓谷沿いの林中に生育している。
2020/06/01 キンラン 2020/05/28 ミヤマカラマツ
エビネ Calanthe discolor
2020/05/28 エビネ 2020/05/28 ヤマシャクヤクの群生
ヤマシャクヤク Paeonia japonica
よく目立つ花だが、雨の多い時期に咲き、しかも開花している(蘂が覗いて見える)のは僅か二、三日と短命なので、
開花シーン遭遇は運次第。男鹿の山には比較的多いが、山盗りは厳に慎むこと。
ヤマシャクヤク 2020/06/01
イチヨウラン Dactylostalix ringens
中腹より上に多い。意外に地味なので見過ごしやすい。
ギンリョウソウ Monotropastrum humile
ツツジ科、腐生植物。男鹿には無いものと思っていたら、2020年、山頂部で見つけた。
2020/05/28 イチヨウラン 2020/06/13 ギンリョウソウ
ホウチャクソウ Disporum sessile
かつてユリ科だったが、現在はイヌサフラン科、前頁のチゴユリと同じ属。
次のナルコユリ類に似た雰囲気だが、分類学上は離れ離れになってしまった。
2020/06/01
ミヤマナルコユリ Polygonatum lasianthum
かつてユリ科だったが、現在はキジカクシ科、アマドコロ属。
2020/06/09
ユキザサ Maianthemum japonicum
かつてユリ科だったが、現在はキジカクシ科、マイヅルソウ属。
なお写真は割愛するが、男鹿三山にはマイヅルソウも多い。
ギョウジャニンニク Allium victorialis subsp. platyphyllum
かつてユリ科だったが、現在はネギ科。
かつて男鹿三山には多いとされたが、乱獲が祟り、最近はさっぱり見かけない。
2020/06/01 ユキザサ 2020/06/13 ギョウジャニンニクの花
トケンラン Cremastra unguiculata
次のサイハイランと同属。「杜鵑蘭」と書くが、
これは花につく紫色の斑点を鳥類のホトトギス(杜鵑)の胸から腹部にある斑紋に喩えたとされる。
分布域は限られ、開花は一週間程度と短命なので見過ごされることが多い。
秋に出葉して越冬。葉は花の頃に枯れだすという変わった生活史を持つ。
2020/06/13 トケンランの群生
2020/06/13 トケンラン 2020/06/21 サイハイラン
サイハイラン Cremastra appendiculata
林の中に比較的多いラン。一見、枯れたような形と色合いだが、近づいて下から見ると意外に綺麗だ。
トケンランよりも少し遅れて咲く。
コケイラン Oreorchis patens
毛無山では中腹より上で多く見かける。
場所によってはデワノタツナミソウの花カーペットの中から咲くと言う珍しい花風景を呈する。
コケイラン 2019/06/15 デワノタツナミソウ 2019/06/15
デワノタツナミソウ Scutellaria muramatsui
分布域は新潟以北の本州日本海側の山地だが、最初に発見されたのは男鹿と聞く。
毛無山や真山の登山道沿いでは、青紫の絨毯を敷き詰めたように咲き、
これはオオサクラソウと並び、男鹿を代表する花風景と思われるが話題になることは無い。
初夏に一斉開花した後、秋遅くまで残り花を見かける。
2020/06/21 デワノタツナミソウ群生
スズムシソウ Liparis makinoana
希少種なので、生育場所は内緒。もし見かけても採取は言語道断(盗っても庭での栽培維持は困難)。
そっとしておいて欲しい。
2020/06/13
ジガバチソウ Liparis krameri
コバノフユイチコ(マルバフユイチゴ) Rubus pectinellus
地べたを這うように生えるが、一応、低木。実は冬ではなく、真夏に成熟する。
フユイチゴの名は、実に関係なく、常緑葉で冬に枯れないことによる。
2020/06/21 ジガバチソウ 2019/06/15 コバノフユイチゴ
アオヤギソウ Veratrum maackii var. parviflorum ?
シュロソウ Veratrum maackii var. japonicum ?
男鹿の山林には、山麓から山頂まで、↓のようなシュロソウ科の仲間がいっぱい生えている。
図鑑を見ると、花が紫褐色のものをシュロソウ、黄緑のものをアオヤギソウと呼んでいるが、
ここには両方が混生しており、中間的な色合いのものも有る。何と呼んだらいいものやら。
アオヤギソウ? 2020/06/21 シュロソウ? 2020/06/21
この時期、咲く花としては他にニッコウキスゲ(一説ではトビシマカンゾウ)がある。
毛無山の海に近い斜面に有り、道路から辛うじて見えるものの、場所が急傾斜の岩場なので近寄れず、
いまだに確認できていない。
「(6)盛夏編」へ続く。
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