今朝見た夢です。私たちは仲間(しかし知らない人たちでした)と横浜の路面電車に乗っていました。横浜には路面電車はないはずなのですが、それは夢だということで。乗り換えで新横浜方面の坂に登る電車に乗りました。箱根登山電車の様子が頭に浮かんだのでしょうか。私の住んでいるところは新横浜よりもかなり先のところでした。
乗り換えても相変わらず混雑した車両です。しかし私は秘密兵器を持っていました。ラジカセです。そのときの私はラジカセを持っていることを誇らしく感じていました。乗るやいなや、カセットテープに入っている、MONO(モノラル)録音のジャズの曲(曲名は記憶にありません)をかけようとしました。カセットテープでは曲の頭出しは大変なはずなのですが、そのときはすぐに頭出しが出来ました。人混みの中に嵩張るラジカセ、迷惑行為以外の何物でもなかったと思うのですが、そのときの私は人様のことなどどこ吹く風のような大胆さでした。MONOの古い曲をかけるという意気込みだけだったような気がします。しかしかけるかかけないか、という段階で目が覚めました。
しかし夢の中にMONOという文字が出て来るなんて。今はCDでも古いというような時代かもしれませんが。現在のSTEREO録音になる前のMONO録音、この四文字をみただけで、古い録音だと分かります。そして録音された年代や演奏者の状況を想像しては感慨にふけりたくなります。ちなみに私が覚えているMONO録音デビューは、ジャズサックスの演奏を集めたカセットテープでした。ジャズピアノを聴く前です。ジャズというのがどのような音楽か興味を持ったとき、まずオムニバスから聴いてみようと思ったのです。そのときに驚いたのは、モダンジャズと言っても古いということ。私が生まれる前の録音が多かったのです。クラシック音楽と比べたら新しいのかもしれませんが。しかしカセットに入っていたジャズサックスの演奏は古さを感じさせない生き生きとした洒落たものでした。当時のアメリカの黒人音楽の豊かさにびっくりしました。その中で特に印象的だったのが、
チャーリー・パーカーの「
ナウズ・ザ・タイム」という明るく弾んだ曲。アルトサックスの透き通った音色と絶妙なリズム感がすごいと思いました。そしてまたびっくりしたのはチャーリー・パーカーが亡くなったのが1955年だったということ。今から55年も前です。あのチャーリー・パーカーははるか彼方の地というだけではなく、はるか昔にあの躍動感あふれる「ナウズ・ザ・タイム」を演奏したのです。1950年代、いやひょっとしたら1940年代にMONO録音で録音されたのかもしれません。ビ・バップというすさまじいエネルギーで演奏されたジャンルだそうです。この事実を知ってからは、ちょっとおっかなびっくりな気持ちで偉大なサックスプレイヤーの演奏を聴いていました。
それからMONO録音鑑賞の対象はジャズピアノ、そしてクラシックにも向かいました。いつの間にか第二次対戦前の1930年代も入っていました。これらの音源、MONO録音だけでなくもともとのレコードもSPかもしれません。音は狂っているし、ちょっとせっかちな傾向も見られますが、なんとも言えない香り高さを感じます。おっかなびっくりで聴いているのですが楽しいです。古くて偉大そうだというだけで弱くなってはいけないのですが、ときにはそういう演奏を楽しむのも悪くないと思いました。
ただ、残念ながらチャーリー・パーカーの「ナウズ・ザ・タイム」の入ったカセットテープの行方は分からなくなってしまいました。カセットテープの再生ができる機械も今はありません。時の移り変わりを感じます。