希少な淡水魚の繁殖に取り組む滋賀県草津市の琵琶湖
博物館は、環境省の絶滅危惧種に指定されているツチ
フキの大量繁殖に成功した。国内の水族館では初とい
い、稚魚を31日まで展示している。ツチフキはコイ
科の魚で体長8~11センチ。本州や九州、朝鮮半島
や中国のため池などに生息している。産卵期になると、
雄が池の底にすり鉢状の巣を作って卵を守る習性があ
る。国内では生息環境の悪化で減少している。同博物
館は毎年、屋外で繁殖に取り組んでいたが、数十匹し
か増えなかった。今年は巣を作りやすいよう敷地内に
ある池の底の砂を細かく、稚魚を襲うトンボの幼虫対
策も施したところ、200匹以上の稚魚が6月末に生
まれた。担当者は「今回の工夫を減少地域の繁殖に生
かせれば」としている(2014.08.27 京都新聞)。
同博物館の金尾滋史学芸員は「地味な存在の魚で、絶
滅の危機にあることを知られておらず、繁殖に取り組
む研究機関もほとんどない。展示を通して、ツチフキ
の現状を多くの人に知ってほしい」と話している(産
経新聞 2014.08.28)。
【エピソード】
ツチフキ(土吹、Abbottina rivularis)は、コイ科カマツ
カ亜科に属する魚。別名にはスナモロコ・ドロモロコ
などがある。日本列島を含む、アムール川流域から紅
河流域までの広範囲に分布する。メコン川上流からも
記録がある。日本では近畿以西の本州、四国、九州に
分布しているが、近年は東日本にも多く移入されてい
る。
カマツカと似ているが、体長が10センチメートル程度
までしか大きくならないこと、吻が若干丸みを帯びて
いること、背びれの大きさが体長に比べて大きめであ
るということなどの違いがある。口は下側に開いてい
て、1対のひげを持つ。流れのあまりない水路、河川
や、湖に生息。砂底を好むカマツカに対し、本種は泥
底を好む。産卵期は春から初夏で、この期間、オスが
泥底に産み付けられた卵を保護する、婚姻色は目立た
ない。
● 生息場所
ため池や流れの緩い用水路、河川の中下流域の浅い砂
泥底に生息している。常に水底にいる。
● 外観・生活
全長は10センチメートル程度になる。コイ科底モノ三
兄弟(カマツカ、ツチフキ、ゼゼラ種群)の中では最
もずんぐりしていて、背が盛り上がっているので猫背
に見える。体色や体側の斑紋の様子はカマツカに似て
いる。口は下向きで口の両端には短い1対の口ヒゲが
あり、成熟した個体では上アゴの後ろの背面が一部く
ぼむ。特徴的なのは口から目にかけて比較的太い暗色
帯があることだ。「カマツカのように砂には潜らない
」とものの本にはあるが、飼育しているとたまに体の
半分くらいを砂に沈めていることがある。自然界で砂
底に潜るかどうかは不明だ。見た目は鈍くさそうだが
素早く泳ぐ。繁殖期は春から初夏で、オスは背ビレを
伸ばし、胸ビレの前縁には尖った追星を出現させ、腹
ビレや尻ビレをオレンジ色に染める。オスはすり鉢状
の巣をつくってメスを誘い、メスはそこに寒天質に被
われた卵を産み、オスが孵化するまで卵を保護するそ
うだ。 コイ科の中では珍しい習性で、オスがメスよ
り大きい理由はそんな性質が影響しているのかもしれ
ない。 雑食性で、イトミミズや有機堆積物(デトリ
タス)、浮遊動物、付着藻類などを食べる。
※ 環境省のレッドリストで絶滅危惧(きぐ)種のうち2番目
に 危険度の高いIB類となった。
● 人間との関係
食用とすることはほぼない。また、ペットショップでは、他の
日本産淡水魚の飼育水槽におけるタンクメイトとして販売さ
れることがある。
【脚注及びリンク】
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1. C Vidthayanon, M Kottelat (1995). “First record of Abbott-
ina rivularis (Cyprinidae: Gobioninae) from the Mekong basin”.
Japan. J. Ichthyol. 41 (4): 463-4652. Yan, Y. Z. and Y. F. Chen. (2007). Changes in the life history
of Abbottina rivularis in Lake Fuxian. Journal of Fish Biology
70(3), 959-64.
3. 雑魚の水辺(Top> 観る > 日本淡水魚 > ツチフキ)
4.
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