「海江田ノート 原発との闘争176日の記録」海江田万里 2012講談社
タイトルの『原発との闘争』に見られるように、「私は頑張った」というのがこの本の趣旨らしい。
だから、反省も少なく自分勝手な日記を読んでいる気分だった。
正直なのかと思えば自画自賛になるあたり、菅元総理と同じかもしれない。
また、記憶の作り直しも多分ある。事後の記憶入れ替えが多分、菅さん以上に多いのではないか。
さらに、海江田さん、他の人のものまで自分の手柄にしたがっていないか。(その逆のことを書いてはいるが)アメリカからの指摘を自分たちが心配していたとか、自分たちが気付いたように書いているよね。まあ、省略しているだけとも言い訳できるだろうけど。
ロードマップは私が作った、みたいなことも。違うし、自慢にならないし。
浜岡原発は私がとめた!みたいな。でも、経産官僚に手玉に取られて玄海原発を再稼働しようとしたよね。どう見たって、浜岡を止めるから他を動かせっていう態度に見えるよ。たぶん、官僚論理にはまって自分で考えることを放棄していたんだね。今も気付いていなかったりして。
それから、海江田さんって姑息だよね。必要でもないのに、建前とやりましたというアリバイ作りをして批判を避けようとかするんだから。しかも、それを自慢するんだから間が抜けている。
そんな本でも、報道に流れない細かい部分などはちょっとお得気分がある。全然事故の情報としては参考にならない部分だけれど。
慌てぶりがよくわかり、使えない大臣だと感じた。
東京電力と保安庁が事故の先を想定せず、見ないふりをして場当たり的な対応で責任逃れをする様子を見ると、そのままでの情報で動いていく海江田元大臣の人の好さと間抜けぶりが際立つ。海江田さんは2012年末民主党の代表となったが、野党の立場から見直した時にこの本の内容を恥ずかしいと思わないだろうか。「あの時の行動には誇りを持っている」くらいのことはいいそうだな。
大臣というのは発言内容を官僚にもらって読むだけの存在らしい。少なくとも海江田さんはそれをよしとしていたお人形だった。まあ、それだから保安院をいつまでも大切にして、原発再開の必要性を感じてしまったんだな。自分で考えることができないのだろうか。考えているつもりでうまく操られているよね。まあ、本当に周りの人間からすればお人好しで、付き合いやすい人間なのだろう。しかし、大臣、国会議員、政治家としてはその資質を疑うしかない。官僚任せならば中学生でも大臣はできる。
ERSS(東京電力、緊急時対策支援システム)
プラント解析予測システム
P23/P29 圧力容器の破損まで予測していた。
これはERSSではなく、保安院計算?
ベント・海水注入、「私はしっかりやっていた」菅総理が当り散らし、班目ははっきりしない。
う~ん、この本はどうにもみっともない。たぶん、海江田さんが保安院側でものを見ているせいじゃないだろうか。
P66 「無私の心」少しでも自分の功名心や保身が出たら対応を誤る。と、言いながらもしもの時の責任の取り方を考えているようでは、「無私の心」は無理だろ。気付いていないんだろうな。
P80 原子力エネルギーの怪物が暴れ放題、人類のカウンターパンチ・・・何を言っているんだ?原発事故に「無私の心」自分を空しくして取り組むんじゃないのか。そうしていた人間がそんなイメージで事故を物語のように語るだろうか。(まあ、自分で書いていなければ、ライターの脚色があるかもしれないけど)『キリン』とか『シマウマ』とか名前を付けるのが好きな人だから、幼稚なイメージで事故をとらえていたのかもしれない。
P109 計画停電で死者が出れば内閣が吹っ飛ぶ。そうね、心配なのは自分の首だよね。何が「無私の心」だろうね。そこは『絶対に死者を出してはいけない』という意気込みで頑張った様子を書かなきゃダメだろ。本音がちょろちょろ、汚染水のように漏れ出している。
アメリカの放水車を利用するのに日本人ドライバーにこだわる。手伝ってもらえば、その分の余力を他の仕事につかえるというのに。
人員不足。なんだろう、やっぱり意識の問題だ。
自衛隊には災害復旧、捜索に力を入れてもらわねばならない。しかし、どちらが喫緊の問題で、どちらが重要な作業だろうか。原発が落ち着かなければ復旧も捜索もできなくなるかもしれないのに。またここでも「世界規模の災害になりかねない」という意識がない。あくまで「東電の事故」として出来る限りかき集めた材料と力で解決しようとしている。普通にできる限りという事象ではなかったのに。菅総理の本の方で書いた覚悟の問題でもあろう。
P108 アメリカとの交渉の中でペットボトルの話が出たのは、それだけ日本側の中での意思疎通がなされていなかったことの証左である。つまり、海江田に言ってもそのあとの伝言ゲームの中で途切れて手に入らないということだろう。おそらく何かの要求がとっくにあったのに、それが届くことがなかったからこの場で出たのだろう。
P133 ロードマップについては菅さんが『そんなもの出来なければ批判されるだけだ』と言ったとか。まあ、その通りなんだけど、どっちもどっちだね。計画がなければ場当たり的な対処が続くことになるんだから、絶対にそれは必要になるものだよね。だけど、批判されることは間違いないわけだ。見通しが甘くて何度も作り直しをしなければならないんだから。菅さん、ちょっと無責任(責任逃れ)だけれど慧眼であった。
で、それを作る時に東電に対して内緒にするようにしたことが、情報隠蔽体質と相まってその後の対応のまずさ、情報の遅さになっていったのかもしれない。で、海江田さんはスクープされることがなかったと自慢しているのだからアホでしかない。さらにマスコミから「5日で作った拙速なもの」との批判に対し、「17日かけているんだ」とほくそ笑む(P139)のはあまりにもアホである。17日かけても拙速なもの、内容の無いもの(無理なもの)だったらもっとひどいじゃないか。
P144 ビーバー作戦 目に見えている漏洩に対してさえ四苦八苦する。地震によるコンクリートのヒビはどれほど存在するだろうか。そこだけのわけがないのに。その後の各場所の水位の変化を見れば、徹底的な調査が必要だったことは明らか。きっと東電も保安院も知っていながら大臣には内緒にしていたのだろう。政治家に伝えればやらなくてはならなくなってしまうから。そういった先を読む意識がなく、場当たり的な対応に一喜一憂する海江田元大臣。
「低濃度」汚染水の放出についても、厳しく特例としなければどんどん規律が緩んでいくというのに。そして、実際そうなっているように思える2013年の汚染水問題。つまり、犯人捜しをすれば、その一人に海江田さんがなるというわけだ。
P152 「放出するのが日本海側ならともかく」って、おい!日本海側だってダメだろ!その対岸にはもっと近い国があるだろ!アホを通り越したおかしなおじさんだぞ、海江田さん!外国への連絡についての反省も、なんか的外れだし・・・こういうところは鳩山元総理と似通ってないか。
P170 「(福島県庁での記者会見では)霞が関の経産省倶楽部の記者の質問とは雰囲気が違う」って気付いたのであれば、ここで自分が霞が関にいたときに本当のことを何も知らされていないことに気付かなければならない。霞が関では経産省に都合のいい人間しかいないのだから、シナリオ通りの質問と答えが用意されていただろう。そこに本当のことを求める意識があるわけがない。馴れ合いの場に出したくない情報への質問は無い。それは『霞が関と福島の距離』であり、また『霞が関と国民の距離』なのだ。ところが、このおっちゃんはちっともそのあたりに気付く風がない。
P177 ご自分の発言を書き出している。「職員・作業員の待遇が改善されて、士気が上がっている」これは当然、官僚の書いた作文であり、海江田さんは何も確認をしていないだろう。そこに潜む大問題に気付くこともなく、何も手を付けないままやめていくのだから。
P184 2011年4月11日、ちょうど1カ月で大きな余震。そういえば、ここまで余震に対する対策は何も語られていない。ここにきてもそれ以前に話し合いがあったということも書かれていない。やはりぼんくらのあつまりだったのか。
P187 「嘘をつき、隠し事をし、それが後に明らかになって失われる政府の信頼は何倍も大きいと常に考えていた」その通りになってしまっているというのは、だれの責任だろうか。そして、そう思っていながら信頼を失った海江田さんは無能だったということだろうか。
P205 4号機の燃料プール90度って軽く流しているけど、怖いだろ!メモはあっても何も覚えてなかったのかな。
また、仮払金の支払い状況、これも数字を並べるだけ。何も感じないのか。なぜこんなに支払いが少ないのか。「待ちに待った」ならば、何で2%の人しか受けとっていないのかな。相変わらず被災者、避難者の方をきちんと見ていないだろ。
P226 「十分耐えられる備えができるまで、浜岡は動かすのは望ましくない」まあ、停止させた理由を考えれば十分に耐えられる備えはできるはずもなく、浜岡を動かすことはできないと言えないのが小物の証だね。まあ、P228の約束をしちゃったからだろうけど。
アレバ(2013、9/9)汚染水処理
P238 東電「1トン10万円、1年動かして500億円」
P243 東電が金を渋るのは私企業として当然のことであるが、国までが予算の関係でバウンダリ工事(遮断防壁)に対して積極性がないというのは困ったものだ。これをやるかどうかの責任者は国側では海江田さんになるんじゃなかったのかい?なんだか他人事みたいな書き方をしているけど。
P244 新幹線の移動で「すばらしい」と事故の無かったことを褒めていたが、それこそが落とし穴だとなぜ気付かないかな。みんながそんなつもりでいると、今度の地震で大事故を起こすのは新幹線ということになりかねないですよ。まったく、意識の低いおっちゃんだな。
P246 女川原発の非常訓練を視察して褒めているけれど、これまた「シナリオ通り」と海外から批判されるようなものだというのに。本当にダメ男に見えてくる。これだけ人を失望させるというのは才能だな。
P247 そして、東電以外は大丈夫という刷り込み。まんまとはまる…呆れるな。
原発再稼働への意識変化と思い上がりは気の毒なくらいだ。P257の菅さんが「保安院の言うことなんかだれも信用しないからな」というのはもう、その当時国民的な常識だったと思うのだが、身内である海江田経済産業大臣はそれを認めることのできない立場にいた。まだ保安院の「安全」確認で動かせると思っている。まだ保安院に期待をしていた。なんてピュアな人なんだろう。政治家に向いていないよね。ましてや大臣なんて。
経産省だけで判断できることに何の疑問も持っていないのだろうか。
(菅さんの言葉は菅さんの本では「事故の発生を防げなかった保安院の判断だけで決めるのは、国民の理解を得られない」であるが、「保安院の言うことなんかだれも信用しないからな」の方がリアリティーがあるね)
P272 最後になってやっと(辞任を決めてからの視察で)冷静に状況を見つめる。「「循環型冷却システム」の配管は、それこそ長い蛇のようにくねくねと曲がりくねって敷地内に施設されており―中略―どこかで配管が破損して、敷地内に汚染水が流れ出すようなことがないか、心配になった」
この時になってやっと大臣らしい眼できちんと見ることができたわけだ。最初からこういった意識でものを見ることができれば、事故の対処もずっと適正に行ってこられただろう。すでにアフターフェスティバル。
P273 最後になってやっと被災者へ思いを寄せた。