いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

いにしえの演奏家たち その2 ダヴィッド・オイストラフとジネット・ヌヴー

2013年07月28日 | ピアノ・音楽

 昨日に続いて今日もいにしえの演奏家について書きます。今日はヴァイオリン編。またまたtwitterの友人を通して名前を知ったお方です。昨日のピア二ストも含めて詳しい方たちは本当に詳しいです。趣味でピアノを弾いている我々としては、そういう演奏家たちを知ったところで演奏家たちの真似をすればいいわけではないし、そのためにかける時間やお金の捻出も考えるというところがあったりもしますが、それでも、そういう素敵な演奏に触れておくことで心に宝物を得、幸せな気分になれるし、それが結局は自分の演奏を含めいろいろな面でプラスになると思うのでした。でもさすがに弦楽器まで手を伸ばさなくてもと思われる方がいらっしゃるかも。いや、それが、弦による曲の歌わせ方を知っておくことはピアノ演奏にとってもプラスになるのです、それもですが、とにかく弦の音色って美しいのですよ、この禁断の世界にはまったら抜けられない!?

 前置きはそれぐらいにして、ダヴィッド・オイストラフ(David Fiodorovich Oistrakh 1908年- 1974年)というお方、Wikiによるとソ連(現在はウクライナ)のオデッサ出身のユダヤ系ヴァイオリニストで、ショスタコーヴィチ、ハチャトゥリアン、ヒンデミット、ブラームス、チャイコフスキー、ブルッフ等、多くの録音を有するクラシック音楽の好きな方たちの間では定評のあるヴァイオリニストです。どのような演奏をするのだろうと思って閉店間際のTレコードに残っていたこのCDを聴いてみたところ、深みと包容力を感じさせるスケールの大きな演奏でした。もともとこのオイストラフ氏、学生時代はヴィオラを演奏しており、生まれつきのヴァイオリニストではなかったそうですが、1937年、ブリュッセルのウジェーヌ・イザイ・コンクール(現:エリザベート王妃国際音楽コンクールで首位をかち取り、世界の檜舞台にその名を轟かせたからヴァイオリニストとして名をなすようになりました。その後はモスクワ音楽院で教鞭を執るかたわら演奏活動を続けたが、ソ連が第二次世界大戦に参戦すると、最前線に出て慰問演奏を行ないました。

 オイストラフ、CDはもちろんyoutubeにも多くの音源があるのですが、まずピアノでおなじみの月の光!こんな素敵な演奏になるのですね。

 ちなみにオイストラフ演奏のCDで初めて聴いて心打たれた曲にブラームスのヴァイオリン協奏曲がありました。弦楽器のイメージの強いブラームスですが、Wikiによるとヴァイオリン協奏曲はこの1曲のみ、交響曲第2番の翌年に作られたそうです。そして、ベートーヴェンの作品61、メンデルスゾーンの作品64と並んで3大ヴァイオリン協奏曲と称されているそうです。

 第1楽章はゆったりとした管弦楽から始まりますが、途中から情熱的なヴァイオリンが入ってきます。ブラームスらしい茶色がかった熱い音楽が次々と登場し、どんどん盛り上がっていきます。第2楽章はオーボエによる天から降ってきたような甘く魅惑的な歌から入るのですが、この美しいオーボエの出だしが原因で、サラサーテはこの曲を演奏したくないと言ったそうです。あの美しい旋律をオーボエが歌っているのをヴァイオリンは見るだけなのが我慢できないと。しかしその後はヴァイオリンが魅惑メロディーを引き継ぎ本領発揮!こんなに美しい歌があっていいのだろうかと思えるような夢の世界が広がります。第3楽章は管弦楽とヴァイオリンが同時に入ります。ジプシー風の力強いヴァイオリンの主題から突き進む音楽、凛々しくてかっこいいです。まさにここで決めてくれた、という感じで終わる第3楽章です。youtubeの演奏をこちらに貼り付けるのはどうか、という気持ちも少しあるのですが、曲自体知らない人もいらっしゃるかと思うので、曲紹介も兼ねて貼り付けます。Orchestre National de la Radiodiffusion Francaiseによる演奏、Otto Klemperer(オットー・クレンペラー)による指揮による、ブラームス作曲ヴァイオリン協奏曲の第2楽章です。

 

 ところでオイストラフとほぼ同時代のヴァイオリニストで、ヴィエニアフスキ国際ヴァイオリン・コンクールというコンクールで若くしてオイストラフを破り、その後も数々の美しい演奏を残したヴァイオリニストにジネット・ヌヴ―(Ginette Neveu 1919年-1949年)がいます。ヌヴ―はWikiによるとフランスのヴァイオリニストで、母がヴァイオリン教師、父もアマチュアながらヴァイオリンを嗜む音楽一家に生まれ、若くしてヴァイオリンの才能に恵まれ7歳でブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番をパリのサル・ガヴォーで奏いたそうです。そして当時高名なヴァイオリニストであったカール・フレッシュに、「あなたは天から贈り物を授かって生まれてきた人だ。私はそれに手を触れてあれこれしたくはない。私に出来るのは、いくらかの純粋に技術上の助言くらいだ」と言わしめたそうです。「音楽上の」ではなくて「技術上の」です、それだけ彼女には音楽性が溢れていたのですね。そしてヴィエニアフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで180名の競争の後オイストラフを破って優勝、その際あのオイストラフ氏も彼女の優勝を認め、『悪魔のように』素晴らしいと誰もが認めるだろうと言ったそうです。そんなヌヴ―氏、ドイツ、ソ連、アメリカ、カナダで演奏活動を続けました。第二次大戦中は演奏活動を中止したものの、終わると演奏活動を盛んに行ったそうです。しかし、1949年、三度目のアメリカへの演奏旅行に向かうために乗った飛行機で事故に遭い、若くして命を落としてしまいました。遺体が発見された時彼女は愛器ストラディヴァリウスを両手に抱えていたそうです。

 そのヌヴ―もブラームスのヴァイオリン協奏曲を大変得意としていました。名盤として知られる1948年5月3日のシュミット=インセルシュテット指揮、北ドイツ放送交響楽団の演奏によるライブ盤のCDを聴いたのですが、あまりの美しさに鳥肌が立ちっぱなしでした。燃えたぎるような情熱と豊かなでのびやかな表現、ライブならではのぎりぎりのところにまで挑む凛とした高貴さを感じることができました。こんなに素晴らしい演奏に巡り合えて心から良かった、一期一会という言葉があるのなら、このCDとの出会いは貴重な一期一会だったと断言したくなる、そんな演奏でした。

 というわけで、こちらには彼女の別の演奏を貼り付けます。1935年演奏のDe Falla 'La vida breve’、スペイン舞曲第1番です!音質がいまいちって?それは当時のことを考えたら受け止められるでしょう、なんといってもその裏にある彼女の熱き情熱と表現が大切。

 

 さて、こういうことにうつつを抜かしているようですが、自分の練習は?なんとかやってますが、本当はもっとちゃんと向き合わないとね。

 それにしても今は昔の名演をこのようにたくさん聴けるのですから本当に有難いですね。

 


いにしえの演奏家たち その1 イグナツ・フリードマンとウィリアム・カペル

2013年07月27日 | ピアノ・音楽

 いにしえの演奏家の演奏を聴くのが楽しくなっている今日この頃。1945年前後の演奏というとまさに第二次世界大戦前後、想像もつかないぐらい大変な時代だったはず。しかしそのような時代にも、古さを全く感じさせない、目の覚めるような演奏がたくさんなされていました。そんな演奏で以前から個人的に大好きな演奏の一つがポーランドのピアニスト、イグナツ・フリードマン(Ignaz Friedman 1882年– 1948年)によるショパンのノクターンOp.55-2。ショパン晩年の美しい作品を、フリードマンははっと目の覚めるような澄み切った演奏を聴かせてくれています。なんと1936年の演奏です。この演奏を初めて聴いた時にはこんなに素敵な演奏がそんなに昔になされたということ自体が信じられないような思いでした。こちらのCD(オーパス蔵で出ていましたが残念ながら廃盤になっていたようです)で何度も聴きました。同じCDに入っていたマズルカもとても素敵です。

 有難いことにOp.55-2の動画があったので、こちらに貼り付けます。


 フリードマンの演奏をきっかけにOp.55-2が好きになって数年後のつい先日、twitterである方がスカルラッティの動画として紹介されていた動画が目につき、ちょっと開いてみました。ウィリアム・カペル(William Kapell  1922年- 1953年)というピアニスト、名前も何も知りませんでしたが、とにかく聴いてみようと思って開いてみました。そうしたら、涼やかなスカルラッティK.380(29秒から)聴こえてきました。晩年である1953年の演奏ですがまったく古さを感じさせない洒落た演奏でびっくり。そしてさらにびっくりしたのは、その次(3分32秒から)あのノクターンOp.55-2が登場したこと!しかも、深みのある歌心あふれた演奏。なんと愛しむべき演奏なのでしょう。Op.55-2のマイベストはフリードマンだと思い込んでいたのですが、カペルのこの演奏、私から見たらフリードマンへの強力な殴り込み演奏でもありました。。。ちなみにその後のエミリオ・ナポリターノという方がピアノ用に編曲した「Gato(猫)」というアルゼンチンのフォークソングも素敵です。

 ちなみに本人の演奏姿が映った動画はyoutubeでは今のところこの動画しかないようです。

 この動画をきっかけにウィリアム・カペルというピアニストに興味を持ち始めたのですが、どうもこのカペル氏、アメリカ生まれのアメリカ育ちであり、第2次世界大戦終焉後世代における最も有望なアメリカ人ピアニストとまで称されるすごい方だったようです。まことに残念なことに、飛行機事故に遭い早世してしまいました。もし、彼が早世しなかったら、ピア二ストのr歴史も大幅な変化があっただろうと思える存在でした。(詳しい紹介がなされているサイトがありましたのでリンクしておきます(ウィリアム・カペル ~ホロヴィッツを超えて~)。

 ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲の独奏者として抜擢されたカペル氏はこの曲の演奏を得意とし、第二次世界大戦中もソビエト連邦への連帯を示すために演奏し、この曲の普及に努めたといいます。カペルの演奏で初めてこの曲 (youtubeにもありますm(__)m)を聴いたのですが、バリバリとした見事な演奏でした。まだ一度しか聴いておらず、ちゃんとつかみ切れていないのですが、歴史的に有名な演奏だそうです。

 私が個人的にまだ聴きなれている曲目であるバッハのパルティータ第4番、ショパンのピアノソナタ、ラフマニノフも素晴らしいです。そしてショパンのマズルカ!これがまた素敵なのです。晩年の名曲Op.67-4です。

 

 最後に大好きな幻想ポロネーズの動画も貼り付けます。後で気付いたのですが、カペルによる幻想ポロネーズの演奏、彼自身についての知識も何もない段階からかなり気に入っていたみたいで、お気に入りに前から入れていたことに後で気づきました。

 

 ちなみにカペルの演奏を集めた全集のCDが最近お得な価格で出たようです。動画音源を貼り付けてばかりでずるい、という声がちらほらと聴こえてきたような気が。お金と手間をかけてLPを聴いた方たちもたくさんいらっしゃるようです。というわけで、私も有難味を感じながら、いずれはちゃんと全集も聴きたいものだ、と思っている昨今です。

 

PS)ホロヴィッツについての記載については誤りがありました。申し訳ございません。削除いたしました。


階段を下りると、そこは

2013年07月22日 | ピアノ・音楽

 クラシック音楽をじっくり聴きながら、珈琲を飲める、そんな名曲喫茶に行きたくなって高円寺に足を運びました。twitterの友人たちに教えてもらった店に行くことにしました。

中央線沿線の高円寺商店街のアーケード。古き良き町という印象です。

細い路地を左に曲がって少し進むと。。。「地下一階 ルネッサンス 音楽室と珈琲」と書かれた古そうな黄色い看板が見えます。右の方に入っていくのですが、一見そっけなさそうな感じです。

 しかし地下に降りて扉を開けると。。。日本でいえば大正浪漫、ヨーロッパでいえば中世に戻ったような薄暗い部屋が広がっていました。そしてショパンのピアノソナタ第2番が部屋いっぱいに聴こえてきました。まるでお祖母ちゃんの秘密のお部屋のような雰囲気です。

 飲み物は入口で注文。珈琲(ホットとアイス)、ジュース、紅茶がありました。

 席に着くと目の前には古そうなスピーカーがどんと構えていました。ビクター犬が顔を向けてもよさそうです。しかしこのスピーカーからは音が聴こえてきませんでした。空調設備もちゃんとついていて、涼しかったです。

  音が聴こえてくるもとはどうもこちらの方向でした。壁には絵が掛かっており、がっちりとした高級そうなコンポが置いてあります。ちょっと暗くてすみません。フラッシュをたけなかったのでこのようになりましたが、スピーカー見えるでしょうか?

  音源はすべてLP。部屋いっぱいに音楽が広がっていました。ノイズも時折聴こえてきたのですが、そのノイズも含め心地よく聴こえます。音源の元も古い演奏。

  店員さんにかかっていた曲と演奏者を尋ねました。どの演奏も心をゆさぶるものばかりでした。部屋の雰囲気と古き良き演奏のおかげでたちまちタイムスリップ、夢の世界へと誘われました。

ショパン作曲 ピアノソナタ第2番 アルフレッド・コルトー (ピアノ)

マーラー作曲 交響曲第4番 カール・ベーム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ベートーヴェン作曲 ピアノ協奏曲第4番 カール・ベーム(指揮)ロベール・カサドシュ(ピアノ)アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

フランク作曲 ヴァイオリンソナタ アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)ジェルジ・シェベック(ピアノ)

 こんなに集中して音楽を聴いたことは、コンサートや発表会以外にはないのではないだろうか、というぐらい、集中して聴きました。会話はできませんでしたが、そのようなことは気にならないぐらい。他のお客さんも音楽に聴き入っていました。

 しかし部屋にあるものにも思わず心惹かれました。椅子や机もただならぬ雰囲気の素敵なものだったのですが、席からふと上を見てみるとレトロなシャンデリアとともになんとこんなものがありました!

 トランペットです♪演奏していた方がいたのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  目立たないように、忍び足でちょっと探検してみると

 ミステリアスな空間が。。。

 嶽本のばら氏という作家がカフェーについて書いた『カフェー小品集』に描かれたさびれながらも魅力的で耽美的なカフェーの世界を実現していました。行間から音楽が聴こえてきそうだったのを覚えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

  本とともに振り子の時計(ちゃんと動いています)ギリシャ神話に出てきそうな方の胸像もありました。

 

 ちょっと見方を変えてみると。。。

 こんなところにちょっと埋もれてみたい、という思いがふつふつと。

 ちなみに古き写真や古き絵も壁に飾ってありました。

 しかしそれだけではなく、

古き時計も、飾ってありました。

おじいさんの時計たちです。動いていませんでした。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな空間に入ってしまったら心はすっかり夢の中。美しい音楽を聴きながらいろいろなことを思い浮かべ、頭も心もデトックス。店から出るときにはまるで別人になったような感覚でした。

 その後は友人に会い貴重なひとときを過ごしました。いつも前向きで努力家の友人から大きなエネルギーをいただいたような気がします。

 それにしてもルネッサンスのような名曲喫茶、これからもなんとかして存続してほしいものです。そのような場を必要としている人がたくさんいるはずですから♪


水彩色鉛筆の絵 等々力渓谷公園

2013年07月15日 | お絵かき

 昨日は渓谷に行ってきました。なんと東京都しかも23区内に渓谷があるのですよ。等々力渓谷といい、世田谷区の閑静な住宅地の中に森が茂り川が流れているところがあるのです。渓谷の意味は「山に挟まれた川の流れている所」を指します。確かに等々力渓谷は、山というにしてはちょっと物足りないかもしれません。しかし、明らかに森林になっています。そしてその間を川が流れています。しかもそんなところが23区内にあるのです、確かに規模は本格的な渓谷と比べるとはるかに小さくささやかなところなのですが、それでもなんだか感動的ではありませんか。その等々力渓谷、夏は納涼スポットとして多くの人が訪れます。今回はそんなに人は多くはありませんでしたが、それでも暑さしのぎに訪れた人たちが、快適なひとときを過ごしていました。

 渓谷というからには滝がなくては、と思っていたら、滝もあるのですよ。不動の滝と言い、多摩川にそそぐ谷沢川の滝で、二筋となって落ちています。等々力の地名はこの滝の水音に由来すると言われているそうで(とどろく音ととらえられていたみたいですね)、滝は古くから修験道の霊場として知られ、多くの行者が訪れていたそうです。水量もかなり減っているらしく、本格的な滝に比べたら確かにちゃちに見えるかもしれませんが、滝の前に行ったら涼しさを感じることができました。

 

 

 滝のあるところから川に沿って進んでいくと美しい遊歩道が見えます。木漏れ日がさす中水が流れる音が心地よく聴こえます。このように見えるところもあったのですよ。やっぱり都内23区内とは思えません。

 

 もうちょっと立体的にワイルドな感じに描きたかったのですが難しいですね。でも、本当にこのように、緑に囲まれていたのですよ。いいところでした。

 


水彩色鉛筆の絵 近所の花々

2013年07月15日 | お絵かき

 暑い日々が続いています。しかしそのように暑い中でもけなげに咲いている花を見かけます。携帯で写真を撮ることができたので、その写真をもとに絵にすることにしました。

 近所で咲いていたヒルガオです。コンクリートに覆われた歩道の車道側に緑が植えられているのですが、そこの端っこで顔を見せていました。二輪仲良く咲いていました。形をとるのがなかなか難しかったです。違う花に見えてしまったらごめんなさい。

 

 

 ピアノのレッスンで先生の自宅に行く途中に咲いていたムクゲです。夏を代表する花らしく、暑さをものともせず堂々と咲いていました。印象に残った一輪をピックアップして描きました。

 


誰かといっしょに音楽をやるとき

2013年07月07日 | ピアノ・音楽

 先日の発表会以来、アンサンブルのように誰かと一緒に音楽をやることの楽しさを味わいたくなっています。確かに一年に一回、レッスン関係でプロの方とのトリオのアンサンブルをする機会はあり、それ自体非常にありがたい機会なのだけれども、私以外は共演者の方たちも含めみなさん先生、わいわいと試行錯誤しながらという状態ではありません。それが、先日の発表会で、趣味仲間とわいわい言いながら、ピアノや歌やリコーダーを合わせるというのをやって以来、もっとやりたくなってしまったようなのです。ピアノは一人でも楽しめる楽器なので、自分だけで空想にふけったり世界を作り上げたりできていました。今までそれが気楽、そして幸せを感じていたし、今もそう感じることも多いのですが、このごろどうも、そちらとは反対方向にも気持ちが向かっています。

 アンサンブルと言えば先日、友人と行った演奏会での演奏にも心打たれました。プーランクのクラリネットソナタ第1番でのクラリネットとピアノ。生島繁氏のクラリネットの演奏の音色が多彩なこと、ピアニシモからフォルテまでの表情が見事に出ていてここまで表情が出せる楽器なのだと驚くあまり。繊細なピアニシモの音色を一音たりとも聴き逃すまいという気持ちになりましたが、そのクラリネットと見事に溶け合う演奏をされていたのが、ピアニストのパトリック・ジグマノフスキー氏でした。ちょっとひねりのある、哀愁あふれた旋律にうっとりしました。 そして彼、ジグマノフスキー氏と奥さんの池田珠代さんの連弾を数曲聴くことができたのですが、息がぴったりあった素晴らしい演奏でした。特に印象に残ったのはドヴォルザークのスラブ舞曲Op.72-2とスメタナのモルダウ。どちらの曲もオーケストラのイメージが強くピアノ連弾とは結びついておらず、どのような演奏なのか大変気になっていたのですが、どちらの曲もオーケストラにまったくひけをとらない自然で響きの美しい演奏でした。実はこの二曲、何を隠そう、どちらも作曲者自身による連弾版なのでした。しかもドヴォルザークのスラブ舞曲はブラームスのハンガリー舞曲と同じくピアノ連弾版の方が管弦楽版よりも先に出版されたのですね、驚きでした。ブラームスはドヴォルザークの音楽に心酔しており、友人で楽譜出版社の経営者であるジムロックにドヴォルザークを紹介したところ、ジムロックはドヴォルザークにブラームスのハンガリー舞曲と同じような曲を書いてくれないかと依頼しました。そして出来上がった曲がスラブ舞曲で、第1巻に8曲、第2巻にも8曲。もともとはブラームスのハンガリー舞曲と同じくピアノ連弾版が先で、後にドヴォルザーク本人によって管弦楽版に編曲されたそうです。そしてドヴォルザークのスラブ舞曲のOp.72-2をいつか音にしたいという願望が。他のスラブ舞曲も聴いてみたくなりました。モルダウのピアノ連弾版は本人による編曲で一曲にまとまっていたのですが水しぶきのあがってきそうなドラマチックでストーリーが感じられる演奏でした。その後演奏された豪華絢爛なラ・ヴァルスでさらに興奮。その後も素晴らしい演奏に楽しい演出を十分に堪能することができました。

 そして指揮者アバドによる絵本「アバドのたのしい音楽会」を紹介します。

なんとあの指揮者アバドが本を書いていたのですね。twitterの友人の紹介だったのですが、音楽とはなにかという問いかけ、彼が指揮者になるいきさつ、オーケストラの楽器について、演奏の形態、指揮者としての在り方、音楽を演奏したり聴いたりするうえで大切だと思うことについて彼の言葉で丁寧に書かれています。音楽一家に生まれ育ったアバド氏は幼少期から音楽に囲まれた生活を送っていたのですね。特に印象に残った部分をあげます。

「パパはぼくに、伴奏をしてみないかと言った。(略)そしてパパはとても厳しかった。大声で、もっと速くと言い、いつまでもやめさせてくれなかった。その後、ぼくがずっとまともに弾けるようになってからも、パパはいつもそうだった。音楽に関してはものすごく気難し屋で、ひとが変わったように厳しくなるのだ。そのときパパに教わった秘訣はこうだ―誰かといっしょに音楽をやるときには、自分がうまく弾けるとか、よい耳を持っているかということはそれほど重要ではない。音楽的”対話”のある伴奏とは、その会話を感じとり、受け入れ、その神秘的な意味の端々まで完全に理解することなのだ。音楽においても日常生活においても、ほかのひとの言うことに耳を傾けることが最も大切なのだ―」

 自分がうまく弾けるとか、というのは分かるにしても、よい耳をもっているかということがもっとも重要なのではない、という見解にはかなり衝撃を受けました。主にアンサンブルについての見解だとは思うものの、日常生活の大切さを語っているところでは身につまされました。

 他に指揮者は楽譜を徹底的に勉強するという話のくだりにも教えられました。楽譜は本と同じく、何度読んでもつきない、新しさと神秘の泉なのだということ。かわいらしい絵のたくさん入った楽しい絵本です。