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『生死』道元
「生死の中に佛あれば生死なし、また曰く、
生死の中に佛なければ、生死に惑わず。」
生死と一つの処は、生死を認める者が無い。
生死を認める者が無い処は、生死に惑わず。
見る主体と客体が一つの処は、認識到らず。
未だ対象を認めぬ処は、認識する我もない。
仏性は認識以前の処ゆえ、主体客体が未分。
感覚には感覚者が無く、一切は不二である。
認識には認識者が在り、彼と此を分別する。
法は未だ認識到らぬ、我と事実の同時成道。
右が滅して左を生じ、左が滅して右を生ず。
「い」が滅し「ま」を生ず、今は一時の位。
一切の生じ滅す処に二元なく、生滅は一如。
生滅の始めを知らず、生滅の終りを知らず。
生滅と一つの処に生滅は無く、不生、不滅。
生に在り生を認めず、滅に在り滅を認めず。
認識未だ到らぬ処ゆえ、生死を知る者なし。
法は因果一如の、未だ認識到らぬ本来面目。
一得一失の対を絶す処ゆえ、二見が立たず。
対象を認める時を同じく、認める我を生ず。
彼と此の狭間に、時間と空間の幻想が宿る。
分別が二つを隔て、比較が時空を虚構する。
二見は、記憶に住する我の念処にのみ立つ。
事実は常に一時の位に在り、我は未だ不生。
神羅万象と不二ゆえ、因果一如の同時成道。
因果一如に、只今、本日、一生の別は無い。
今日の縁: 「 日面仏、月面仏 」
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