下坂氏は、近江国坂田郡下坂庄の地頭をつとめた「国人」
であるとされ、その出自には諸説ある。その相伝文書であ
る「下坂家文書」(長浜市指定文化財)には、建武二年(
一三三六)七月二十五日付の下坂冶部左衛門尉宛の足利直
義感状があり、すでに南北朝時代には地域の武将として活
動していたとされる。その後、応仁の乱から戦国末期にか
けて、北近江の守護であった京極氏や、戦国大名の浅井氏
に仕えたことが、相伝文書から読み取れる。特に戦国時代
の当主であった正治(一智入道)は、浅井長政と共に小谷
龍城し、織田信長や木下秀吉と戦っている。
京極氏や浅井氏の家臣を、通常「土豪」「地侍」と呼ばれ
るが、彼らが武士として台頭するのは、応仁の乱前後であ
る。その約百五十年程前の南北朝時代から、動向が追える
戦国期の武将は、北近江では下坂氏のみ。このため、下坂
氏は「土豪」「地侍」より規模が大きい「国人」と定義づ
けるべきだろうとされる。浅井氏滅亡後は帰農するが、江
戸時代は郷士として、中世同様、地域で大きな発言権をも
つ名士となり存続した。幕末には、板合挽堂・江馬天江な
ど、主に京都で活躍した「幕末の志士」を出している。屋
敷は、今も「幸内さん」(江戸~明治時代の当主の名前)
と呼ばれ、医業を営む子孫が管理しているという。
その館跡は長浜市下坂中町にあり、平成十八年一月二十六
日に国指定史跡となった。同町は江戸時代、「下坂中村」
と呼ばれたが、これは下坂庄の「中村」の意味である。下
坂氏の館は、東西に長い「下坂中村」の集落の北部に存在
する。下坂氏が同庄の地頭職を得ていたことと、その屋敷
が庄園の中心を意味する「中村」にあったことが、密接な
関連性を担保するといわれる。また、集落の中にではなく
集落から外れた北部にその屋敷が立地していることは、中
世武士と村落の関係を考える際に重要な示唆となる。下坂
氏の場合、村落から独立性が高い武士であったことを立地
が示していると考えられている。
長浜市教育委員会では、平成七年に屋敷全体の測量調査を
実施し、平成十六・十七年には、遺構の時期等を確認する
ため、合計十ヵ所のトレンチを設定して発掘調査を行なっ
た。その結果、土師器や輸入陶磁器など十四世紀~十六世
紀の遺物が出土し、建物・土塁・排水路などの跡や階段状
遺構などを検出。これにより、十四世紀、南北朝時代から、
下坂氏が武将として活動していたことが確認されたという。
文献の初見年代と、発掘成果が、ほぽ一致したのである。
下坂氏館の主郭は、東西約八九メートル、南北約八七メー
トルの範囲があり、高さ約一メートルからニメートル、幅
約ニメートルから約五メートルの二重の土塁が、北から西
に懇っている。土塁は東側も良好に残るが、この面は一重
で後述する東の副郭につながる。また、南側も西側には一
重の土塁が残るが、東側については近代になって崩され旧
状を留めていない。主郭内の東こ四には、低い高まりによ
って区画された部分があるが、特に南西部分については、
有事の際には当所に立て龍もって防戦したという伝承があ
る。南側のヨシ葺の表門は、十八世紀前期の建築と推定さ
れ、当初からの虎口の場所に建つと考えられる。また、主
郭の東側には幅七メートルの虎口が現存しており、東側の
副郭(図では「腰郭」と表記されている)につながる。こ
の副郭は東西六〇メートル程の平坦地であり、館の関連施
設があったと考えられるが、具体的な用途は不明である。
しかし、発掘調査によって、副郭の主郭虎口につながる部
分から、階段状の遺構が発見されている。
主郭の東南に建つ主星はヨシ葺きで、近代まで医院として
使用されてきた。調査の結果、十八世紀前期にまで遡る、
豪農住宅であることが判明した。鬼門に当る東北の土塁上
に、稲荷社を祀っており、その反対・裏鬼門に当る西南に
は鎮守社を祀る。表門の南に子孫が経営する医院と駐車場
があるが、ここはかつて畑で「馬場」と呼ばれていたとい
う。また、主郭の東南、副郭の南には、下坂家の菩提寺で
ある高雲山不断光院が存在する。同寺は浄土宗で、その開
基は不明だが、中世まで遡ると法然上人像や阿弥陀三尊来
迎図を所蔵するので、下坂氏が台頭した時代からの菩提寺
と考えられる。現在のヨシ葺きの本堂は、棟札から正徳五
年(一七一五)建造であることが知られ、ヨシ葺きの表門
も十八世紀前期、瓦葺きの庫裏は十八世紀後期の建造物と
考えられている。中世の「国人」クラスの屋敷が、これほ
ど良好に残存しているのは近江国内では稀である。なおか
つ、菩提寺が隣接して現存している点は、室町・戦国時代
の武将の生活形態を知る上で、きわめて貴重な遺構と言え
る。
出典:、
新年会と懇親会開催(案内)
1.日時 2014年2月8日(土)16:30~
2.会場 JR彦根駅前 すし割烹 銀水
3.1)近況報告、2)懇親会 3)その他
尚、会場予定のキャッスルホテルは改築中のため急
遽変更。万障繰り上げの程宜しくご参集頂けますよ
うお願い申し上げます。
幹事敬白
【脚注およびリンク】
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- 国史跡 「北近江城館跡群」下坂氏館跡
- シリーズ「淡海の城」(30)下坂氏館
- 下坂氏館跡 - 文化遺産オンライン
- 下坂氏と慶雲館テーマ 17日から歴博
で新指定史跡展,2006.05.16 - シリーズ「ながはまの文化財」,2011.11
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