長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』

2020-04-03 | 映画レビュー(て)

 劇中でセス・ローゲンとジェームズ・フランコがなんとも楽し気に『スモーキング・ハイ2』の構想を話し合っているのだが、このノリが『ディス・イズ・ジ・エンド』の原点だったのではないだろうか。セス・ローゲンとジェイ・バルチェルがジェームズ・フランコの豪邸で開かれたパーティに行くと、ハルマゲドンが起こり、生き残ったハリウッドスターたちは生存をかけて籠城する…どう考えても稽古帰りの下北の居酒屋で考えたようなプロットにコメディスターが終結。豪華ゲストが景気良く惨死していくのはローゲンの人徳か。ほとんど内輪ウケ映画だが、実名で演じる彼らのバカ騒ぎはファンであればなおさら可笑しく、監督まで務めたローゲンは意外やしっかりまとめており、グダグダな読後感がない。ジャド・アパトウ軍団から独立し、いよいよ新たな主流派になってきたのではないか。
 彼らと一緒に飲み会で盛り上がっているような気分になれるので、ファンにはオススメ。


『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』13・米
監督 セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ
出演 ジェームズ・フランコ、ジョナ・ヒル、セス・ローゲン、ジェイ・バルチェル、ダニー・マクブライド、エマ・ワトソン
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『テイク・シェルター』

2020-03-26 | 映画レビュー(て)

 統合失調症に苦しむ男を描いた本作はなかなかその正体を現さない複雑さと多層性が魅力だ。果たしてこれは恐怖映画なのか、難病映画なのか、はたまた黙示録的SF映画なのか。僕はこれを難病を抱えた男とその家族の物語と見た。お金、仕事、子供、そして自分と同じ年齢で精神を病んだ母親の影…様々な要因で人は追い詰められていく。マイケル・シャノンのヒリヒリするような焦燥と孤独は、観客を安全な場所に置いておかない。

 これがデビュー作となったジェフ・ニコルズ監督は次作『MUD』と全くジャンルが違うものの、同様に70年代映画との地続きを感じさせ、本作は特にポランスキー映画の影響が色濃い。主人公を苦しめる悪夢のヴィジュアルは出色の怖さであり、ラストシーンは見る者の心を静かにざわつかせるだろう。以後、アメリカ映画の継承者として充実のフィルモグラフィを形成していく。注目監督の1人だ。


『テイク・シェルター』11・米
監督 ジェフ・ニコルズ
出演 マイケル・シャノン、ジェシカ・チャステイン
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『天気の子』

2019-08-08 | 映画レビュー(て)

2017年以後、アメリカ映画には親の存在が希薄に見える。いや、物語上、確かに登場するのだが、いずれも人生に迷い、疲れ、時には子供を食い潰そうとすらする理想とは程遠い姿なのだ。そこに規範なき時代を生きる事の困難さが伺い知れる。

新海誠もそんな時代の匂いを敏感に嗅ぎ取っているように思う。新作『天気の子』にはついに大人が1人も出てこない。主人公・帆高は離島の自宅から家出し、東京にやって来るが両親についての言及はなく、不和の理由も明かされない(16歳が家出をする理由なんて、僕は想像もできない齢になってしまった)。

帆高は偶然知り合った編集者・須賀の経営する事務所兼自宅に転がり込む。結婚に失敗し、自暴自棄に生きる須賀と帆高は劇中、何度も「あの2人、そっくり」と言及される。須賀は子供のまま大人になってしまった人なのだ。彼の下で働く姪の夏美は社会にコミット=大人になるため就職活動に明け暮れるが、それ以上の理由を持たないため、この御時世にも関わらず一向に内定がもらえない。

ヒロインの陽菜に至っては親と死別している。まだ10代の彼女は小学生の弟を食べさせるため体を売ろうとしていた。2人が住むのはまるで都会に埋もれたかのような小さなアパートだ。身を寄せ合った帆高は「3人で暮らそう」と言うが、公権力がそれを許さない。寄る辺を失くした彼らがなけなしの金でラブホに泊まり、ジャンクフードでパーティを開くシーンに涙が出た。

規範なき世界に大人はいらない。世界を救う必要もない。イノセンスのためなら、世界が滅んだっていい。違和感の強い拳銃のプロット、映画的快楽に乏しいカーチェイス、幼稚な描写(おっぱいから離れられないのか?)、そして劇伴やセリフで語り過ぎるアニメ監督らしからぬストーリーテリングなど、未だ粗削りな新海誠だが、ますます“純化”しているのは間違いなさそうだ。その純真さが時に恥ずかしく、時に心を強く打つのである。


『天気の子』19・日
監督 新海誠
出演 醍醐虎汰朗、森七菜、本田翼、平泉成、倍賞千恵子、小栗旬
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『天才作家の妻 40年目の真実』

2019-03-12 | 映画レビュー(て)

人気作家ジョゼフの元にノーベル賞受賞の吉報が届く場面から映画は始まる。別室でその報せを聞く妻ジョーンの顔には何とも言えない不思議な表情が広がっていた。妻を演じるのは本作で実に7度目のオスカー候補となったグレン・クローズ。映画は彼女の微かな表情の変化を克明に撮らえていく。大芝居を封印した静的な心理演技はまさに名優のなせる技だ。
夫婦はやはり作家である息子を伴って授賞式の待つスウェーデンはストックホルムへやって来る。冗舌な夫の陰に立ち、内助の功を称えられるジョーン。人間の浅はかさを体現する夫役ジョナサン・プライスの“内助の功”もあって、クローズが体現する真にインテリジェンスな人だけが持つふくよかさが際立つ。名優2人の二重奏が本作の見所だ。

やがてジョーンこそが称えられるべき作家である事が明らかになる。かつて女の作家が本を出す事は叶わなかった。彼女は夫のゴーストライターとして執筆を続けてきたのだ。

原題は“The Wife”。ゴーストライターの悲哀が主題ではなく、これはジェンダーバイアスによって道を閉ざされ、“妻”という役割を押し付けられた全ての女性を指しているのではないか。“妻”という言葉の向こうには望まぬ人生を送ってきた女性達の姿がある。

 アカデミー賞では実質、助演だった『女王陛下のお気に入り』のオリヴィア・コールマン、ブラッドリー・クーパーとのW主演だった『スター誕生』のレディー・ガガよりも、ワンマンショーであるクローズが評価されるだろう。未だ熱演が良しとされるオスカーで“静かな芝居”が勝利する事はもちろん、ネオウーマンリヴ映画としても記憶されるハズだ(3/12後述、御存知の通り、アカデミー賞はオリヴィア・コールマンに渡った。予想ハズれましたね、ハイ)。


『天才作家の妻 40年目の真実』17・スウェーデン、米、英
監督 ビョルン・ルンゲ
出演 グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレイター、マックス・アイアンズ、エリザベス・マクガヴァン
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『デッドプール2』

2018-06-13 | 映画レビュー(て)

お待ちかね!世界中で大ヒットを記録したオレちゃん主演映画第2弾だ。
前作は正直、オレちゃんもこんなに当たるとは思ってなかったからマーヴェルもDCユニバースもディスり放題だったけど、製作の20世紀FOXが味しめちゃってさー。ウルヴァリンシリーズの
『ローガン』まで同じR指定にしちゃってアカデミー賞候補だろ?オレちゃんだって手が届かなかったのに!みんなそんなにヒュー・ジャックマンがいいのかよ!

という事でプレッシャー倍増。どいひー。おかげでちょっと話のエンジンかかりは悪いし、中折れ気味だけど許してちょ。あ、前回は上映時間1時間49分だったのに今回2時間…もうダメなエッチじゃんコレ!オレちゃん、なかなかイかないの!

今回はミュータントのデブちん少年を未来からやってきたサノス…違ったサイボーグ戦士ケーブルからオレちゃんが守る話。何でもデブちんが将来、凶悪なミュータントに成長してケーブルの嫁さんや娘を殺しちゃうから、子供のうちに殺しに来たらしい…ってそれ『ターミネーター』『LOOPER』じゃん!今回も『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』『セイ・エニシング』『愛のイエントル』とか18歳以下には絶対わかんないネタ満載だぜ。R指定だけど子供も見ろ!

このジョシュ・ブローリン…じゃなかったケーブルを倒すためにオレちゃんもスーパーヒーローチームを結成だ(何で予算増えたのにマカヴォイとかファスベンダーとかX-MEN出てくれねーんだよ)。殺人ピエロ(キモイケ面ビル・スカルスガルド)、99分署係長(テリー・クルーズ兄貴)、そしてマブいザジー・ビーツ!!いーだろ、このメンツ。チーム名はXフォースだぜ(ワカンダフォーエバー)!

 パロディとかバカばっかりやってるように見えるかもしれないけど、世の中マジもんのバカ悪党ばかりだからオレちゃん、筋通してスーパーヒーローやっちゃうぜ。子供いじめんな、差別すんな、カノジョ愛せよ、それから家族大切にしろ。ポリコレ棒だ?うっせー、ケツに突っ込むぞ!


『デッドプール2』18・米
監督 デヴィッド・リーチ
出演 ライアン・レイノルズ、ジョシュ・ブローリン、モリーナ・バッカリン、ジュリアン・デニソン、ザジー・ビーツ、ブリアンナ・ヒルデブランド、忽那汐里
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする