さわやかな青空が広がっていた本日、自然に触れたくなり箱根に行ってきました。最初に芦ノ湖スカイラインを通ってふたつの峠に行きました。
標高1030mの杓子峠です。自然が美しいところですが彼方に見えるのはなんと。。。
富士山でした!雲より高い頂上をしっかりのぞかせています。県外とはいえずいぶん近くにあるように見えます。
もう少し標高が高く、芦ノ湖スカイラインでは絶景が見えるといわれている三国峠に向かいました。標高1070mです。右側奥に何かが見えますね。
くっきりと見えました!富士山よりも低い雲がさらに近づいているように見えます。前景の緑とよきコントラストをなしています。
そして今回は秋の風物詩であるすすきを手前にして眺めることもできました!
富士山を見た後はポーラ美術館へと向かいました。今回はクロード・モネ(1840-1926年)の風景のとらえ方の特徴をテーマにした「モネ、風景を見る眼」という特別展を開いていました(会期は11月24日まで)。好きな画家だったのでうれしかったのですが、今回はモネの絵の特徴を以前よりも具体的にとらえられたような気がしました。創作当初はミレー、コローを代表としたバルビゾン派の影響のもとで風景を写実的に描いてきましたが、次第に色彩は明るくなり移ろいゆく光、空気、水を描いていくようになりました。人物の描写も、筆者の思い出やストーリーを懐かしみ主観的に捉えて描いた他の画家たちにたいして、人物も自然や風景と一体化し溶け込ませ、絵を見る者たちが風景の中に入り込めそうような絵を描きました。当時の社会情勢が感じ取れ、まるで自分も100年以上昔のその場にいるような気持ちになれました。
左から「貨物列車」1872年、「ジヴェルニーの積みわら」1884年、「雪のアルジャントゥィユ」1875年です。
その後ますます移ろいゆく光を端的に捉えた美しい絵を描くようになりました。ボートを漕ぐ女性たちの絵を描いた「舟遊び」1887年、「バラ色のボート」1890年、日没の赤い光がたまらなく美しかった「セーヌ河の日没、冬」1880年、光を描いたモネを象徴する名作「ルーアン大聖堂」1892年、「国会議事堂、バラ色のシンフォニー」1900年、「睡蓮の池」1899年、「睡蓮」1907年等有名ともいえる絵も展示してあり、すっかり幸せな気分になりました。
ちなみに先ほどあげた絵ほどは有名ではないかもしれませんが、今回もっとも強く惹きつけられた絵がこの絵でした。1882年に描かれた「ヴァランジヴィルの風景」です。海とともに地平線が見える風景の手前にどんとそびえている五本の木の存在感がただものではありませんでした。色も明るく一層存在感が感じられました。解説によるとこの地方は海に面する断崖と渓谷がみられる絶景だそうですが。。。日本の浮世絵の構図を採り入れたのではないかともありました。
これらの作品を見て充実した気分になったのですが、
さらに芦ノ湖畔の美術館に足を伸ばしたくなりました。日本画を中心に展示してある成川美術館に行ってきました。
館内からは芦ノ湖や箱根神社の鳥居が見えてなかなかの景観です。空が晴れていたら富士山も見えるのですが、この時間では厳しかったですね。
前回初めて行った時は点数はそこまで多くはないもののセンスのよい日本画が展示してあって好印象を抱いていました。院展の作家さんの名作や漆芸の第一人者の方の渋くて素敵な作品が展示してありました。他に今回はどのような特別展が開かれているのか知らずに行ったのですが、その特別展「小笠原元 風景との語らい」の作品が私にとっては嬉しい出会いになったようなのです。
部屋に入るなり大変美しく細やかに描かれた絵が展示してありました。作者は小笠原元氏(1954年~)、Wikiにも載っていないし名が通った方でもないのですが、絵の美しさとその横にあった本人の飾らないコメントに惹きつけられました。具体的な言葉はちょっと違うかもしれませんが、「ぜひ描いてほしいと言われたので訪問した」「非常に寒くて少ししかその場にいることができなかった」「夏だったので1時間しかそこで描くことが出来ず何度も通った」「とても心に残る風景だったので再度取材したい」というようなコメントだったでしょうか。あまりにも飾っていないコメントに対して描かれた絵の細やかさと誠実さとのギャップが大きすぎてたまりませんでした。この人はこれらの風景が本当に気に入り、大切に思って描いてきたのだというのが絵全体から伝わってきました。購入した絵葉書からスキャナして紹介です。
左は「春の訪れ」、右は「駒ヶ岳」です。どちらも大きな作品で屏風になっていました。駒ケ岳は今日見た風景と一緒のはずですが、この絵の季節は冬でしょうか。
左は「忍野」右は「浜」です。「忍野」は山梨県の南東部、富士北麓に位置するところなのですね。大変気に入ったらしくもう一度訪れたいと書かれていましたが、私はこの「忍野」の絵全体から伝わってくる富士山の神がかった凄味にやられてしまいました。「浜」は中々雪の降らない地域(すみません、どこか忘れてしまいました)に短時間だけ雪が降ったらしく、その短時間を描写したという絵だそうです。
そして噂できいて出かけたものの予想よりもはるかにすばらしく感じたという尾瀬を描いた作品「尾瀬」です。まるで桃源郷のようです。この絵を見ただけで実際に尾瀬に行きたくなってしまいました。
あまりにも素晴らしい絵に巡り合い温かい気持ちになっていたところさらに衝撃の事実を知りました。なんと作者の小笠原氏、取材にカメラを一切使用せず自分の五感だけで自然に寄り添い対話しながら描いていたのだそうです。だから「寒くて帰った」というようなコメントもでてくるのですが、それでここまでの絵が描けるのです!衝撃です。ちょっとしたスケッチを描くのでも写真を撮らないと安心できない者としてはただただ頭が下がるばかりでした。写真に大いなる恩恵を被っている今、彼を見習うことはとてもじゃないけどできませんが、物事にまっすぐに取り組む姿勢から教えられることが多かったです。
嬉しくなった気分のまま、美術館を後にし、芦ノ湖畔に向かいました。夕方、日没前の日の差した水面が美しかったです。しっかり写真ですが。