従業員が仕事と介護を両立できる職場環境を作ると、事業主(企業、個人)が国から一律60万円をもらえる助成金制度を厚生労働省が始めたところ、実際に取り組んでいるかどうか不明の事業主からも申請が多数あり、2カ月半で抜本的な見直しを余儀なくされた。従業員の介護休職取得に関係なく申請できる仕組みだったことがこうした申請の原因になったとみられる。全国で大阪の申請件数が最多とみられるといい、専門家は申請基準の甘さを指摘している。
■虚偽の懸念浮上
この制度は今年度に新設された「介護支援取組助成金」。従業員が実際に介護のために休職したかどうかは関係なく、従業員が介護と仕事を両立できる環境を整えた事業者が対象だ。
厚労省は4月に同助成金の制度を実施。介護休業規定を作成し、従業員に対して家族の介護に関するアンケートを実施▽介護に直面する従業員への研修▽事業所内に相談窓口の設置と周知-の取り組みを実施したと申請した事業主に対し、60万円を支給した。
ただ、申請条件に従業員の介護休職取得は含まれていない。このため実際に従業員が介護休職を取りやすい取り組みを実施していないのに、そのように装う事業者による虚偽申請の懸念が浮上した。
事業主は各都道府県の労働局に申請する。大阪労働局によると、大阪府内の申請件数は4月は47件だったが、5月は1109件に急増。6月に入ると毎日150件前後の申請があり、17日までに計3千件を超えた。
国がこの制度で当初予算で計上したのは6億2千万円(約千件分)。厚労省は申請件数を公表していないが、関係者によると、東京都内では6月初めの時点の申請件数は千件前後で、大阪の多さは際立っているという。
■はや制度見直し
厚労省によると、従業員数が1~2人や設立間もない企業による申請が目立ち、
従業員の介護支援 実体問わぬ助成、大阪が申請突出