熱帯果樹写真館ブログ

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タイ王国産マンゴー「マハーチャノック種」が輸入解禁になりました

2006年12月30日 | マンゴー
 2006年11月28日に「タイ王国産マハチャノ種のマンゴウの生果実の輸入解禁について」と題した記事が、農林水産省ホームページの報道発表のページで発表されました。

 記事の内容は、


 タイ王国産マハチャノ種のマンゴウの生果実については、タイ王国側からの輸入解禁要請を踏まえ、これまで科学的・技術的検討を行い、公聴会、パブリック・コメント等の手続を経て、病害虫の侵入のおそれがないことを確認したので、本日付けをもって、タイ王国産マハチャノ種のマンゴウの生果実について、輸入解禁措置を講じることとする。


 と云うものでした。

 近年は「マンゴーブーム」と言われる様に、マンゴー輸入数量は年々増加しています(図1)。


図1:マンゴーの輸入数量及び金額の推移
貿易統計(輸入).財務省.より抜粋・加工


 その様な状況下でタイ王国から日本には、どの時期にどれ位の量のマンゴーが輸入されていたのでしょうか?
 まず輸入数量ですが、2005年の「貿易統計(輸入)」ではタイ王国産マンゴーの輸入数量は955,195kg(マンゴー輸入量全体の7.9%)となっており、これはフィリピン、メキシコに次ぐ第3位の数量となっています(図2)。


図2:日本の国別マンゴー輸入数量(2005年)
貿易統計(輸入).財務省.より抜粋・加工


 次にタイ王国産マンゴーの輸入時期ですが、月別に見ると3月がピークで、12月~6月が主な出荷シーズンと言えそうです(図3)。


図3:タイ王国から輸入されたマンゴーの月別数量および単価(2005年)
貿易統計(輸入).財務省.より抜粋・加工


 これまでタイ王国から輸入されていたマンゴーの品種は、ナンカンワン種、ナンドクマイ種、ピムセンダン種、ラッド種の4品種でしたが、これにマハチャノ種が加わると云うことになります。
 マハチャノ種の出荷時期がいつ頃なのか、気になります。

 タイ王国産マンゴーで輸入できる品種とできない品種があったのは、植物防疫法に係る取り決めのためです。農業的大害虫のミバエ類が生息するタイ王国からは、マンゴー果実は蒸熱処理を行い殺虫処理をしてからでないと、日本にマンゴーを輸出できないことになっています。
マンゴーは品種により果実の大きさや形状が違うため、1種類の品種で蒸熱処理の効果が確認されたからと云って、他の品種まで同処理で輸出が許可されるわけではありません。
今回マハチャノ種は、既存輸出品種のナンカンワン種と同様に「果実の中心温度を47.0℃とし、この温度以上で20分間蒸熱処理」することでミバエ類の完全殺虫が可能であることが確認されたために日本への輸出が許可された模様です。

 さて、今回輸入が許可されたマハチャノ種とは、どの様な特徴をもつマンゴーなのでしょうか?

 まず、品種名であるマハチャノですが、英語表記では「Maha Chanok」と記載されますが、タイ語表記では恐らく「มหาชนก」でしょう。
 冨田竹次郎編著「タイ日大辞典」によりますと、「มหา=大なる」「ชนก=銛」とありましたので、恐らく果形が銛の先端に似ているということで「大なる銛=มหาชนก」と名付けられたのではないかと想像します。


※2010年10月にタイの果樹研究者に伺ったところ、「Maha Chanok=仏陀の10代前の前世(最初の前世)における名前」のことだと思う、とのことでした(2011.05.01訂正→関連「タイのマンゴーに係る備忘録」)。

 マハチャノよりマハーチャノックの方がしっくりくる気がします。
 従って、以下はマハーチャノック種と記すことにします。

 次に果実の特徴ですが、2002年1月8~11日にタイ王国のチェンマイで開催された「International Symposium;Sustaining Food Security and Managing Natural Resources in Southeast Asia;-Challenges for the 21st Century-(東南アジアの食糧安全保障維持と天然資源の管理に係る国際シンポジウム ~21世紀に向けての挑戦~)」でドイツ連邦共和国ホーエンハイム大学のA.L.Vasquez-Caicedo等が発表したた「Physical, Chemical and Sensory Properties of Nine Thai Mango Cultivars and Evaluation of their Technological and Nutritional Potential(タイ産マンゴー9品種の物理的および化学的特性の知見と技術的および栄養学的可能性の評価)(PDF:335KB)」にマハーチャノック種の特徴について記載されていましたので紹介します。

 マハーチャノック種果実の物理的特徴を表1および図4で示します。
 国産のアーウィン種よりやや小振りで、細長い様です(写真1)。

表1:マハーチャノック種果実の物理的特徴


図4:果実の計測部位


写真1:マハーチャノック種果実


 次に気になる味の評価ですが、糖度(Brix.)は約16度、酸度は約0.8度、糖酸比は約20とかなり甘そうな数値です(図5)。


図5:タイ王国酸マンゴーの品種別 糖度・酸度・糖酸比


 原文にはその他、果肉色や繊維割合、糖組成や香りについて等多くの評価が記載されていましたので、気になる方は確認してみて下さい。

 これからも海外から様々な熱帯果樹(品種)が輸入される様になると思います。
 熱帯果樹ファンとしては、とても楽しみです。

○参考文献
 ・「タイ日大辞典」.冨田竹次郎(編著).1997.日本タイクラブ(発行).㈱めこん(発売).
 ・「Physical, Chemical and Sensory Properties of Nine Thai Mango Cultivars and Evaluation of their Technological and Nutritional Potential」.A.L.Vasquez-Caicedo, S.Neidhart, P.Pathomrungsiyounggul, p.Wiriyacharee, A.Chattrakul, P.Sruamsiri, P.Manochai, F.Bangerth, R.Carle.2002.International Symposium Sustaining Food Security and Managing Natural Resources in Southeast Asia -Challenges for the 21st Century-.(PDF:335KB

○参考サイト
 ・「農林水産省:報道発表資料;2006年11月28日:タイ王国産マハチャノ種のマンゴウの生果実の輸入解禁について
 ・「財務省:貿易統計(輸入)
  ※農林水産省¥農林水産統計情報総合データーベース¥統計名検索¥果樹¥財務省貿易統計(輸入)で検索






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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
マハチャノック種 (アピ)
2007-01-30 17:04:52
タイ人の知り合いに、このマハチャノック種について訊いてみましたところ、生産量が少ないようでしてタイ人でも食べたことが無い人がまだまだ居るようです。またこの品種の特徴とされている表面の赤みについては日光の当り具合に因るとのことで、必ずしも全ての果実が赤くなる訳でないとの話です。もし黄色いままで日本に来ますと他の品種との区別が難しくなりますね。
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はじめまして (ねこがため)
2007-02-02 10:28:25
>アピさん
 マハチャノック種の生産量と着色に関わる貴重な情報を教えていただき、ありがとうございました。
 
 たしかに色づいていないとナムドクマイ種と区別がつかないかもしれませんね。
 でも果形が細長いからわかるかも。
 できるだけ小売の段階で品種名を書いておいてもらえるとマニアとしては嬉しいです。

 ところでマハチャノックの意味はタイ語で「大なる銛」という解釈は、当たっているのでしょうか?
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Unknown (アピ)
2007-02-03 21:31:49
MAHACHANOKの意味について当方も富田先生のタイ日大辞典で調べてみましたが、CHANOKという言葉には「父」という意味が有りますね。またMAHAという言葉の後には基本的にはサンスクリット系の言葉が付くそうですので、「父」のCHANOKで問題無いのではと思います。つまりMAHACHANOKの意味としては「偉大なる父」といった感じになりますね。
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偉大なる父 (ねこがため)
2007-02-11 21:03:05
>アピさん
>MAHACHANOKの意味としては「偉大なる父」

 これは、きっとタイ人なら誰もが知る特定の人物のことなんでしょうね。
 
 タイ人に質問する機会に恵まれましたら、聞いてみることにします。
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