ヒミズ

ヒミズ

園子温監督はやはりすごい。

「ヒミズ」を見て、私の評価の中で園子温の最高傑作になった。「愛のむきだし」を想起させ、さらに強力なメッセージを刻み込んだ作品。この映画を見てしまうと、前作の「恋の罪」が駄作に思えてしまうほどだ。

～～～～～～
ここからは映画の内容に触れてしまうので、これから見たいと言う方は読まない方が良いです。
～～～～～～

東北の被災地。

全てを失って浮浪の生活を余儀なくされている人多数の中、残されたさえない貸しボート屋で暮らす中学生の青年、住田。父親は借金まみれ、母親も遂には愛人と家を出ていき、中学生にして、一人取り残される。

浮浪の仲間に囲まれながら、貸しボート屋を継ぐ青年はそれ以上にも、それ以下にもなれず、またなろうともせず、絶望に打ちひしがれながら、やけっぱちな生活をすごす。父親は時折来ては金をせびり、おまえが死ねば保険金が入るから死ねと言っては、殴る蹴るの暴行。

しかし住田に心寄せるクラスメイトの女子中学生の田沢は、どん底にいる住田を明るく励ます。住田の発言を常に支持し、紙に書き残しては壁に張り、住田に心酔していく。しかし住田は心を開かず、田沢をうざいと感じ、殴る蹴るの暴行。しかし田沢はめげず、ますます住田に心を寄せる。

そんな田沢も親から見捨てられた一人。いつ約束したのか、母親は田沢の絞首刑台を作る。完成した暁には、その絞首刑台で死ぬと約束していたと解釈できる。田沢は、そんな親から逃げ、住田の貸しボート屋に飛び込む。

そんなある日、住田は父親の頭をセメントのブロックで殴り殺してしまう。殺人者になってしまった住田は、自分の未来はないものと諦め、自暴自棄になりながらも、せめて社会に傷跡でも貢献したいと考え、出刃包丁を紙袋に入れて、悪人探しを始める。その悪人を殺すために。。。しかし彼の思いは叶わない。運命のいたずらだ。ついに住田は自殺を考え始める。

絶望、怒り、悲しみ、嘆き、全ての苦悩がこの若き青年を覆う。そんな住田に暴行を受けながらも、ひたむきに彼を支え、体当たりで住田を愛する田沢。そして結末は。。。。

被災地で残され、全てを失った青年と女子。体当たりで愛をもってぶつかっていく二人の青春物語。最後は愛に満ちあふれ、生きてゆく希望をもって走るラスト。

私は、この情熱的で純粋な愛の溢れんばかりの映像に涙を流してしまった。どんなことがあっても愛があれば、困難も苦悩も全て二人で乗り越えられる。素晴らしいじゃあないか。

園子温は被災地に愛を送り希望を与えた。やはり園子温は良い。おすすめの映画です。