ブリキのピエロ

ブリキのピエロ

おいらは
ブリキのピエロ

サーカスで
売られ売り残って
捨てられた

ブリキのピエロは
雨露に晒され
半分錆びていたが
持ち帰った家主が
いた

俺はその夜
キコキコ言う
ブリキのナイフで
家主たちを
血祭りにあげた

おいらは警察には
捉まらなねえ
おいらの脳みそは
腐った鯖の油だ

一家は無理心中と
報告された
行く先々で不吉な
出来事が起こったが
おいらは無罪放免さ

だっておいらは
ブリキのピエロ
おいらの脳みそは
腐った鯖の油だ

暗い夜道に
鉄の軋む音がしたら
おいらが来たって
合図さ

さあ、殺人劇のはじまりだ

クローズド

クローズド

私の友人は
毎月、旅行雑誌やグルメ雑誌など
こまめに買っては
スキャナーで読み込ませ
データベース化するのを趣味としていた

しかしそれが活用されることは
ほぼなかっただろうと推測される
何故なら彼はほとんど家から出ず
休日なども一人家に篭って黙々と
その作業以外に余念がなかったからである

ブリキの殺人者

ブリキの殺人者

たくさんのブリキのおもちゃの中に
潜み込んだブリキの殺人者がいる

たくさんのブリキのおもちゃが動き出し
皆が浮かれ騒ぐ笑いの中で
ブリキの殺人者はまるでショーでも
始めるかのように人を殺し始める

ブリキの殺人者はサイコパスで
殺される人の心を玉手箱を開けるように
手に取って愛でては猟銃で吹き飛ばす

この一連の連続殺人劇は
まるで遊園地の乗り物が華やかに
回り出すように一人また一人と
無残な血だらけのソーセージと
なっていく

ブリキの殺人者は
ゼンマイ仕掛けで軽快で滑稽なほどに
ユーモラスに殺人を働く
命の尊さなどブリキの殺人者には
理解不能だ

ゼンマイが周り切って
その軽妙な音楽が途絶えるまで
彼の殺人は続く
そのあまりの清々しさに
貴婦人たちは喝采をゼンマイの殺人者に
送り続けるだろう

そして全ての殺人が完了した時
ゼンマイの殺人者はタップを披露するのさ

アダルトビデオ

アダルトビデオ

その女は
女友達と南方の島へ
海外旅行へ行った

女友達はやり手で
その島へは何度も
来ており慣れていた

女は
初めての海外旅行で浮かれ
女友達が開いたパーティで
若い美男子に口説かれた

その美男子は
愛している、付き合いたいと
言って、one night過ごそうと
女を誘った

記念に撮りたいと言って
男はスマフォで動画を撮り始め
女は断るいとまも無く
男に押し倒されセックスに興じた

朝、女はベットから起きた
その時、もう男の姿は消えていた
今の女に男が動画の代わりに
多額の金を手にして
その動画がSNSのアダルトサイト
に投稿されているとは
つゆも知らずに

スペシャリストとゼネラリスト

スペシャリストとゼネラリスト

私はどちらかと言えばスペシャリストである

どちらかと言えばと言ったのは、

単なる消去法で

私にはゼネラリストの欠片もないのであり

必然的にスペシャリストの方が残っただけの話である。

私にはゼネラリストになりうる経験を全く与えられずに生きてきた。

私に少しでもこのマネジメントのようなゼネラリストの欠片の経験でもあったなら

もっと楽に生きてこれたであろう。

私の尊敬する兄貴分曰く、人はどこかでゼネラリストに脱皮しないといけないとのこと。

あと余生僅かという歳になって、かような状況にあらば、ある意味、無惨である。

1円の価値もない男

1円の価値もない男

だって虚数だから。。。

冬眠生活

冬眠生活

今年は暑いですねえ。
暑くて夏バテして食欲減衰の諸君。
気にすることはありません。
秋には反動で大いなる食欲煩悩が復活し
冬には冬眠生活に入れます。
気にすることはありません。
しかし何でですかねえ、人間諸君。
一年中活動して、そんなせかせかして生きて
しかも多くの場合は大分長生きをなさる。
我々、自然界で生きている熊には
人間様の気持ちがさっぱり理解できません。
熊諸君の生活を人間様も見習った方が良いと思いますがね。

起き上がり小法師の脅威

起き上がり小法師の脅威

双手を挙げて満面の笑みで
動体は赤く丸く重力に逆らって
仁王立ちとなり
倒しても倒しても
満面の笑みを持って起き上がってくる
起き上がり小法師
赤ちゃんには間違いなく脅威である
そしてトラウマとなること必然である
この絶大なる自信の笑みは
一体何処からくるのだろうか
恐るべしである

仕事と私

仕事と私

何故、仕事をしなければならないのか。

かつて松田優作が夏目漱石原作、森田芳光監督の映画「それから」で主人公長井代助を演じた時に

大学の同級生の平岡が銀行員を首になった話を父親から何故かと尋ねられて

「食うために働くからでしょ」との台詞があり、確かに食うために働くだけの仕事なら働く意味は

ないのかなと思ったり、松田優作が亡くなる直前に出演したトーク番組では、

仕事よりも個人の生活や人生の方がずっと長い訳ですから、そこで如何に過ごすかによりますよね

とかの話を聞くと、所詮、仕事は人生のある一部でしかないのだなと思ったりして、

もうちょっと自分の生活とか人生とか言う側面の方をもっと大切にしなくてはいけないよなと

思ったりして、今、丁度その分岐点に立っているのかなと思ったりしている。

私にとって仕事とは何か。今の私の宿題になっている。

残された人生

残された人生

私は年老いた老人だ

男性にも
更年期障害なるものが
あるらしく
もう女は抱けない

残された人生は
何事もない平穏な
日常をつつがなく
過ごしたいと思う

しかし世の中は
なかなか私の思いどおりに
事は運ばない
私にまだ働けと言う
もう十分なのに

私は年老いた老人だ
もう十分に生きた
思い残すことはない