お盆が近づくと、里山のあちこちでキツネノカミソリが咲き出す。
私の家(秋田市)の近くでは、墓地にも群生しており、
地面からにゅっと花だけ突き出して咲くので、ちょっと薄気味悪く感じることもあるが、
新鮮な花の群生に立ち会った時などはしばし立ち止まって眺めてしまう。
近縁種のヒガンバナは花が終わると、徐々に葉を伸ばすが、
キツネノカミソリは花が終わってもなかなか葉を出さない。
こちらは早春、雪が融けてから、一斉に葉を伸ばす。
名前は葉の形をカミソリに喩えたことは知っていたが、何故キツネなのだろうか。
語源由来辞典によると、
『キツネノカミソリは、花を「狐火」、葉を「日本剃刀」に見立てた名前。
昔、正体の分からない明かりは、キツネが口から吐き出す「狐火」と信じられていた。
森陰の何もない場所に突如現れる、葉のついていない炎のような花は、「狐火」に見立てられた。
キツネノカミソリの葉は、先が丸みを帯びた線形で、日本剃刀の刃に似ている。
そのように見立てられた、花の「キツネ」と葉の「カミソリ」を合わせて、
「キツネノカミソリ」という名になった。』
とあった。
キツネノカミソリは、秋田では沿岸部で多く見かけるが、内陸ではほとんど見かけない。
特に横手湯沢地方では皆無だ。
これは冬場の積雪が影響しているのかもしれない。
横手湯沢地方では、冬場の積雪量が2mを越すことも珍しくない。
そうなると四月下旬まで雪が残ることもある。
キツネノカミソリのライフスタイルは早春に葉を展開し、
初夏までの限られた期間に光合成をして、球根に栄養を蓄える。
春になっても、遅くまで雪が残っていたら、出葉に遅れをとることになる。
秋田の豪雪地帯にこの花が無いのはそのせいかなと思う。
北海道にはキツネノカミソリの野生品は無いようだ。
それならば野生品は本州ではどこまで分布しているのだろうか。
以前、春先に青森の深浦町へフクジュソウを見に行った折り、
林の下におびただしい量のキツネノカミソリの芽出しを見ている。
たまたま8月18日、同地を掠めた際、それらが一斉に開花していた。
津軽半島や下北地方は未調査なので、これが北限かどうかは何とも言えないが、
その咲きざまは実にみごとだった。
本編のキツネノカミソリは全て青森県深浦町で見たものである。
同じ深浦町の松神地区にあるお社に立ち寄ったら、
そこでは林(カラスザンショウ)の下がキツネノカミソリに覆われていた。
こちらのキツネノカミソリは日陰地のせいか
花色がやや薄いように感じた。
以上。
深浦町のキツネノカミソリ 凄いね。
私はまだ見たことがありません。
下北には自生しているのだろうか。 ピエロ
「まだみたことがありません」
貴重な情報ありがとうございました。
キツネノカミソリは日本海側はけっこう北まで生えています。
沿岸部は対馬暖流の影響で春が早くやって来ます。
そういう場所は早春にいち早く葉を茂らせるキツネノカミソリにはいい場所なんでしょうね。