モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

男鹿三山の花図鑑(5)初夏編

2021年02月23日 | 男鹿の花図鑑

(本頁は「男鹿三山の花図鑑(4)晩春編」の続きです。)

男鹿の山では、オオサクラソウの花が終わると、樹木の若葉が茂り、林は少し暗くなる。
この時期、秋田の他の山では花がめっきり少なくなるが、男鹿では必ずしもそうではない。
ランの仲間やデワノタツナミソウが最盛期を迎えるせいだろうか。
なお表題は「初夏編」としたが、本項では五月下旬以降、六月いっぱいに咲く花を扱ってみた。
空梅雨の年を除けば、この時期の男鹿は雨に祟られることが多い。
特に山頂部はいつも霧に包まれている印象がある。


ムラサキヤシオ Rhododendron albrechtii
中腹では五月連休明け頃から散発的に咲いているが、本山山頂近く南東斜面の大群生地では、
開花が五月下旬以降なので、初夏の花とした。


2020/05/28 ムラサキヤシオ



2019/05/14 ムラサキヤシオ                         
2020/05/28 サワハコベ
 


サワハコベ  Stellaria diversiflora

ウゴツクバネウツギ Abelia spathulata var. stenophylla


2019/05/29 ウゴツクバネウツギ



2019/05/29 キンランとウゴツクバネウツギ




キンラン Cephalanthera falcata

数は少ないが、運が良ければ道端で出会える。
よく似た白いタイプも見かけ、ササバギンランかと思ったら、工藤茂美先生によると、
ユウシュンランとのこと(写真は省略)。

ミヤマカラマツ Thalictrum filamentosum var. tenurum

山頂部や渓谷沿いの林中に生育している。

2020/06/01 キンラン                             2020/05/28 ミヤマカラマツ
 


エビネ Calanthe discolor

2020/05/28 エビネ                               2020/05/28 ヤマシャクヤクの群生
 



ヤマシャクヤク Paeonia japonica

よく目立つ花だが、雨の多い時期に咲き、しかも開花している(蘂が覗いて見える)のは僅か二、三日と短命なので、
開花シーン遭遇は運次第。
男鹿の山には比較的多いが、山盗りは厳に慎むこと。

ヤマシャクヤク 2020/06/01



イチヨウラン Dactylostalix ringens

中腹より上に多い。意外に地味なので見過ごしやすい。

ギンリョウソウ Monotropastrum humile
ツツジ科、腐生植物。男鹿には無いものと思っていたら、2020年、山頂部で見つけた。

2020/05/28 イチヨウラン                             2020/06/13 ギンリョウソウ
 



ホウチャクソウ Disporum sessile

かつてユリ科だったが、現在はイヌサフラン科、前頁のチゴユリと同じ属。
次のナルコユリ類に似た雰囲気だが、分類学上は離れ離れになってしまった。

2020/06/01



ミヤマナルコユリ Polygonatum lasianthum

かつてユリ科だったが、現在はキジカクシ科、アマドコロ属。

2020/06/09



ユキザサ Maianthemum japonicum

かつてユリ科だったが、現在はキジカクシ科、マイヅルソウ属。
なお写真は割愛するが、男鹿三山にはマイヅルソウも多い。

ギョウジャニンニク Allium victorialis subsp. platyphyllum
かつてユリ科だったが、現在はネギ科。
かつて男鹿三山には多いとされたが、乱獲が祟り、最近はさっぱり見かけない。

2020/06/01 ユキザサ                             2020/06/13 ギョウジャニンニクの花
 



トケンラン Cremastra unguiculata

次のサイハイランと同属。「杜鵑蘭」と書くが、
これは花につく紫色の斑点を鳥類のホトトギス(杜鵑)の胸から腹部にある斑紋に喩えたとされる。

分布域は限られ、開花は一週間程度と短命なので見過ごされることが多い。
秋に出葉して越冬。葉は花の頃に枯れだすという変わった生活史を持つ。

2020/06/13 トケンランの群生

 


2020/06/13 トケンラン                           2020/06/21 サイハイラン

 



サイハイラン Cremastra appendiculata

林の中に比較的多いラン。一見、枯れたような形と色合いだが、近づいて下から見ると意外に綺麗だ。
トケンランよりも少し遅れて咲く。

コケイラン Oreorchis patens
毛無山では中腹より上で多く見かける。

場所によってはデワノタツナミソウの花カーペットの中から咲くと言う珍しい花風景を呈する。

コケイラン 2019/06/15                                                                                   デワノタツナミソウ 2019/06/15
 



デワノタツナミソウ Scutellaria muramatsui

分布域は新潟以北の本州日本海側の山地だが、最初に発見されたのは男鹿と聞く。
毛無山や真山の登山道沿いでは、青紫の絨毯を敷き詰めたように咲き、
これはオオサクラソウと並び、男鹿を代表する花風景と思われるが話題になることは無い。
初夏に一斉開花した後、秋遅くまで残り花を見かける。

2020/06/21 デワノタツナミソウ群生



スズムシソウ Liparis makinoana
希少種なので、生育場所は内緒。もし見かけても採取は言語道断(盗っても庭での栽培維持は困難)。
そっとしておいて欲しい。


2020/06/13




ジガバチソウ Liparis krameri

コバノフユイチコ(マルバフユイチゴ) Rubus pectinellus
地べたを這うように生えるが、一応、低木。実は冬ではなく、真夏に成熟する。
フユイチゴの名は、実に関係なく、常緑葉で冬に枯れないことによる。

2020/06/21 ジガバチソウ                           2019/06/15 コバノフユイチゴ
 



アオヤギソウ Veratrum maackii var. parviflorum
シュロソウ Veratrum maackii var. japonicum ? 
男鹿の山林には、山麓から山頂まで、↓のようなシュロソウ科の仲間がいっぱい生えている。

図鑑を見ると、花が紫褐色のものをシュロソウ、黄緑のものをアオヤギソウと呼んでいるが、
ここには両方が混生しており、中間的な色合いのものも有る。何と呼んだらいいものやら。
 

アオヤギソウ? 2020/06/21                            シュロソウ? 2020/06/21
 


この時期、咲く花としては他にニッコウキスゲ(一説ではトビシマカンゾウ)がある。
毛無山の海に近い斜面に有り、道路から辛うじて見えるものの、場所が急傾斜の岩場なので近寄れず、
いまだに確認できていない。


(6)盛夏編へ続く。
 


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