今日はCDのお方、田部京子さんのリサイタルに行ってきた。ベートーヴェンとブラームスというドイツの組み合わせ、BBワークスというプロジェクトの第一弾であった。
曲目は
ベートーヴェン: ピアノソナタ第8番 op.13 「悲愴」
ベートーヴェン: ピアノソナタ第17番 op.31-2 「テンペスト」
休憩
ベートーヴェン: ピアノソナタ第31番 op.110
ブラームス: 4つの小品 op.119
アンコール
ブラームス Op.118‐2 インテルメッツォ
黒いドレスに身を包んだ田部さんがでてきた。写真のとおり若々しくてきれい。しかしさすがピアノを弾いている方、腕から肩までがっちりとしていた。
ベートーヴェンの悲愴ソナタ。全体的に硬かった。1月の上原さんのリサイタルでも最初に弾かれたがそのときもちょっといまいちだったのを思い出した。悲愴ソナタはプロのリサイタルではちょっと損する曲のような気がした。
テンペストの第1楽章嵐が始まる前の彼方から降ってきた神秘的な響き。ぞくっとした。そしてせかされるような動き。かき乱されるような気がした。第2楽章は茶色っぽい長調。しみじみとした美しさを感じた。第3楽章、私も弾いたことがある曲だったはずだが、聴いたのは久しぶりだった。その第3楽章が感動的だった。コントラストが明確で切れの良い演奏、不透明な色と透明な色、遠い音と近い音とがめくるめくようだった。演奏時間がかなり長い気がしたのだがその長さが心地よくうれしかった。
休憩後は大好きなソナタ31番。ベートーヴェンに寄り添ったような演奏だった。特によかったのが第3楽章のフーガの前と後のやるせなさ。この部分がこんなに心にしみいる箇所だったとは。フーガも片手の弱音で2声を美しく弾かれていた。低音部も強すぎないのに奥から響いていた。旋律の横の音のバランスも考えられていて素敵だった。
ブラームスの4つの小品、変ロ短調のインテルメッツォは美しくて涙ものだった。まさにピアノの詩。ちょっと季節外れかもしれないが、それでも好き。ホ短調のインテルメッツォも大好きな曲。中心部の甘いところがたまらなく好き。彼女もこだわって演奏していたと思った(がちょっと私の好みではなかった)はじめと終わりの焦るようなところはいい感じがでていた。3番目のハ長調のインテルメッツォはスタッカートでさらりと弾いていた。私も弾いたことのある曲だが、ちょっとさらりとしすぎているような気がした。ただ私の場合、その曲しか弾いていないのでバランスも考えずにやたらとこだわりすぎているのかもしれないが。。。4番目のラプソディは重厚で凛々しくてかっこよかった。切れがよく華やかで堂々とした躍動感に勇気づけられた。
彼女にとってはこれでリサイタルは終わりのつもりだったと思うが、盛大な拍手にお応えして有名なOp.118‐2を演奏された。
田部さんの見事なところは、体をほとんど動かさないところだ。重心がしっかりしていて、全く無駄な動きが見られなかった。その結果、スケールの大きな演奏になっていると思った。華もあって松田聖子に似た雰囲気だったのも印象的だった。
CD購入→サインもしていただけそうだったのだが、人がたくさんいたし、時間も遅くなるので今日はまっすぐ帰った。よきひと時を過ごせてよかった。
しかし、ポゴレリッチ氏の後と同じく、平日のリサイタルの後には納期のきつい仕事が来る、というジンクスが今回も現実になってしまった(涙)。しかも今回は個人的に非常にうれしくない時期である。やっぱり平日には演奏会を入れるな、ということなのだろうか。いや、そんなことを言っていたら平日に多い演奏会にはほとんどいけないことになってしまうではないか。文句を言っても仕方ないので、当の仕事がやってきたらとことん考えてやろうと思う。