ただ今ショパンのバラード3番を練習しています。無謀なのもなにも承知なのですが、一生のうちにショパンのバラードを少なくとも1曲は弾くというのが夢だったので、その夢の実現に向かっているということになります。基礎的な力も中途半端なのは承知しているため、大曲に手を出すのは控えたほうがいいのでは、とずっと思っていたのですが、私が本当に上手な方のように弾けるようになるのは一生かけても無理だというのも分かっている今、むしろ憧れの曲を今弾かないでいつ弾く?と思うようになったのもあります。前の自分よりも弾けるようになる、その過程を楽しむのもありだと思ったし、なんといっても、憧れ曲を弾いたほうが練習へのモチベーションも上がりますしね。
そして弾き始めて数ヶ月。はじめはモチベーションも高かったのですが、ときどきあまりにも難しいのと、どこを直せばいいのか分からなくなったりするのと、ほかの曲が素敵そうに思えるのとが合わさったりして気移りすることもしばしば。しかし、やっぱり好きな曲なので練習が楽しいです。後半の難所はエレベストのようなのですけどね。。。。
今回はそのバラードの中でなんとなく気づいたことがあったので書きます。誰も言ってなさそうなことである上に、重要度もあまり高くなさそうな気がするのですが、弾いていて気付いたことなので書くことにしました。
前半部、第二主題から前半の最大の盛り上がりに移ろうとするところ、徐々にそして最後は思いっきり盛り上げるのですが、その盛り上げ始める箇所である77~81小節目の左手内声の「ドレファミ レミラ♭ソ ファ」が気になりました。
以下のアムラン氏による演奏の動画でいうと、2分44秒から2分51秒にあたるところです。その後第1番目の盛り上がり部分になります。
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そしてその「ドレファミ レミラソファ」は95~99小節目でにユニゾンとなって再現し、その後ひとまず収束へと向かいます。先ほどの動画でいうと3分17秒から3分25秒になります。
この部分の「ドレファミ」すなわち「CDFE」で思い出したのが、モーツァルトの交響曲41番K.551ジュピターの第4楽章のテーマの「ドレファミ」「CDFE」でした。ジュピターで頻繁に使われているこの「CDFE」音型はジュピター音型と言われ、モーツァルトの他の曲、例えばK.192の「クレド」(以下の動画でいうと1番目の曲 )
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やK.257「クレド・ミサ」の 「サンクトゥス」で使われています。彼にとってこの「ドレファミ」こと「CDFE」は一生かけてのテーマとなる音型だったそうです。そしてさらにさかのぼってハイドンの交響曲13番の第4楽章でも使われているそうです(これらの内容は詳しい方たちに教えていただきました)。
また新しくはシベリウスの交響曲第4番の第4楽章に「ドレファ♯ミ」こと「CDFisE」という不気味な形となって登場しています(こちらも詳しい方による情報です)。出だしのチェロの独奏から印象的です。寒く厳しい北欧の夜を連想するのですが、シベリウスはこの曲を作るときにジュピターことモーツァルトの音楽を少しは頭に浮かべていたのでしょうか?
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しかし、この「ドレファミ」こと「CDFE」というジュピター音型の起源、実はグレゴリオ聖歌のHymn「Lucis creator」にあると言われています。音源があったので貼り付けておきます。確かに出だしから「ドレファミ」こと「CDFE」が聴こえますね!
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この「ドレファミ」パレストリーナも使っているそうです。探そうと思ったらきりがなさそうです。
ちなみにショパンのバラード3番の「ドレファミ」ではその後「レミラ♭ソファ」と続き、ヘ短調となりますのでこの部分の前半をジュピター音型というのは多少無理があるかもしれないいのですが、それでも「ドレファミ」こと「CDFE」という音型には何らかパワーがあるのでは、というような気がしました。
再びバラードに戻ります。ジュピター音型とは違う話題です。「ドレファミレミ♭ラソファ」の後の静まろうとしたシーン。こじつけもあるかもしれませんが、下の楽譜でいうと右手のソプラノもですが、内声の茶色で囲まれた部分も聴きながら弾くと、音楽が素敵になりそうな気がしました。先程の動画でいうと3分26秒から3分36秒のところです。
そう考えてみたら内声の存在感の大きさを感じます。人によってはあまりにも聴きなれた曲が多く分かりきったように見えるショパンの曲、もっともっと発見できそうなことがあるような気がしました。