日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 出羽大掾國路

2010-05-11 | 
刀 出羽大掾國路

  刀 出羽大掾國路      脇差 出羽大掾國路

 

 

 強みのある地鉄は江戸時代最初期のもので、新刀(江戸時代前期)というより古刀に近いものが感じられよう、これが出羽大掾國路(くにみち)の最大の魅力。板目鍛えの地鉄に杢目が交じって地沸が厚く付き、地鉄の表面に起つ沸の粒子が良く分かる。
 時に浅く、時には鎬筋に達するほどに深く乱れた刃文は南北朝時代の相州正宗やその門流志津を手本としたものながら、肉厚い地鉄の上を奔放に暴れるように、あるいは手綺麗さを突き放すように江戸時代最初期の特質を鮮明にしている。焼刃はまさに地沸の標本とも言いうる作域で、刃文を構成している沸は刃縁から湯走り状に流れ出、鍛え肌に絡んで黒く沈んだ粒が際立っている。刃中は沸だけでなく匂を伴って明るく冴え、この沸と匂が出入り激しい刃中に乱舞する。
 國路が学んだ堀川國廣や三品派は、いずれも南北朝時代の相州物を手本としている。この時代、また時代が降って幕末頃にも南北朝時代の相州ものが好まれており、いずれも時代の本歌とは異なってがっしりとした造り込みとされている。この肉取りやバランスは写真では判らない。どちらの刀剣店に行かれても、興味のある刀は、必ずケースから出してもらい、手にとって鑑賞させてもらうことが大切である。このバランスや手持ちも鑑賞の大きな要素であることを忘れてはならない。
 この刀も、実際に手にとってライトを反射させねば刃中の細やかな働きが鑑賞できない。判り難いのを紹介したが、妙味を伝えきれなくて少々悔やんでいる。
 脇差も全く同様の出来。写真としてはこの方が判り易い。刃縁に働く沸のほつれ、これが刃中を流れる砂流しとなり、金線を伴う沸筋となり、肌目に沿って沸が渦巻く。再度言う。この強い鍛え肌が地中と刃中に働きを生み出しているのである。

 脇差

 脇差