「「放射能は怖い」のウソ 親子で考える放射能Q&A」服部禎男 2011ランダムハウスジャパン
まあ、この本を読んで「その通りだね」という親子は少ないと思います。
つまり、こういう『まだはっきりしないことを自分に都合のいいようにいう大人がいる』ということを親子で考えて知ることが出来るという意味で良本です。でも、被曝に少しでも危険があったとしたならば、被曝を推奨するようなこの内容は犯罪行為だともいえ、それが流行に乗って本を売ろうという儲けと売名が目的であったとしたら、可愛いイラストでごまかそうとしている最低の悪本であることは間違いない。まあ、どちらなのかというと明らかなのですが。
- 10mSv/hまでなら細胞は完全回復(1998モーリス・チュピアーナ)この本の主張のほとんどの前提
- 300mSv/hまでDNA修復可能、1Sv/hで癌の増殖を抑える(2006ヴィレンチック)
- DNA修復、自然放射線と活性酸素の比較(1996マイロン・ポリコーブ/ルードリッヒ・ファイネンデーゲン)
「10mSv/hまでなら細胞は完全回復する」ということを前提で話をするのだから、まずはそれを証明してくれなければ。(継続的に受けても大丈夫なのかどうかは書いていないが、この本では福島の事故を前提に避難の必要が無いといっているので、継続的に受け続けても大丈夫だと言っているものと判断する)著者の親族郎党をそういう環境で1年間暮らして見せればいいでしょう。賠償金額を減らしたい東電や政府と、安全を証明して住民を安心させて呼び戻したい福島県はいくらでも予算を組みますよ。それが本当なら。ほっほっほっ、しかも健康になるんでしょ?一族繁栄ですね。良かったですね。是非、結果を見せてください。
300mSv/hまでDNAの修復可能は安全性の証明ではないし、1Sv/hで癌の増殖を抑えても健康な細胞も傷つけちゃうんでしょ?それって、ずっと当て続けるのじゃなくて、実験室で瞬間的にやるだけだよね。
自然放射線と活性酸素によるDNA損傷の修復比較ではアタック回数の比較だけをして「1000万倍の強さ」としているが、同時に別の場所の注記の中で「放射線によるDNA損傷は二重螺旋切断が激しい」とも書いてあるんですね。つまり、羽毛で1000万回なぜるのと超大型ダンプに引かれるのを同じ扱いにして比べている平気でいるわけです。「お酒はたくさん飲むと身体に悪いけど、ちょっとずつなら「百薬の長」っていう」なんてことも書かれていますが、それ、お酒じゃないから!きっと毒だから!
取り上げられた学者さんがこの本の内容を読んだら、「素晴らしい」「その通りだ」というだろうか。自分の研究をこんな主張に使われたことに怒るのではないだろうか。
- 避難なんてする必要がない。
- 福島第一のは水素爆発「この化学反応自体では放射線は出ません」
- 965Bq/Lの水は0.02μSv(外部被曝か内部被曝かの表現もなし)
- 他の原発は大丈夫です。
- チェルノブイリとは比較にならない。外に出た放射性物質は50分の1くらい。
- チェルノブイリでは癌も奇形もない。白血病も甲状腺がんもない。
- 原爆や核実験の方が酷かった。
- 広島や長崎で被曝した人が長生きしている。
- 被曝した人の方がDNA異常が少ない。ショウジョウバエと人間は違う。
- カリウムからも放射線が出ているが、カリウムを取り除くと細胞が死んでしまう。
- ラドン温泉
- 人体にも7000~10000Bq入っていて、0.2μSv/hくらい出ている。
- 「放射線ホルミシス研究委員会」トップレベルの医学者?????
- 年間10Sv(1000万μSv)まで大丈夫、年間100mSvが健康最適。
- がん治療に利用されている(から、放射線は身体にいい)
- プルトニウムはほとんど化学反応をしないから飲んでも平気。肺がんになった人はいない。
965Bq/Lは0.02μSvっていう計算も胡散臭いけど、それを毎日何リットルも飲み続けたらどうなるのか。それを無視しているよね。
チェルノブイリはフクシーマの50倍っていうけど、3割以上出ているっていう話も流れているよね。さらに、東電発表の何倍も出ているらしいという海外の報道もあるし。しかも、チェルノブイリは短期間に閉じ込めたけれど、フクシーマはずっと垂れ流しているんだ。まんがでは爆発したゆで卵と殻の剥けたゆで卵として比べているけど、どちらも食べられないし、剥いた方は腐って汁が垂れてテーブルを汚しているからね、染み込んでしまうからね。でさ、チェルノブイリは動物の宝庫になっているとかいうけど、なぜ人間(住民)は帰っていかないんだろうね。その動物たちは本当に健康なのだろうか。競争相手や敵が(死んでしまって)いないから入り込んでいるだけだよね。
原爆や核実験の比較もさ、都合のいいことを並べているだけで(話の信憑性も感じないし)放射性物質の危険性の否定には至っていないよね。
カリウムがないと細胞が死んでしまうことを放射線が必要と結論付けようとしていることで、この著者の態度が明らかになります。細胞が必要とするのはカリウムであり、放射線ではありません。放射線を出さないカリウムでは細胞が死んでしまうというのでしょうか。
がん治療などの場合の効果は、普段の生活での放射線とは別であって、ここでも酷い論理のすり替えが行われている。
著者の主張が世の中で広まらないのは、放射能が怖いほうが都合のいい人たちがいるかららしい。
ほう、それは儲けている人たちですよね。東電になると思うんですが、原発を推進するには放射能が怖くない安全なものの方が都合がいいはずなのに。どうしてでしょう。人件費を増やすためでしょうか。それによって利益の上乗せができる仕組みに日本はなっていますからね。でも、海外もそういう仕組みなんでしょうか。「今までのはウソでした~」と言えないだけなんでしょうかね。本当にそうかな。
うん、やっぱりね、著者が自ら放射線の安全性を証明すべきでしょう。せっかくそういう環境ができたのだから。
差し込まれたまんがを見ると・・・登場する母親は愚かに描かれているよね。これって、まんがを書いている人は納得していないのかも。お金のために引き受けた仕事だけど、「これは違うよ、騙されてるよ。こういう母親にならないようにね」と伝えたかったのかも。ICRP批判のセリフなんかは、ブラックジョークになっている。
いろんな人に訴えられてもいい本かも。
いや・・・
ちょっとまて、
余りに露骨過ぎないか?
あまりに軽薄すぎないか?
ほとんどの人間が否定しないか?疑問に思わないか?
これはその反応を見越して作られた「放射能は怖い」ということを逆説的に強めるための本ではないのか?
お、おそろしや・・・「怖い」