「安部公房全集003 1951.05-1953.09」 1997新潮社
安部公房の「あ」は赤のあだろうか。そこまではいかないけれど、左向きだよね。
時代からすれば先端のインテリゲンチャであり理論家だけど、ちょっと気持ち悪くてそこがいい。
まあねえ、安部公房の期待した解体後の再編による理想的な社会主義社会は21世紀中にはまだ来そうにないですけどね。逆に資本をもとにした社会契約が格差を拡大し、どんどん資本貴族を作り出していますよ。
「保護色」P28 おお、変化する髪色?近い将来に流行しそうな予感!技術的にはどうなの。
芥川賞受賞「壁ーS・カルマ氏の犯罪」
60年以上前の対談などを読みながら、基本的に政治も庶民の意識も変わっていないのではないかと思える。不満や問題点やその意識は何も変わっていないみたいだ。っていうか、個の集団で社会を作っているのだから、基本その部分は変わるはずの無いことかもしれない。変わり者や異端の割合はそれほど変わらないだろうし、支配的な階層の割合もそうだろう。教育とネットの発展によってごまかしや嘘が見えるようにはなっても意識と行動はさほど変わらず、実生活でそれをどうこうできる者はごく少数に過ぎない。そういうことだろ。
戦争挑発者とかいうと、現役の総理大臣を一番先に思い浮かべてしまうわけで、うわ、本当に変わりないんだな。警戒感が緩んでしまうわ。いかん、いかん。
「鉄砲屋」P295 もうね、安倍政権とそのまわりの有象無象を連想するんだわ。存在しないものを信じ込まされて、嘘だとわかっても自己の利益のために見ない振り。この作品は。まあ、確かにどの時代でも読まれるだけの完成度を持った作品かもしれないわ。さすが安部公房!NO安倍、YES安部!
「衆院選挙のあとに」P306 全国民のドレイ化(他にも『特別待遇のドレイ』とか)・・・いつの時代もきっと為政者たちの姿勢はそうなんだな。。。まさしく!
「闖入者(1963年ドラマ化)」とか「イソップの裁判」とか焼き直しの作品もあるが、たぶん読者に寄せているんだな。「デンドロカカリヤ」なんかは002にもあったけど、こっちは対象年齢を下げたような(親しみやすい)表現になっているのかな。
あ、芥川賞を受賞してから読者を強く意識し始めたのかな・・・
「新イソップ物語」P338~ 創作論とか対談でしているわけで、それをわかりやすくした童話的な短編集だな。わからないものもあるけど。
安部公房が生きていたら、安倍政権に対してどういう話を作っただろう。
作品分析(分解)の方法と評価の基準なんかも対談の中に見えたりする。あれかね、現在の賞なんかでも書評の中にそういうもの(評価の基準や根拠)は示されているんだろうかね。
この巻で一番おもしろかったのは「少女と魚」だね。(ええ?こんなに面白いのにWikipediaに無いじゃないか!)
「めでたし、めでたし」にならない『竹取・コブ取り・花咲か物語』
おいおい、じいさんばあさんが牢屋に入ったままなのに、知らん顔して逃亡かいな!はははっ!
安部公房式のリアリティーですね。