1. 「柴苓湯」= 小柴胡湯+五苓散
風邪がこじれて熱気が中にこもると、身体のやや深い所、「胆のう」あたりに停滞していると考えます。
「胆のう」という場所は、「表」=体表面、と「裏」=胃腸のあいだ、「半表半裏」という言い方をします。
「表」と「裏」の「あいだ」という中途半端な場所に熱気が詰まっていると考えます。
「胆のう」に熱が詰まると、口が渇いて、苦くなったり、ネバついたりします。
「胆のう」のとなりの「胃」にも影響して、食欲が無くなったり、胃が痞えたりします。
中途半端な深さに熱気が停滞するので、身体が熱ばんで重だるくなります。
中途半端な深さの熱気が、身体を出入りするので、眠りが浅く何度も目が覚めます。
この方の場合は、「半表半裏」の熱気が、膀胱などの泌尿器系にも影響して、小便の出が悪くなったのでしょう。
そのために、下半身の水分の動きが悪くなって、浮腫んだり、下半身が重だるくなっています。
『傷寒論』では、「半表半裏」=「胆のう」に熱気が停滞したときには、「小柴胡湯」という処方を用いることになっています。
主役の「柴胡」が、「胆のう」の熱気を冷まします。
「小柴胡湯」に、膀胱などの熱気を取りつつ水分を利尿する「五苓散」を加えた「柴苓湯」の煎じ薬を1週間分、おあげしました。
1週間で、身体の熱感が引いて、身体が軽くなってきました。
さらに1週間分で、浮腫みが無くなって、お腹が空いてきました。
体調がほぼ元どうりになったので、治療を終わりました。
2. 半夏瀉心湯+桔梗・石膏
治療は、「半表半裏」の熱を取る、「小柴胡湯」の粉薬を2週間
これで身体のしんどさ、熱感は無くなったが、顔の逆上せが続いています。
新たに鼻の奥と目の周りの重たい感じがします。
鼻の奥で、イヤな膿の臭いがしてきました。
鼻をかむと黄色い粘い鼻汁が出ます。
大便が緩いがスッキリ出ない。
治療 半夏瀉心湯+桔梗・石膏
この方は以前から、口内炎・肩こり・逆上せ・胃もたれ・不眠などで体調の悪いときに、「半夏瀉心湯」の粉を飲んでおられました。
「半夏瀉心湯」は、胃腸が冷えて弱って、胃の熱気が上に追い上げられて、身体の上部に熱気が停滞したときの処方です。
胃の冷えから、食欲不振・下痢・吐き気などが起こり、上部の熱気のせいで、胸焼け・胃の痞え・口内炎・不眠などが起こります。
「半夏瀉心湯」は、主薬の「人参」が胃を元気にし、「乾姜」で胃を温める。
逆に「黄連」「黄芩」で上部の熱気を冷まします。
「半夏」は身体の上下でバラバラになった、冷えと熱を交流させます。
下は温め、上は冷やすのを一度に行う処方です。
「小柴胡湯」で「半表半裏」の熱気はいちおうは取れたけど、粉薬を使ったから効果が弱くて、その間に胃は冷えて弱り、逆に身体の上部、この場合は、鼻から肺につながる場所に取り切れない熱気が詰まって軽い蓄膿になったのでしょう。
鼻の奥に詰まった熱を冷ますために、「桔梗」と「石膏」を加えました。
「桔梗」「石膏」の組み合わせは、咽喉から肺の熱を冷まし、「桔梗」は化膿症を治す効果があります。
半夏瀉心湯+桔梗・石膏の煎じ薬を7日分、お上げして、顔の逆上せや蓄膿は無くなって、お腹がすっきりして、やっと体調は元に戻りました。