日曜日は「アートと音楽」という展覧会を観に東京都現代美術館にでかけた。視覚芸術である美術と聴覚芸術である音楽とは互いに密接な関係を保ちながら発展していったが、はたしてアートとは?音楽とはなんだろう?その境界に向き合い音をもってするアート(美術)や、視覚表現をもってする音楽があってもいいのではないか、というテーマで開かれた展覧会だった。音楽と美術だけではない。音楽とは何?という問いにたいしてもまっすぐに向き合っている展覧会のような気がして興味が湧いた。
印象に残った作品をあげていこう。
会場に入ると円状の流れるプールのようなところに、大小の磁器の器がたくさん浮かんだ作品が迎えてくれた。ところどころで速くなる流れ。そしてその流れに流されお互いぶつかり合う磁器同士から生じる音。一音だけのこともあれば同時に複数の磁器同士がぶつかりあい重なった音になることもある。この音は人によってつくられた音だがまさに偶然から生じた音。思わず風鈴を思い出してしまったが、さて、これらの音は、音楽なのだろうか?音による時間表現、とはいえそうだけど、音による芸術と言えるのか?たとえば「音楽は音である。コンサートホールの中と外とを問わず、われわれを取り巻く音である。」と語るジョン・ケージだったらあきらかに音楽ととらえそうな気がするが。。。
植物は動いていないように見えるが、実際には動いている、そして何かを出している。人の耳には聴こえないかもしれないがそれは音楽かもしれない。対話かもしれない。植物から出ている危険信号を楽譜にした作品にも出会った。また、指を入れてセンサーに触れると震える装置にも出会った。血流を感知して振動するらしい。ここでは振動にすぎなかったかもしれないが、音楽は振動から生じる、ということは、この振動を分析することによって音楽が生まれるかもしれない。
階を移動すると多数のビデオにアニメーションと音楽とが合わさった作品、そしてカディンスキー、クレーのようにリズムが感じられ音楽を感じさせるような作品、ケージや武満徹の一見楽譜に見えないような楽譜など興味深い作品に巡り合った。面白かったのが言語楽器という楽器。タイプライターとオルガンとを合わせたような楽器で、文字の書かれたキーを押すと音楽が鳴るらしい。1974年には「言語楽器展」という展覧会が開かれ有名な演奏家たちが演奏したという。坂本龍一氏も演奏したというこの楽器、どんな音がでるのだろう、非常に気になった。残念ながら聴くことはできなかったが。
ミルクに異なる周波数を与えることで生じる波の様子を写真に収めた作品にも出会った。音を浴びただけでミルクは揺れる。音は振動。周波数が増えるとミルクの波も細かくなってくる。まさに音を視覚化した作品だと感じた。家でも牛乳の前で音をたてて実験してみよう。牛乳による王冠の瞬間写真に強く心惹かれていたのを思い出したな。
輪切りにした木の年輪によってつくられたレコード。なんとそのレコード、音がピアノの音になっていた。木材の種類によって、音の構成が変わってくるのだがこれがなかなかスケールが大きくて感動的だった。自然の神秘から生まれた音楽。CD化されてもいいのではと思うぐらい見事なものだった。実は同じ部屋に、氷でできたレコードのデモ演奏もあった(作者は違う方だった)こちらも聴きたかったのだが、行列が続いていたのと時間が遅かったのであきらめた。残念。
最後は古いレコードプレーヤーやラジカセ、プリペアドピアノがところどころに高低差も含んだ状態で配置され、いわゆるレコードやカセットなどの音源といわれるものがないままでも不定期に動き音が鳴るという作品だった。じっとしているプレーヤーが突然動きだし、かすれたような音を鳴らしているのを見ると何とも言えず愉快な気持ちになった。高低差、というが並の高低差ではなく、遥か高く見上げた高さにも装置は配置してあった。ひとつひとつの音は小さいのだが、広範囲にたくさん配置してあったのでなかなかスケールの大きな音響装置になっていたような気がした。プリペアドピアノも静かな状態だったが、間を置いては動き優しい音を出していた。鍵盤をタッチしていたのは人間の指ではなくてなんと小さな牛の模型だった(笑)
人の多い日程、時間帯であり、長い時間並ぶことが多かったのが残念だったが、非常に情報量が多く内容の濃い展覧会だったと思う。作者、作品名はあげなかったが、作者の方たちについて調べてみたら業界では非常に著名な方たちが多くてびっくりした。もう一度余裕のある時に行き直したいが日程的金銭的にに厳しいのであきらめる。しかし作者や作品についてはさらに調べられそうな気がした。面白い展覧会だったなあ。しかし感想を書くのは非常に難しかった。情報量が多かったうえにあまり普段使っていない感覚を使ったからだろうか。考えさせられることも多かったがまとめられない。
今週の絵は諸事情により休みます。