沖縄本島では4~5月頃に無加温栽培マンゴーの摘果作業が行われます。
マンゴーの花は、小さな花(小花)が1,500花程度集まり、円錐状の花序を形成します。
小花は多数咲きますが、果実が見られるものは数十程度です。
また、着果したかの様に見えても受粉がされておらず落果する果実がほとんどです。
さらに、経済栽培を行っている生産者は人為的に摘果(果実の選抜作業)を行うことで、より形や色、大きさが良い果実を残す作業を行います。
摘果の判断基準は、奇形果、病害虫被害が見られる果実、日当たりが悪い位置に着果したもの、著しく小さい果実等ですが、その中に「果実の一部が黄色くなった果実(以下、黄化果実)」があります(写真2、3)。
写真2、3.果実の一部が黄色くなった果実
何故、黄化果実は摘果対象になるのでしょうか?
マンゴー生産者なら、黄化果実は「どうせ落果する」、「種子の元となる胚がない(大きくなりにくい)」等の経験則から得た答えを述べることでしょう(写真4)。
写真4.胚がない黄化果実
しかし、実際に様々な大きさの黄化果実を割り、胚の有無を確認された方は少ないと思います(大きめの果実を摘果した際に「本当に摘果して良かったのか?」と自問する際に割って胚がないことを確認し、安心する方は多いでしょうが・・)。
そこで、今回は様々な大きさの黄化果実を用いて胚の有無を確認することで、胚が消失する果実サイズの目安等がわかるかもしれません。
確認作業は、2014年5月10日、場所は名護市の某マンゴー生産者の圃場で行いました。
測定項目は、果実の長径、短径、胚の有無です。
確認に用いた黄化果実の数は、100果の2反復です(確認作業を2回行いました)(写真5)。
写真5.確認に用いた黄化果実(100果×2回)
結果を以下に示します。
(1)胚が確認できた黄化果実は、いずれも100果のうち8果でした(表1、写真6)。
(2)胚が確認できた果実は、いずれも最大で長径13mm未満の比較的小さな果実に限られていました(図1)。
(3)長径と短径の間には、とても強い相関がありました(R=0.93、有意水準1%で有意)。
表1.胚が確認できた黄化果実の長径と短径
写真6.胚が確認できた黄化果実
図1.黄化果実の胚の有無
※100果全ての長径、短径を測定したのは1回目の確認のみで、2回目は「胚あり」の果実のみ長径、短径を測定しました。
以上のことから、
(1)マンゴー黄化果実の大部分は胚がない。
(2)胚がある黄化果実も、比較的果実が小さい時期に胚が消失する。
(3)胚が消失した後、ある程度大きくなるまで黄化が見られない果実がある。
ことが示唆されました。
仮説(3)は、ミニマンゴーとして黄化せずに収穫に至る果実があることからも裏付けられると思います。
もし、人前で「黄化している果実は胚がないんだよ」と説明しながら果実を割る機会がある方は、比較的大き目の果実で行うのが良いかもしれません。