地域循環共生概論 64

2022年11月30日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.11.30|更新日:2022.
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅹ


PP.149-
8.4.6 洗浄不溶化試験
放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分具体的に
は、上述のベンチ試験装置を用い、飛灰洗浄において水に
溶解する際に放射性セシウムを不溶化するための吸着剤を
添加して飛灰中の放射性セシウムを不溶化する方法 (洗
浄不溶化方式)の実証試験を行う。放射能濃度が 22,000~
27,000 Bq/kg程度の原飛灰 40kg に対して吸着剤としての
ゼオラ イトを 10~30%添加し、溶解液固比を5倍、リンス
液固比を 2.5倍、吸着時間を 1時間として不溶化処理を行
った。フィルタープレスで脱水・排出された不溶化飛灰の
溶出試験を行ったところ、溶出性が著しく低減されている
ことが確認した。また、ゼオライトの添加率が高いほど溶
出濃度は低くなるが、10%添加でも溶出濃度はNDレベル(
10 Bq/L 以下)となることがわかった(図 8.19)。


図 8.19 ゼオライト添加率と不溶化飛灰からの放射性セシ
ウム溶出濃度の関係

なお、洗浄不溶化した際の排水中には数百 Bq/L 程度の放
射性セシウムが残留しているため、後処理を行って除去す
る必要がありますが、洗浄不溶化で使用する吸着剤と同じ
ものを吸着塔に充填して通水することにより、NDレベル(
10 Bq/L 以下)まで除去できました。また、この後処理で
使用したゼオライトは吸着容量が十分に余っているためこ
れを粉砕して洗浄不溶化に再利用できることも確認した。
従って、飛灰溶解時に添加する吸着剤の量に合わせて後処
理吸着の条件を調整することで、二次廃棄物を発生させる
ことなく不溶化処理が可能であることがわかった。

8.4.7 放射線管理
飛灰洗浄ベンチ試験を実施したエリアの空間線量率をモニ
タリングしたところ、飛灰洗 浄による事業所外部への汚
染の拡大は見られませんでした。但し、飛灰を大量に搬入
するとその周辺は線量率が上昇するため、必要に応じて遮
へい等の対応を検討する必要がある。一方、放射性セシ
ムを吸着・濃縮する吸着ユニットや廃吸着剤を保管する

管スペー スは鉄板やコンクリートによる遮へいを行っ

おり、十分な被ばく防護が確認した。
また、電離則で定め
られている作業環境測定を作業環境測定士により 1cm 線
量当量率、床面の表面密度、空気中放射性物質濃度の測定
を行った結果、特段の汚染は認められず、適切にプロセス
を管理できることがわかった。なお、原料飛灰は一定の水
分を含んでいるため、溶解作業中に粉塵として舞うことは
ほとんどない。
 作業に従事した作業員が作業により受けた被ばくについ
て、表 8.7 に示す。作業従事者の被ばくは 0~2μSv/日
程度で、試験期間に最も放射線量を受けた作業員(E)で
も約 1 年間で 0.25 mSv 程度であり、法律で定められて
いる年間 50 mSv、5 年で 100 mSv と比較 して非常に低
い値で管理できる。規模が大きくなると処理する飛灰量が
増加するために放射線量の増加が考えられるが、実設備で
は飛灰溶解作業の自動化による作業時間の短縮、吸着塔の
遮蔽とデータの自動測定等により、作業員が受ける放射線
量を低減することが可能である。

8.4.8 ベンチ試験のまとめ 
以下に、飛灰洗浄ベンチ試験で得られた結果をまとめた。

飛灰洗浄による放射性セシウム除去率は概ね 90%以。 
・洗浄後の飛灰には放射性セシウムが 10%程度残存したが、
 8,000 Bq/kgを大きく 下回り放射性セシウムの溶出濃度・
 溶出性も著しく減少した。
• 洗浄排水中の放射性セシウムは、吸着塔で除去・回収さ
 れ、処理水中の放射性セシウム濃度は ND レベル(<10
 Bq/L)。
• 一連のプロセスを通して、適切に放射線管理が可能。
クリーンセンター等では排水できないケースが多いため
 処理水の蒸発固化が必要であり使用水量の削減が重要
 となる。
現時点では二次廃棄物(廃吸着剤)の搬出先がないため
 放射性セシウムを濃縮した二次廃棄物を放射能濃度に応
 じて遮へい容器等に収納し、場内に一時保管する必要
 ある。
• 放射能濃度の高い二次廃棄物は、一度保管したら移し替
 え等は困難であるため、中間貯蔵および最終処分におけ
 る廃棄体と保管形態・容器等の条件を整理しておく必要
 がある。

以上7項を挙げている(測定値の「分散リスク解析」は無)。

8.5 飛灰洗浄技術の開発状況
8.5.1 飛灰の洗浄方法
飛灰中の放射性セシウムを溶解、洗浄して分離させる技術
としては、本稿で示した方法を 含め、以下のような技術開
発が進められている。 

⮚水洗浄
飛灰に対して数倍程度の水を加えて溶解させた後、フィル
タープレス等で脱水することにより、放射性セシウムが除
去された洗浄飛灰と放射性セシウムを含む排水とを分離す
る方法。(国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼環境ソ
リューション)
・本稿 8.4 
放射性物質に汚染された飛灰の洗浄による埋立前処理に関
する研究(2013) 第 34回全国都市清掃研究・事例発表会
講演論文集、313-315.
・飛灰中のセシウムの洗浄分離に関する研究(2012)
第23回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集、573-574. 
・水洗浄+磁気分離
飛灰の水洗浄の際、もしくはその後に磁性吸着剤を混合す
ることで水溶性の放射性セシウムを除去し、放射性セシ
ウムを吸着した磁性吸着剤は超伝導磁気分離装 置で分離・
回収する方法。吸着剤は繰り返し使用可能。これにより、
水洗浄と洗浄排水の処理を同時に行うことができ、システ
ムをコンパクトにできることが期待される。なお、磁性吸
着剤を工夫することで、高pH耐性と磁力の向上を図り、磁
気分離に永久磁石を用いることも試みられている。
(三菱製紙(株)・(株)MS エンジニアリング、他)
・磁気分離法による飛灰浄化方法の検討(2012)第1回環
境放射能除染研究発表会
・磁性吸着剤を用いた放射能除染システム(2012)月刊
 JETI2012 年 12 月号 (大成建設(株)) 
・平成 25 年度除染技術実証事業

⮚ 飛灰を造粒して水切りフレコンで固液分離飛灰をセメ
ントにより造粒固化してから水洗浄することで、その後の
固液分離に水切りフレコンを用いることができ、コスト削
減が期待される方法。 ((株)大林組) 
・飛灰の放射能濃度低減を目的とした造粒固化洗浄 (2013)
大林組技術研究 所報 No.77 
・平成 24 年度除染実証事業報告

⮚散水による極小水量での洗浄技術 機械撹拌等を用いるこ
となく、間欠散水・通気を利用して使用水量および洗浄排
水の量を極端に少なくする洗浄方法です。実証試験では、
液固比 0.5程度で洗浄を行い、環告13号法による溶出(液
固比 10)と同程度の洗浄効果が得られてい ます。
(株)フジタ 
・平成 25 年度除染実証事業報告書

8.5.2 洗浄排水からの放射性セシウムの除去方法
高濃度の塩類を含む排水から放射性セシウムを効率的に除
去するため、以下のような技 術開発が進められている。
⮚プルシアンブルー
造粒プルシアンブルーを吸着塔に充填し、飛灰洗浄排水を
通水する方法。(国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼
環境ソリューション) 
・本稿 8.4 
・洗浄・水処理プロジェクト(2013.7) http://www.nies.go-
.jp/shinsai/hokoku_senjou.pdf

・一般廃棄物焼却設備の飛灰除染一貫処理システムを開発
(2013.8)
http://www.kobelco-eco.co.jp/topics/news/2013/20130806.htm
フェロシアン化鉄(プルシアンブルー)を飛灰溶解液中で
合成し、セシウムを吸着するとともに、凝集沈殿する。さ
らに、凝集沈殿物をアルカリ溶液で分解し電気透析で放射
性セシウム濃縮液を作り、ゼオライトに吸着させる。(ア
タカ大機(株))焼却飛灰等の水洗浄除染とその水処理(
2014)第 35 回全国都市清掃研究
・事例発表会講演論文集、318-320. 
溶融飛灰からの放射性セシウムの分離除去技術について
(2012)環境技術、 41(9)、41-46. 
飛灰からの放射性セシウムの分離除去に係る新技術の開発
について(2013.8
http://www.atk-dk.co.jp/xml/docs/ATK_214.pdf

ナノ粒子化したプルシアンブルーで高効率にセシウムを吸着す
る方法す。 (産業技術総合研究所、他) 
・Adsorption removal of cesium from drinking waters: A mini
review on use of biosorbents and other adsorbents (2014) Biores-
ource Technology、印刷 中
(DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.biortech.2014.01.012) 
・ナノ粒子化したプルシアンブルーでセシウム吸着能が向上(
2012.2) http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/
pr20120208/pr20120208. html 
植物系放射性セシウム汚染物を除染・減容するための実証試
験プラント (2012.11)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20121112/
pr20121112.h tml
⮚ゼオライト
天然ゼオライト(モルデナイト)を吸着塔に充填し、飛灰洗浄液
を通水すること により放射性セシウムを除去する方法。吸着剤
の放射能濃度を制御すること で、保管・管理方法を選択できる。
また、飛灰洗浄時に一定量添加 することにより、不溶化処理を
行うこともできる。 (国立環境研究所・福岡大学・(株)神鋼環境
ソリューション
・本稿 8.4 
⮚クラウンエーテル洗浄排水中の放射性セシウムをクラウ
ンエーテルにより吸着した後、溶離工程により濃縮・回収
する方法。
((株)タクマ)
・繰返し使用可能な吸着剤を用いた焼却飛灰からの放射性
セシウムの分離除去 システム(第 2 報)(2014)第 35
回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文 集、324-326.
・繰返し使用可能な吸着剤を用いた焼却飛灰からの放射性
セシウムの分離除去 システム(2013)都市清掃、66(313)、
306-309.
・焼却飛灰中の放射性セシウム除去システムを開発(2013.1)
http://www.takuma.co.jp/news/2012/20130123.html

9. 埋立処分過程における挙動と制御
9.1 モデル解析からみる挙動と埋立工法
現時点で放射性物質に汚染された廃棄物(焼却灰等含む)
の埋め立ては、濃度によって分類されており、その値は、
作業者の被曝線量率から求められた 8,000 Bq/kg(廃棄物
中に含まれる放射性物質濃度:以下、固体濃度とする)が
採用されている
。重金属やその他の有害物質に関して、廃
棄物最終処分場への埋め立ては、固体濃度ではなく、廃棄
物処分 場から発生する浸出水に対する影響という観点から、
溶出試験によって分類されてき た。したがって、現時点
では、浸出水への影響よりも作業者の被爆が優先されてい
ることになる。当然、埋立後の地域住民に対する被曝線量
を十分に低くしなければならないことから、固体濃度によ
る規制も必要だが、放射性物質を含む浸出水が発生した場
合に、既存の水処理施設では十分な対応が取れないことか
ら、被曝量と同時に、浸出水への影響も考える必要があす。
放射性物質に汚染された廃棄物には、放射性物質を溶出し
やすい廃棄物と、しにくい廃棄物がある。溶出しやすい廃
棄物としては、家庭や事業所から出される一般廃棄物の焼
却飛灰が挙げられる一方で、一般廃棄物の主灰からは溶出
しにくく、下水汚泥の焼却灰(飛灰)や上水汚泥からも溶
出しにくいことが確認されている。ここでは、放射性物質
に汚染された廃棄物の埋め立て時において考えなければな
らない共通事項や留意事項 を示すとともに、溶出量の大小
における浸出水への影響について述べる。
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【エピソード】

  
にわか読書棚



ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機(天
然ガス・石油の供給不足による電力不足)や気候変動によ
る農産物不足(ウクライナ進行による小麦供給不足/米国
やトウモロコシ供給不足)の食糧・食品・電気料金の高騰
と、全国の原発の一斉再稼働への加速が起きており、国民
生活・健康破壊が懸念されます。

  

脚注及びリンク】
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地域循環共生概論 63

2022年11月25日 | 防災と琵琶湖


 作成日:2022.11.25|更新日:2022.11.26
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅸ


放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分

8.4.3 使用水量の低減  
▶ PP.141~147


8.4.3 使用水量の低減 本システムでは、洗浄排水を RO膜
ユニットに通すことにより、放射性セシウムを除去・分離
した透過水と濃縮水を得ることができる。この透過水を洗
浄水として再利用する ことは、システム全体の水使用量お
よび排水量を低減することができ、省コスト化、省スペー
ス化において重要。図 8.11 は RO 膜処理による放射性セ
シウムの除去効果を示す。ここで、縦軸は放射性セシウム
濃度の監視基準の算定式である Cs-134÷60Bq/L+ Cs-137
÷90Bq/L で換算した値。


RO 膜処理水は、1 段処理では原水の濃度の変動により濃度
基準が 1 を超えることがあったが、放射性セシウムの除去
率は 95%以上であり、1 段処理水を洗浄水として再利用可
能と班名する。さらに 2 段処理を行うことにより、RO処
理水は十分に濃度基準を満足することが判明。

使用水量を低減させる別の方法として、溶解水やリンス水
もしくはそれらの吸着処理水の再利用が考えられる。特に、
飛灰を溶解させた飛灰溶解水をろ過した後に行うリンスで
は、塩類等がある程度低下するため、リンス水中の塩濃度
は飛灰溶解水よりも低くなっており、再利用の有効性が高
いと考えられえる。そこで 1 度使用したリンス水を飛灰溶
解 水として再利用した場合の飛灰の洗浄効果の変化につい
て、検討を行いました。 試験は、溶解水の液固比を 5~10、
リンス水の液固比は逆に 10~5とし、トータル液固 比は
15 で固定して行った。リンス水を溶解水として再利用した
場合としない場合の放射性セシウム除去率の比較を図8.12
に示す。この結果から、溶解水の液固比によらず、 リンス
水の溶解水としての再利用は洗浄効果に悪影響を与えない
ことがわかる。なお、トータル液固比を 10(溶解液固比
5 倍)に下げた試験では、リンス水の再利用により 洗浄効
果の若干の低下が見られましたが、それでも除去率は 90%
を超えており、その影響は軽微であると考える。このよう
に、水を繰り返し使用することで、洗浄効率を維 持しつつ、
使用水量を削減できることが判明。使用水量の削減はシス
テムの省コス ト化、省スペース化に重要であり、限られた
スペースで本技術を活用する上で、その適用性・ 有用性の
向上に大きく貢献するものと考える。


8.4.4 洗浄排水からの放射性セシウムの除去
飛灰の溶解液および脱水ケーキのリンス水を混合した洗浄
排水には、飛灰に由来する多 量の塩類とともに放射性セシ
ウムが含まれている。洗浄排水に含まれる放射性セシウム
を除去するためには、高塩濃度条件下で効率的にセシウム
吸着・除去する必要。 そこで、共存する陽イオン濃度が高
い環境でもセシウム選択性の高いプルシアンブルー(フェ
ロシアン化鉄)を粒状に成形した吸着剤(東亞合成(株))
を用いて吸着処理試験を行う。プルシアンブルーは一般的
には青色顔料として身近なところで使われているが、セシ
ウムの吸着剤として高い吸着容量と選択性を有す。但し
高pH環境下では分解してしまうこと、排水基準項目である
シアンの溶出が有り得ることなどから、取扱には注意が必
要。吸着試験条件を表 8.3 に示す。洗浄排水は pHが12程
度と高いため、塩酸によりpHを中性にしてから吸着処理を
行う。その結果、図 8.13 に示す通り、吸着処理の原水中
の放射性セシウム濃度は洗浄する飛灰の濃度で変動し、
1,000~3,400Bq/kg の間で推移。これに対して吸着処理水
は常に 10Bq/kg 未満。従って、高濃度の塩類を含む飛灰洗
浄排水においても、含有する放射性セシウムを効果的に吸
着除去きることが実証。なお、処理フローではRO膜処理に
より洗浄排水を濃縮した後に吸着処理を行うが、上述のリ
ンス水の再利用を行った場合は、RO膜処理を行わなくても
洗浄排水が高濃度となるため、直接吸着処理を行った。そ
の場合においても、吸着処理の性能に変化は見られず、十
分な処理性能が得られている。

一方で、プルシアンブルー吸着剤に濃縮された放射性セシ
ウムの状況を把握するため、吸着塔表面の放射線量率を測
定す。図 8.14は第 1 吸着塔の流入部表面の放射線量率の
経時変化を示す。処理を進めるにつれて放射線量率が上昇
し、洗浄排水から放射性セシウムが吸着除去されている様
子がうかがえる。

また吸着塔内の吸着剤の放射性セシウム吸着量の推定および
分布の把握を行う。ここで吸着量は、吸着塔に投入した総
ベクレル数から処理水に含まれる総ベクレル数の差を吸着塔
内の吸着剤重量で除して、平均吸着量を求めると同時に、
予め、吸着塔表面の放射 線量率と吸着量を換算する係数を
求めておき、吸着塔毎の放射線量率を測定することで、各吸
着塔における吸着量を算出。図 8.15 に示す通り、吸着塔
へ投入した総ベクレル数が 10,000 Bq の時には吸着塔 Aの
下部(1 段目の入口)の吸着量は 20 万 Bq/kg程度だが、
総ベクレル数が 300,000 Bqの時には 2百万Bq/kg 程度まで
吸着された。このとき、吸着塔 Aの上部(出口側)ではまだ
吸着量に余裕があるとともに、吸着塔 D(4塔目)までにほ
とんどの放射性セシウムが吸着される結果となった。


また、原水の放射性セシウム濃度の上昇に伴って吸着量が
増加することも確認された。原水の放射能濃度は最大で
3,000 Bq/kg 程度で、その際の吸着量は吸着剤の充填率を
加 味すると約 1,000 万 Bq/kg となる。この結果を元に、
飛灰の放射能濃度を 20,000 Bq/kg と仮定したときの物質
収支を図 8.16に示す。


一方で、廃吸着剤の放射能濃度を 10 万 Bq/kg 以下に制御
する方法も検討した。この場合、単位吸着剤量あたりの放
射性セシウム除去量が少なくなるので、より多くの吸着剤が
必要となる。そこで、安価で汎用性の高い天然ゼオライト
を焼成したモルデナイト 型ゼオライト(ゼオフィル、新東
北化学工業(株))を使用。 ゼオライトを用いた吸着試験
の条件と結果を表 8.4 に示す。なお、廃吸着剤の放射能
濃度を 10 万Bq/kg 以下に制御するため、ゼオライト吸着
剤を砕石と混合して試験を行った。この場合でも、吸着原
水で 3,900 Bq/Lあった放射能濃度が吸着処理水では検出下
限値(10Bq/L)未満となり、十分な処理性能が得られた。


ここで、処理対象飛灰 1,500t、放射能濃度 20,000 Bq/kg
の条件で、飛灰洗浄による減容化率を試算。表 8.5 に示
す通り、プルシアンブルー吸着剤を用いた高濃度濃縮の場
合では、廃吸着剤量は 2.7t(3.4m3)となり、減容化率は
極めて高く、原飛灰の 0.19%の容 量となる一方、ゼオラ
イト吸着剤を用いた中濃度濃縮の場合の減容化率は 13.5%
で、高濃度濃縮ケースに比べると減容化率は低くなるが、
放射能濃度は 10 万 Bq/kg 以下に制御されることから、一
時保管における遮へいに要するコスト・スペースが小さく
なる。いずれのケースでも、廃吸着剤では原飛灰と異なり、
放射性セシウムの溶出性が極 めて低くなっていることから、
速やかに中間貯蔵施設や国の最終処分場に搬出されること
が期待される。


8.4.5 洗浄飛灰に含まれる
       放射性セシウムの水への溶出性

飛灰洗浄による溶出性低減効果を確認に、放射能濃度の異
なる原飛灰を洗浄し、放射能濃度の変化を確認するととも
に、洗浄飛灰の溶出試験を行う。溶出試験は JIS K0058-1
に基づいて行い、ゲルマニウム半導体検出器を用いて放射
能濃度を測定した。 表 8.6 に示す通り、原飛灰で 8,000
もしくは 26,000 Bq/kg 程度であったものが、洗浄後には
それぞれ 400、2,200 Bq/kg 程度まで低減しており、洗浄
飛灰の溶出濃度は
ての放射性セシウム溶出率は 23%程度が、洗浄前(原 飛灰
)の状態から考えると、2%程度となる。原飛灰からの放射
性セシウム溶出率が 90% 超であることを考慮すると、大幅
な溶出性の低減が図られたと言える。

上述した溶出試験は特措法に基づくものだが、溶出時間が
6 時間であるため、念のため、約 1 ヶ月の溶出試験を実施
しました。先ほどとは別の洗浄飛灰(1,453 Bq/kg)を同じ
ように 10 倍量の水と混合し、30 分後、6 時間後、7、17、
29 日後に溶出液中の放射能濃度 を測定。その結果、6 時
間後の溶出濃度は 19 Bq/L(溶出率 13.1%)であり、その
後、顕著な変化がなかったことから、洗浄飛灰に残存する
放射性セシウムの大部分は不溶性であると推察(図 8.17)。



なお、環境庁告示第 13 号(昭和 48 年 2 月 17 日)に
基づいて溶出試験を行った結果、鉛 について基準値を超え
る値が検出されることがありましたが、液体キレートを飛
灰溶解水 に添加(重量比 2%)することで、洗浄飛灰から
の鉛の溶出を抑制することが可能であることが確認できて
いる。

8.4.6 洗浄不溶化試験
8,000 Bq/kg 超 100,000 Bq/kg 以下の指定廃棄物は、埋
立後の放射性セシウムの溶出リス クを低減するため、セメ
ント固型化や隔離層の設置が義務づけられています。しか
し、当該 廃棄物からの放射性セシウムの溶出量が少なけれ
ば(基準値:溶出試験で Cs137 が 150Bq/L 未満)、セメ
ント固型化をせずに埋立処分することができ、埋立時の隔
離層の設置について も上部の不透水層以外は不要となる。
そこで、ここまでに示した飛灰洗浄技術を応用し、埋立処
分の前処理として飛灰中の放射性セシウムを不溶化する方
法(図 8.18)を検討した。       

  
リスク除外技術手法についこのまま、最後まで読み進めて
いく。
                         この項つづく

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【ごみ焼却場建設問題再考Ⅳ】

広域ごみ施設
処理方式変更に質問相次ぐ
「東近江の失敗繰り返さぬよう」
彦愛犬1市4町の新しい広竣ごみ処狸施設について協議す
る彦根愛知犬上広域行政組合の議会臨時会が15日に開かれ、
議員からは管理者の和田裕行市長が示した処理方式を「熱
焼却」から「好気性発酵乾燥(トンネルコンポスト)」方
式への変更を検討することに対しての質問が相次いだ。
 トンネルコンポスト方武は生ごみや鰍プラスチックなど
が混在する可燃ごみを粉砕し、専用のコンクリート製の槽
べ投入することで、微生物が生ごみだけを発酵分解。その
際の熱を使って乾燥処理された紙やプラスチックなどは工
業用RPF(固形燃料)となる。熱焼却方式と比べ、煙やダ
イオキシンなどが発生せず、乾燥の工程で化石燃料を使わ
ないため二酸化炭素の排出量が削減できるといい、設備投
資やランニングコストも抑制できるという。同方式は香川
県三豊市が6年前に国内で初めて導入した。同行政組合は
同方式の実現可能性を検証するためのコンサルタント業者
への委託費(552万円)と、三豊市のバイオマス資源化セン
ターみとよへの組合議員の視察経費(76万円)などを盛り
込んだ補正予算案(1124万円)を臨時会に提案した。

固形燃料の買い手先は?
議員指摘に市長「営業努める」
臨時会では市町の4人の議員が登壇。彦根市の伊藤容子市
議の建設候補地の変更の可能性やスケジュールについての
質問に、事務局は「今回の予算は調査費のみで、建設候補
地の検討は入っていない。今年度中に判断材料を集めたい
」とした。
 愛荘町の瀧すみ江議員は、犬上郡や愛荘町、旧愛知郡の
ごみを処理している湖東広域衛生管理組合リバースセンタ
ー(東近江市)で処分後に出る固形燃料(RDF)の買い手
が県外で、赤字状態が続いている点を紹介した上で「同じ
失敗が繰り返されるのではないか。RPFを引き受ける近隣
の企業はあるのか。RDFを燃やすには専用の焼却炉が必要
になるが』と指摘。事務局側は「近隣に買い手となる事業
者があるのかも含めてコンサルで調査してもらう」と答え
た。
 甲良町の西渾伸明議員は「廃棄物の分別が崩れる可能性
や購入先などRPF万全ではない。ごみの減量や分別回収の
徹底は継続して必要だ」と質問。和田市長は『広域ごみを
巡っては何度もちやぶ台が返されてきたが、(トンネルコ
ンポストは)ヨーロッパでは当たり前の方端事業者への営
業に努めたい」と述べた。提案された補正予算案は全会一
致で可決された。(via しが彦根新聞 2022.11.19)
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※【RPFとRDF
 RPFは主に民間企業の排出、RDFは自治体による収集と
の違いがある。ほかにRPFは異物混入が少なく、含水率が
い低い。一方、RDFは家庭ごみのため、分別に限界があ
り水分率も高い。このためRDFは複数の装置や設備が必要
になる。一般的には下表の性状の違いがある。

RPFとRDFとの比較表 (下表クリック)



❏ 予定より大幅な考察の遅れとなっているが、この議論を
 深め、本論の展望の構築をはじめる。

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【エピソード】



いざ、蓬莱山はびわこテラスへ!

正午から琵琶湖テラスに向かい、蓬莱山(打見山)か
ら琵琶湖を
一望する。


南湖を望む


北湖を望む


明日のメタセコイヤ並木は雨模様......?



ところで、水耕栽培と養殖を掛け合わせた、次世代の循環
型農業を意味する「アクアポニックス」が話題にとなって
いる街が、2022年8月に高島市は「BIWAKO AQUA PONICS
」(ビワコアクアポニックス)がオープンしている。「植
物工場」「垂直農法」に興味あり見学をブッキングするこ
とに。滋賀県は面白いね。



【脚注及びリンク】
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地域循環共生概論 62

2022年11月09日 | 防災と琵琶湖

 


 作成日:2022.11.08|更新日:2022.11.09
□ その後の彦根広域ごみ処理施設建設問題 Ⅷ



放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分
8.3. 飛灰洗浄技術の概要
8.3.3 飛灰の性状
焼却施設においては、排ガス処理過程で消石灰(水酸化カ
ルシウム)が使用されることが多く、その場合、飛灰には
多量のカルシウムが含まれる。また、重金属溶出抑制のた
め、キレート剤やセメント等が添加されている。使用され
ている薬剤の種類や量、混練の有無等の影響で、飛灰の物
理的状態(粉状、粒状、硬さなど)は施設によって異なっ
ています(図 8.3)。複数の一般廃棄物焼却施設の飛灰を
調査したところ、含水率 10~20%程度、かさ比重0.8 程度
のものが多く見られた。



8.3.3 飛灰からの放射性セシウム等の溶出特性
焼却施設の運転方法やごみ質等に由来する飛灰の性状の違
いは、放射性セシウムの水への溶出性に影響を与える可能
性がある。また、飛灰の保管期間中に性状が変化する可能
性も考えられる。そこで、複数の一般廃棄物焼却施設から
排出された飛灰について、放射性セシウムの水への溶出特
性を調査。試料採取は10施設にて実施し、フレコン等で保
管されている飛灰について、可能な限り発生時期(保管期
間)の異なる複数の試料を採取した。採取した試料は粒径
5mm以下に揃え、JIS K 0058-1の方法で溶出試験を行った。
その結果、多くの施設の飛灰は高い放射性セシウム溶出率
を示し、同一施設で保管期間の異なる飛灰の溶出率は大き
く変わらなかった。但し、同じタイプの炉であっても施設
によって溶出率が低いケースがあり、全体として40~95%
程度と大きく異なることがわかった(図 8.4)。このこと
から、飛灰の保管期間は放射性セシウムの溶出性に影響せ
ず、施設毎のごみ質や運転方法の違い大きく影響している
と推察される。

 
溶出率に影響を及ぼす因子としては、排ガス処理方法が考
えられる。排ガス処理に活性白土を使用している施設(E、
F)では、飛灰からの放射性セシウムの溶出率が著しく低
下していたことから、飛灰抽出液を用いて活性白土の吸着
試験を行いました。その結果、活性白土に対する放射性セ
シウムの分配係数は 27.6 ml/gで、ゼオライト(345 ml/g)
と比べると 1 オーダー低いものの、高塩濃度・高pH条件
下においてもセシウムを吸着することが確認できた(表8.1、
図 8.5)。なお、今回の結果を第5章(放射性セシウムの
土壌等への吸着特性)で示された分配係数と比較すると、
ゼオライトの分配係数が約半分になっているが、これは今
回の供与液の共存イオン濃度が高いためと考えられ、これ
までの検討で、EC(導電率)が10倍になるとゼオライトの
分配係数が 1/10 になる結果が得られており、ベントナイ
トや茨城真砂土などでも、程度は異なるものの、同様の傾
向が認められている(廃棄物・土壌処分技術手法開発等プ
ロジェクト報告、p.15 、 http://www.nies.go.jp/shinsai /hokoku_
haikibutsu.pdf
)。今回の供与液(飛灰抽出液)の EC(5,540
mS/m)での分配係 数を比較すると、活性白土はベントナイ
トと同程度の吸着能を有していると言えます。また、検体
数は少ないのですが、セメント固化を行っている施設(A)
も若干溶出率が低いことから、セメント固化も溶出性への
影響があると考えられます。その他の要因としては、消石
灰による固結や主灰の吹き上げなどが考えられるが、いず
れにしても、主灰や下水汚泥焼却灰などと比べて、どの施
設の飛灰においても放射性セシウムは水への溶出性が高い
といえる結果となった。


8.3.4 溶出液の特性
焼却飛灰を埋め立てた最終処分場の浸出水は高濃度の塩類
を含み、pHも高いことが知ら れています。同様に、飛灰
の洗浄水も塩濃度、pHが非常に高くなります。実際に、上
記の溶出試験の結果、ろ液のpHは平均で12.5(10.5~12.9)、
ECは4,451mS/m(1,750~ 7,220)と高pH、高塩濃度となる
飛灰洗浄は、放射性セシウムが溶出した洗浄排水を処理す
る必要があるので、大量の水を使って洗った場合、洗浄排
水の処理に要するコストや用地が大きくなる
。そこで、洗
浄排水を繰り返し洗浄に使用により、実質的な使用水量の
削 減可能性を検討した。液固比は10、
溶出時間は 1 時間
としてビーカー試験を行ったところ、4 回までの繰り返し
使用では、ECおよび放射性セシウムともに同程度の効率で
飛灰から溶出しており、4 回目の洗浄排水の放射能濃度は
9,100 Bq/L、ECは 13,200 mS/mとなった(図 8.6)。この
結果、洗浄時の液固比は10だが、繰り返し使用により、実
質的な使用水量の削減が可能である。なお、このときの塩
化物イオンは 55g/L、カルシウムイオンが22 g/L、ナトリ
ウムイオンが8.2 g/L、カリウムイオンが12 g/Lで、試料
重量の約1割がこれらのイオンで占められ、非常に高塩濃
度であることがわかった。


8.4 一般廃棄物焼却施設での飛灰洗浄ベンチ試験
飛灰を埋立前に洗浄することは有意義であると考えられ
るが、これまで、放射性セシ ムを含む飛灰の洗浄処理を
一般廃棄物の焼却施設等で実施することは過去に例が無い
ため、上述した原理に基づき、実用化に向けた技術の確立
を目的として、試験研究を実施 (図 8.7)。


 8.7 飛灰洗浄ベンチ試験のイメージ図 

8.4.1 試験方法・設備 
今回の飛灰洗浄ベンチ試験の処理フローを図 8.8 に示す。
飛灰洗浄技術は、飛灰から放射性セシウムを除去する溶解・
脱水工程と飛灰を洗浄した排水から放射性セシウムを除去
する処理工程の2つに分けられる。溶解・脱水行程では、
飛灰を水に所定時間溶解し、脱水機でろ過した後、脱水機
内に水を供給し、濯ぎ(リンス)を行ってから脱水した。
リンスされた脱水ケーキは洗浄飛灰として取り出した。洗
浄排水の処理工程では、排出された放射性セシウムを含む
洗浄排水をRO(限外濾過)膜にて濃縮して透過水を回収し、
回収された透過水は放射性セシウムおよび塩類が除去され
ているので、溶解水およびリンス水として再利用した。一
方、濃縮水中には放射性セシウムおよび塩類が濃縮されて
いるので、吸着処理により効率的に放射性セシウムを除去
した。なお、洗浄排水の繰り返し使用等により洗浄排水の
塩濃度が高い場合はRO膜処理は不要とし、直接、吸着処理
を行った。



8.4.2 飛灰の洗浄効率
飛灰の洗浄効率の最適化を図るため、溶解槽(500L)に数
十kgの原飛灰と水を投入し、原飛灰と溶解水の液固比(重
量比)や溶解・撹拌時間をパラメータとした最適化試験を
行った。なお、脱水はフィルタープレスを用いて行い、リ
ンス水は投入した原飛灰の重量の0~数倍程度で試験した。
なお、放射性セシウム濃度は NaI(Tl)検出器 (AT1320A、
株式会社アドフューテック社)を使用した簡易スペクトロ
メータを用いて測定。飛灰の溶解を液固比 10倍、溶解時
間6時間で行い、フィルタープレスでリンス(リンス 液
固比 5倍)を行った結果を図 8.9 に示す。原飛灰の放射
能濃度は約 8,000 Bq/kgたが、溶解・脱水により約 1,000
Bq/kgとなり、さらに残存する溶解液をリンス水で追い出
す(濯ぐ)ことにより、550Bq/kgまで低下した。このこと
から、飛灰洗浄の仕上げとしてリンスが有効であることが
わかった。なお、脱水ケーキの放射能濃度は脱水機内部の
どの場所でも顕著な違いは認められず、脱水機内で均等に
リンシングが行われていることがわかった。


ここで WETベースは原料飛灰および脱水ケーキの有姿の値
であり、DRYベースは含水率を考慮して水分を含まない場
合に換算した値です。埋立時の放射能濃度の判断は有姿(
WETベース)で行うが、脱水ケーキの含水率にバラツキが
ある場合や物質収支を把握すること考慮し、DRYベースの
評価も併記しています。
また、飛灰と水の混合時間(撹拌・溶解時間)が放射性セ
シウム除去率に及ぼす影響を明らかにするため、溶解液固
比を10倍、リンス液固比を 5倍とし、溶解時間をパラメー
タとして行った試験結果を図 8.10に示す。溶解時間30分
ではわずかに除去率の低下が見られるものの、1時間以上
では WETベースでも除去率90%を超え、放射性セシウムの
除去率に顕著な差は認められない。従って、飛灰の溶解時
間は1時間程度の短時間で十分に洗浄効果が得られること
がわかった。なお、本試験では 8,000~27,000 Bq/kg の
飛灰について同様の試験を行い、飛灰洗浄技術は原飛灰の
放射能濃度によらず、同程度の洗浄効率を発揮することが
確認できた。
また、飛灰洗浄の効率と水温の関係を解析した結果、洗浄
効率の温度依存性は非常に小さく、水温が0℃に近い低温
であっても顕著な放射性セシウム除去率の低下は認められ
なかった。従って、冬季および寒冷地域においても加温処
理等を必要とせず、効果的な飛灰洗浄が可能であると考え
られる。
                    この項つづく

10月31日、彦愛犬1市4町の新しい広域ごみ処理施設につ
いて、彦根愛知犬上広域行政組合の管理者と副管理者を務
める首長5人らが事務局がある豊栄のさとで記者会見し、
ごみ処理方法をこれまでの熱焼却方式から環境負荷が小さ
い好気性発酵乾燥方式(トンネルコンポスト方式)に変更
できるかの調査を行うと発表。管理者の和田裕行市長は調
査の結果次第では建設候補地の西清崎地区を変更する可能
性も示唆したという(しが彦根新聞、2022年11月2日)。
この件については同時掲載していくが、「焼却」から「脱
炭素」へ調査との市長発言の背景を考えてみる。




まず、環境省 環境再生・資源循環局資料(2021.08.05)
「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出
実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)」から「第3章 中
長期シナリオにおいて見込んだ対策:実質ゼロに向けて必
要となる取組と留意点」を参考にすると、①資源循環を通
じた素材毎のライフサイクル全体の脱炭素化、②地域の脱
炭素化に貢献する廃棄物処理システムの構築(一般廃棄物
処理システムを中心に提示)、③廃棄物処理施設・車両等
の脱炭素化が掲げられ、②では、(1)有機性廃棄物対策
:焼却施設の新規整備と合わせたメタン発酵施設導入の想
定➲新規に整備する「焼却施設での処理量+メタン発酵
施設の処理量」のうち、メタン発酵施設での処理量は一人
当たり50kg/人年を想定。(残りは焼却されると想定)、
(2) 廃棄物エネルギー利活用(発電)では、社会導入
される廃棄物発電の効率は、国の政策と民間事業者の技術
開発が相まって向上し、発電効率決定の主要因となる ボ
イラ蒸気条件は、従来の高効率発電の目安の4MPa, 400℃
を最近の導入事例では超えつつある。⇒「6MPa,450℃」へ
の高温高 圧化を対策として見込んでいる(下図参照) 。 


また、(2)廃棄物・資源循環分野におけるCCUSの技術要
素---- CCSとCCUの両方を指し、二酸化炭素回収・有効利用・
貯留のこと。 ここで、CCSはCarbon dioxide Capture and
Storageの略で、二酸化炭素回収・貯留のこと。 また、CCU 
とは、Carbon dioxide Capture and Utilizationの略で、
二酸化炭素回収・有効利用のこと----では、CCUSを前提と
した廃棄物処理システム・施設のあり方を調査研究・技術
開発していく必要があるが、ただし、300t/日規模の焼却施
設にて二酸化炭素分離回収し、輸送のため液化まで行っ
た場合、現状 の性能の二酸化炭素分離回収施設を単純に
追加すると、蒸気消費に伴う発電量の低下及び消費電力
の上昇により、売電が行えなくなるとの試算もあるという。


さらに、③の重点対策領域Ⅲ: 廃棄物処理施設・車両等の
脱炭素化で、(1)省エネ化・電化・バイオマスエネルギ
ー利用に関しては、エネルギー消費量の大きい施設等とし
て、①焼却施設、②し尿処理施 設、④収集(自動車)に
ついて、 「エネルギー消費量の削減」及び「利用エネル
ギーの転換」を想定。 


①焼却施設における対策:所内動力の削減:焼却施設にお
ける電気使用量(原単位)は、同一の処理方式の中でも差
が見られ る。外部へのエネルギー供給の拡大の観点から
も、省エネルギー化が必要。助燃燃料の削減:焼却施設に
おける燃料使用量は、処理方式(施設種類)による違いも
大きい。多 数を占める焼却炉方式では立上時等の使用割
合も多いとみられ、ダイオキシン類発生防止等と両 立し
た省エネルギー化が必要。 
②し尿処理施設における対策(し尿・浄化槽汚泥と生ごみ
のメタン発酵での統合処理効果)➲生ごみとメタン発酵
で統合処理し、消化液を液肥利用すれば、エネルギー起源
CO2排出量は劇的に 減少。 
③収集車両(電動パッカー車):
・EVトラックシャシとの組み合わせで、走行から積込まで
 を全て電動化したパッカー車両は既に実現。
・現在のリチウムイオン電池を前提にすると、容量約80kW
 hで走行距離100kmのトラックに架装すれば、積込を含め
 約85kmの走行距離が確保できるが、大容量バッテリパッ
 ク重量も加わると、電費悪化に 加え、最大積載量減少可
 能性があるため、バッテリを縮小し、休み時間中に急速
 充電でカバーする運 用対策が考えられる。
・一方、バッテリパックを交換式とすれば、ごみ処理施設
 において交換することで、速やかに対応できる。
・電動化で、走行時に加え、積込も電動パワーユニットで
 騒音対策可能性が高まり、静粛化可能。

 以上、詳細及び追加事項は適宜、時宜をみて掲載する。

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【エピソード】



拝啓
中国からの五百万人の拡散にはじまるウイルス感染パ
ニックは四年目に突入。新年の総会(顔見せ)をどう
しょうかと迷っております。メッセージ、ライン、メ
ールなんでもかまいません、ご意見を待っています。
                    幹事敬白 

【脚注及びリンク】
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